その3

ひょうたん誕生悪戦苦闘記

筆者    千成表太郎     Hyotaro SENNARI

                        共著    清兵衛        Bay SEI

 

平成25年10月に記す、の巻。

 

 

研ぎ出し編

 

研ぎ出しとは読んで字のごとく研ぐ=研磨して、出す=良い表面を磨き出す、ことだ。荒れた表面をやすりがけしてきれいな塗装面に整え、それが最終工程となる。ただしひょうたん美術の世界では以前よりこの研ぎ出しを若干別の意味に使用しており、少しだけ注意が必要。異なる色のカシューをところどころに塗り重ね、乾燥後やすりがけし、ランダムな模様が浮かび上がる手法をいわゆる「研ぎ出し」と呼んでいる。表題の研ぎ出しはひょうたん美術のそれではなく、原則通りのものだ。いわゆる磨き出し、だ。

 

研ぎ出しのテクニックはプラモデル等の塗装本にもあまり詳しく紹介されていない、いわば非主流派の手法だ。大変手間がかかるのと、塗装工程の最後は研いで終わるのではなく、塗って終われることが多いからだ。重ね塗りは塗装編で見てきたごとく研磨→塗装→研磨→塗装・・・の工程を繰り返す。で、最後工程は多くの場合塗装、で終わる。カシューではなく、プラモデル等ホビー分野で使われている最近の塗料は性能もよく、通常は最終塗装(上塗り)の後研磨は不要だ。むろん柔らかい布で表面のごみ、ほこりをとる程度のことはするが、すでに研磨ではない。カシューの塗装も条件が良ければ研ぎ出しは不要だ。最終状態の塗装面に何らかのトラブルが生じている場合、修正するには二通りのやり方がある。一つはもう一回研磨→塗装の工程を行うことだ。通常はこちらだ。もう一つが今回の手法、研ぎ出しだ。繰り返すがとても手間かかかる。今回はあえてこの研ぎ出しに挑戦してみた。又は挑戦せざるを得なかった。状況はこうだ。

 

対象は2年前に収穫、塗装し終えた大ひょうたん1個。カシュー筆塗りで茶色く細身のタイプ。正統的手法で全行程を終えた完成品で、とある場所に飾っておいた。同時期に塗った、同じくカシュー塗り、茶色太めのひょうたんもあり、そちらが残念なことに虫食いの被害にあった。直径約 1 mmの見事なトンネルが一本太い腹に貫通している。補修しなければと思い、修理を始めた。穴の周囲をやすりで削り、パテで穴をふさぐ。さらに茶色のカシュー「淡透」(たんすき)と「ネオクリアー」を合わせて数回塗り重ねた。この時目に留まったのが茶色カシュー同系統の今回の細身ひょうたん(細茶と命名)。2年前の基準では十分きれいだと思えたのに今回改めてよく見ると意外とあらが目立つ。どうせなら虫食いの太めひょうたん(太茶と命名)と同時に茶色のカシュー「淡透」、透明な「ネオクリアー」を数回塗ってしまおうと考えた。しかも今年は「新カシュー法」でスプレー塗装を行うので、若干あらの目立つ細茶も太茶補修ついでにグレードアップできる。はずだった。

601 24%

 

写真左は細茶、右は太茶。(↑)

太茶とほぼ同時進行している。塗装編で前記したカシュースプレー第1回目(7月14日)と、ずっと後のカシュースプレー(10月9日)の計2回に分け「ネオクリアー」を塗装した。2回目が失敗だった。この日多数のひょうたん塗装がつつがなく終わり、それでもスプレーガンのカップにまだカシュー「ネオクリアー」が余っていた。もったいない。急遽この細茶を引っ張り出し、800~1000番相当3M ULTRAFINEで大急ぎに研磨し、その「ネオクリアー」を塗布。最後の余りだったせいか、シンナーが目減りし、おそらくカシューが濃くなっていたのだろう。細かく、猛烈に多数の「ゆず肌」になってしまった。運よく、または不幸中の幸いにして太茶分のネオクリアーはもうなく、被害は細茶のみにとどまった。

 

数日間乾燥させ良く削って次の塗装工程へ進むのが定石だ。しかし、腹の虫がおさまらない。転んでもただでは起きたくない。数日後360~600番相当3M SUPERFINE、800~1000番相当3M ULTRAFINEで研磨しながらふとある考えがよぎった。このままもっとやすりの目を細かくして研磨してゆけばもしかしてピカピカになって仕上がるかも。そういえば「研ぎ出し」だ。そもそもこの「細茶」、もう十分な回数のカシューを塗っている。塗装の厚みは十分。多少削ってもきれいに「研ぎ出し」できるはずだ。参考までに今までの苦心惨憺の工程はこうだ。興味のある方のみご参照ください。

 

下塗り    2液ウレタン塗料「8号ストップシーラー」+顔料着色剤「リベラカラー・ケヤキ」

中塗り    2液ウレタン塗料「8号ストップシーラー」+顔料着色剤「リベラカラー・ケヤキ」

上塗り    カシュー「透」2回、カシュー「淡透」3回、カシュー「クリアー」3回、

カシュー「ネオクリアー」筆2回、スプレー2回、(今年になって施行)

 

算数の不得手な筆者にもカシュー塗装の合計が12回だとわかる。一昨年までとしても10回だ。10回も塗ったんだからとてもきれいだ。きれいなはずたと信じていた。自慢したい気持ちがはちきれそうだ。「った。」ふとした拍子に表面を眺めると確かに輝きは合格レベルだが、塗装の凹凸が目につくほど荒い仕上がりだ。最後のスプレー塗装で多少のゆず肌が生じても、ゆるぎない自信に変わりはないはずだ。(った。)一方で同時にこれだけの回数を重ね塗りしているのに、同じ手法でたとえ数回カシュー塗装を重ねたところで出てくる結果は大同小異かもしれないという黒い不安。脳裏に生じた疑問は消えていない。

 

翌日さっそくホームセンターへ行き研ぎ出しに使うやすり一式を買ってきた。筆者が使用しているやすりで最も目の細かいものは1200~1500番相当3M MICROFINE だ。この日購入したやすりはフィルム状のもので順に1000番、2000番、4000番、6000番、8000番、10000番、15000番!だ。その他コンパウンド入り布、コンパウンドなし布も合わせて購入。だめ元根性で始めた。ので、しばらくは証拠写真がない。神話の世界だと思って賢い読者は聞き流してください。経過を追って説明する。

 

平成25年10月27日        頂上遥か、足取りも軽く。

さっそくフィルム状やすり1000番で研磨開始。柔らかくはないフィルムなのでくちゃくちゃパリパリという感じで進む。そこそこだと思ったところで順に2000番、4000番へと軽く進む。ゆず肌もそこそこ取れている。表面は当然まだつるつる感ゼロで、すりガラス状。フィルム上やすりはまだまだ続くがこの辺でよさそうな予感がする。次。コンパウンド入り布で研磨開始。コンパウンドが多少べたつくも気にせず研磨。30分近くてれてれこするも表面にあまり変化なし。本日の授業はここまで。写真なし。

 

平成25年10月28日        5合目通過。7合目制覇。

昨日の続き。コンパウンド入り布でさらに研磨。数十分軽くこすっているうち、表面のくもりに一部変化あり。ごく一部だが曇り空から薄日が差した気がする。本当か。もう少し真面目にこすってみる。往復100回だ。おお、少し日差しが強くなった気がする。もちろん全体的にはまだまだ五里霧中だが。この日はさらにゴシゴシを1時間ほど続け、7割がた晴れた状態に。清兵衛の気持ちがよくわかる。

 

平成25年10月29日        雲上かなた、頂上を視認。

単細胞的研磨をひたすら続行。曇りがさらに消え、鏡面が次第に広がってゆく。この道のりで正解だとの確信を得る。頂上に手が届きそうだ。呼べば聞こえる。確固たる足取りでホームセンターへ行き、乾ききったコンパウンド入り布にかえ、もう一つ同じ布を奮発する。この日も計1時間ほど研磨をし、鏡面が9割がた広がってきたのを確認。一回に往復100回が目標。手ごたえはある。手も痛い。しかし、表面をじっと確認するたび、ある不安が湧き上がってくるのをどうしてもぬぐいきれなかった。工程が進めばいずれ解消すると思っていた、あるものが消えない。ゆず肌だ。表面一面に、猛烈な個数の小さなゆずが一斉にこちらをにらんでいる。一部ではなく、ひょうたん全面を覆い尽くしている。くどいようだがこの時の写真なし。下はスーパーで買ったゆず。(↓)人を喰ってる。今に喰ってやる。

 

平成25年11月1日        一時後退。

頂上は目前と思っていた。しかし、そこは隣の山だった。現実が受け入れられない。半泣きになりつつ絶望的研磨を続ける。一縷の望みをかける。ある段階で一斉にゆず肌が消えてくれるはずだ。腱鞘炎になりかけた腕をかばいつつこする。輝きは一層増すが、それにつれてゆず肌が返って目立つようになってきた。証拠写真がない代わり文字が叙事詩的になってきたのにはご勘弁。

 

平成25年11月3日        完全撤退。

秋葉原にやってきた。目指すはよく行くホビーショップ「TM」(仮称)3階。コンパウンドが悪いのだ。塗装面研磨で定評のある「タミヤコンパウンド細目」「タミヤコンパウンド仕上げ目」を手に入れる。「ハセガワコンパウンド」その他柔らかい研磨用布も数点購入。コンパウンドの時点まで引き返し、もう一度正しい道のりを目指そう。帰ってから早速「タミヤコンパウンド細目」を布に塗り、研磨開始。無数のゆず肌がきれいに一網打尽だ!と期待する。も全く変化なし。おかしい。もっとこすろう。一か所100回が目標だ。ゴシゴシ。30分ぐらい奮闘するも変化なし。輝きはある程度あるもののゆず肌が一斉にこちらを見てバカにしている。中途半端な引き返しではだめだ。夕ご飯を食べて元気を出そう。

 

平成25年11月3日深夜        再出発。

最終手段。根本(こんぽん)がだめだからその後の努力は砂上の楼閣。ゆず肌を絶滅しない限り前進してはいけない。覚悟を決め赤い360~600番相当3M SUPERFINEを取り出す。どうしても使いたくなかったがこれしか手段はない。一見鏡面に見え、実は無数のゆず肌がうごめく腐った表面に渾身の3M SUPERFINEを突きつける。思いっきり、突き進む。削り落ちるカシューの粉はひょうたんの実から吹き出す鮮血か、腐ったゆず肌の断末魔か。躊躇してはいけない。心を鬼にして進める。ある程度研磨した段階でそっと手を休め、表面をぬぐってみる。やっぱりいた。びくともしない。生半可な研磨ではだめだ。一か所100回往復を目標に研磨。時を忘れる。腕が重い。粉をかぎ分け、地肌の観察。ほんの少し、ゆずの勢いが減っている。全面にわたり同じく3M SUPERFINEの研磨を続ける。ひょうたんが過熱している。一通り研磨が終わると粉をきれいに払って、しつこく再攻撃。全身暑くなってきた。滴り落ちる汗が目に入り、痛い。構わず続ける。もう一通り全面研磨。ゆずはどうだ?半分くらいに減っている。消えた面積の方が大きい。一か所200回こすろう。腕が痛い。粉が飛び散る。もうだめだと思い、我慢の限界を超えた数十分後再確認。汗と涙の隙間から見えた地獄の表面から9割がたゆずが消えている。ところどころにゆずの小集団が残存。次は狙い撃ちだ。一か所50回程度を目標に強烈研磨。そっと覗くとその集団は全滅。ひょうたんをすみからすみまで観察。北から南まで、頭からお尻まで、針の穴も見逃さない。見つけると即強烈研磨。次々ゆず集団は全滅してゆく。腕が動かなくなったころ、ついにゆずはひょうたんから完全消滅。よろよろと立ちあがり、深夜の風呂につかり込む。

 

 

平成25年11月4日早朝        最悪の局面は脱出した。表面をよく見ると薄い小さな等高線が所々に見える。そう、ゆず肌ができた塗装表面が徹底研磨で一部消失し、その下の塗装表面が表れているのだ。幸いこの表面も同じ「ネオクリアー」なので違和感はない。境界面はいずれ消えると思う。もしこのひとつ前の塗装がネオクリアーでなく別の色だったら大変だ。それこそ伝統工芸の「研ぎ出し」になっていたところだ。まだやめない。800~1000番相当3M ULTRAFINE、1200~1500番相当3M MICROFINEで引き続き研磨。さすがに今度は軽い作業でよさそうだ。

 

 

研磨後の状態。(↑左右)表面の調整にとどめる。隠れたゆず集団が時々見つかる。すると最初のSUPERFINEに戻りゆずを殲滅。その場所だけ順次もと通りの研磨を軽くして穴埋めする。深夜テレビの内容がようやく耳に入ってきた。つまらない。2000番、4000番、6000番、8000番、10000番、15000番とフィルム状やすりへステップアップしよう。(↓)どこまで上げてゆくかは臨機応変で考える。

 

 

2000番から始めようと思ったが手元に見当たらず。部屋のごみ山に隠れたか。まあいい、4000番から開始だ。初回の失敗時はこの4000番まで研磨した。今回はこれから始める。軽く研磨してもくもりガラス状表面にあまり変化なし。すこししつこく続けるもやはり変化なし。(↓)

 

 

薄日が見えたかな、程度。(↑)4000番研磨後の様子。

 

次は6000番。研磨していてもあまり粉が出てこない。削る、というより磨く、のイメージに近いことを実感する。4000番で取れなかった曇り空が急に全面晴れだしてきた。(↓)

 

 

磨くのに引っ掛かりが軽くなり、表面をこすっている。研磨後の様子。

 

 

8000番へ進む。手ごたえありだ。(↑)つるつるの表面につるつるのフィルムが滑る。研磨後の様子

 

 

10000番!研磨後の状態。(↑)これ以上にないくらい表面は平滑。鏡面が広がるも9割り方にとどまる。ゆずは全く見えない。薄い等高線もすでに見えない。

 

もういいだろう。次はコンパウンドだ。「タミヤコンパウンド細目」をひょうたんにつけ、クロスで磨く。

 

 

今までへばりついていた曇り面が軽いひとこすりで一気に消失した。嬉しい。湯気で曇ったガラスを乾いたタオルでふき取った印象だ。嬉しさ余ってよくこする。本当の鏡面よりさらに平滑だ。意地悪く見ると、光加減によってはわずかに磨いた後の薄いラインが一応見える。気にはならないが。すでに明け方。へとへとの中に奇妙な高揚感が混じりこみ、気分良く就寝。続きはまた今度。

 

平成25年11月5日        清兵衛と瓢箪

「タミヤコンパウンド仕上げ目」に進む。布に少量付け昨日と同様磨いてゆく。輝きが一層増したように思う。

 

 

薄いヘアライン状の傷がわずかに見える。コンパウンドそのものによる傷だと思う。この後さらに目の細かいコンパウンドで磨いてみよう。写真をよく見ると中央やや右寄りにゆず肌の名残がわずかに数個見える。もう見逃してやろう。夏草や、兵(つわもの)どもがゆずのあと。

 

平成25年11月8日

 

(↑)その後コンパウンドなしの布で穏やかに磨きを続ける。これ以上の滑らかさ、輝きはないという時点の様子が上の写真だ。

 

 

 

        

 

2011年度筆塗りカシュー最良作品の一つと比べても平滑感に遜色はない。(↑左)むしろ、より平滑だ。写真上はそれとの記念撮影。形が瓜二つ。ひょうたんはウリ科だから当たり前か。ちなみに右側ひょうたんは以前少し紹介したガラス製赤ひょうたんの原型モデルとなっている。(↑右)よくよく表面を観察すると研ぎ出しの方は塗っておしまいとする従来法に比べ「深み」に劣る気がする。まとめると以下の通りだと思う。

24%

 

研ぎ出し法とその他の方法の比較

研ぎ出し法はある意味底なしの噴火口。はまらないように。

 

 

 

 

 

 

車でWALKMANが聴きたくなったあなたに。/ 休憩編へつづく。

 

車でWALKMANが聴きたくなったあなたに。

休憩編

 

車 虎次 著

清 兵衛 共著

 

(この休憩編はいつもの千成表太郎氏が風邪をひきお休みなので双子の弟・不肖・車虎次が代わって筆を執ります。ひょうたんが気になる方は読み飛ばしてください。)新車が来た。多少は珍しいことだが、生まれて初めてでもない。とにかく嬉しい。運転席のドアを開け、座った時の、新車の香り。新しい期待感が体中に満ち溢れる瞬間だ。

(写真はイメージです。)

新車でWALKMANを聴こう。いままでのiPodはさよならに

 

エンジンをかけ、いざ出発。なかなか調子がよろしい。いすの位置を調節したり、あれやこれや。でも、何かが足りない。そうだ、音楽だ。甘く、溶けるような音楽はエンジン音の一部だ。えーと、どれで聞くのかな。・・・わからない。いろいろ探したがわからない。もっとセールスマンに聞いとくべきだった。どうせどこかのスイッチを押せばラジオやカセットの音が出てくるだろう、そんな目論見はスカッとはずれだ。 6%

 

いざ出発。

 

以前の車についていた音源は主にラジオ、CD、それからCDがハードディスクに録音された音源、もう一つ、iPodだった。CD録音のハードディスクは自動的に録音が進む簡単な仕組みだが、聞くときもCDと同じく曲順もそのままだ。しかし、iPodは好きな曲だけを順不同で入れることができ、それを聞く環境にできる、ちょっと優れものだ。それで納得すればこの話は終わり。しかし、そのうち使おうと思っていたWALKMANが家に余っており、この際これから新車に使いたい。iPodは嫌いだ。ついでに内容も一新したい。そう思ったのが運の尽き始めだった。

 

 

家にあるWindows PC(一番左)と携帯音楽プレーヤー、いわゆるネットワークオーディオは古い順にiPod、WALKMAN、スマホの3台。(↑)2年ほど前に家じゅうのCDをPCに入力した。一部の曲を並び替え、組み合わせ、何種類かのプレイリストを作った。iPodにはそれがそのままおさまり、以前の車の中でよく聞いていた。でも、今回新車を思い切って買ったのをきっかけに不満だらけのプレイリストを作り直したい。ついでにWALKMANに載せ替えたい。どうすればCDからの音源をiPodからWALKMANに載せ替えられるのか、曲順の変更ができるのか。そんな案内本を本屋で見かけたことがないし、周囲で教えてくれる人もいない。この際その手順を忘れないうちにメモしておこう。

 

まず、大もとのPCの現状。Windows 7が快適に動くノートPCだ。しかし、眺めているだけではiPodやWALKMANから音は出てこない。以前世の中の仕組みが単純だったころ、携帯音楽といえばカセットテープだった。きれいなWALKMANの口が巧妙に開き、カセットを神妙にセットすればもうそれで準備はおしまいだった。最もその前にレコードやCDから録音する儀式を乗り越えての話だが。PCにiPodをこすり付けても音は移らない。まずそれ用に音楽アプリをインストールする必要がある。この時点ですでに複雑だ。

CDの内容をWALKMANに入力するには一旦音楽をPCに入れなければならない。もちろんそうでないパターンもあり得るが原則の手順を示そう。で、そのためにはただCDをPCの中に入れるだけではいけない。ラジカセにCDを入れるつもりだとうまくゆかない。音楽アプリを使わなければならない。まず、Windows PCには標準で音楽アプリ、ウインドウズメディアプレイヤーがついてくる。これを立ち上げておき、CDをPCに入れるとそこから急に世界が広がる。ウインドウズメディアプレイヤーで曲を取り込み、曲順を変え、いくつかのCDをあわせてお気に入りのCDを作ることができる。しかし、WALKMANなどの携帯プレイヤーに音を移し替えるのは少し不便だ。おそらくできるだろうがその機能を使ったことがなく知識もない。音楽アプリの2番手はiTunesだ。アップルから無料で簡単にダウンロードできる。iTunesと検索すればすぐに探せる。iTunesはウインドウズメディアプレイヤーよりもう少し使い勝手がよく、iTunes を起動させCDをPCに入れるとCD内容の録音はもとよりアップル社製iPodに内容を移す操作があっという間にできる。「同期」の表示が出てきて考えなしにデータの移行が終わっている。数年前にはこのiTunesを使いiPodにたっぷりCD内容を録音した。音楽アプリの3番手はXアプリだ。変な名前だが固有名詞なので仕方がない。SONY製のWALKMANに録音する場合、このアプリが必須だ。もちろんCD内容の取り込み、CDへの録音にも対応している。見た目にも操作が易しく、このアプリでPCのまま音楽を聴くのに重宝している。音楽アプリの4番手、Media Goだ。これはソニー製スマホへの音楽入力に使う。もちろんスマホで撮った写真、ビデオその他の管理にも使える。無料でダウンロード可。

 

 

出無精な性格ゆえ家で音楽を聴く機会が多い。その時は操作性の良いXアプリを介しPCで直接曲を聴いている。今回あまり活用してなかったWALKMANにあらためて登場してもらおう。やっと車の話に戻った。今回購入した非高級車にはCDとラジオが標準装備だ。でも少しひねりが聴いている。正確に記すと少し違う。まずCD。そしてハードディスク音源。これはCDを入れるとそのまま自動録音してくれる優れものだ。曲名やアーティスト名も自動入力される。次、メディアオーディオだ。聞きなれないが携帯プレーヤー、WALKMANやiPodのことだ。それらを車に接続して使う。機械の形状に合わせケーブルが3本付属している。1本はiPod用だ。もう一つはUSBケーブル用で、一応WALKMANにつながる。次。まだある。Bluetoothだ。簡単に言えば無線だ。デジタル方式の無線通信で、家にあるWALKMANやスマホもこれに対応する。最後にSDカードだ。SDカードはメモリーカードの一つで、ここに音楽信号を入れて車で聞けるらしい。音源はてんこ盛り状態だ。

 

 

(写真はイメージです。)

 

新車WALKMANを受け付けず!

 

まずは以前のiPodを持ち込み専用ケーブルでつないでみる。「メディアオーディオ」を介しあっさり問題なく曲が流れてくる。プレイリストも見える。すぐ切る。次はWALKMANだ。スマートに行こう。デジタル無線のBluetoothだ。簡単に設定、認識できた。さて、では音楽再生。でも音が出てこない。おかしい。では無線ではなく有線に変更だ。iPod同様「メディアオーディオ」用のUSBケーブルに接続。でも「認識していません。」の冷たい表示。何がいけなかったのだ。さっそくディーラーのセールスマンに聞きに行く。「WALKMAN?あーATRACですね。ソニー独自の形式なので認識しないんですよ。これはWMAかMP3しか読めません。」大ショック。さっそく家に帰り大元となるPCのXアプリを見てみると確かにATRACの形式が多い。

 

 

音楽信号をPCに取り込む際、会社ごと、つまりアプリごとに音楽信号の形式が変わる。もともとCDに書いてある音楽信号の形式はWAVEというものだ。それをウインドウズメディアプレイヤーならMWAへ、XアプリならATRACに、iTunesならAACへ変換すると決まっている。もちろんCD録音の際設定を変えればWAVEそのままや、その他の信号に変えておくこともかなり自由にできる。しかし、一回取り込んだ形式をその他の形式に変えるのは少し大変だ。そもそもWAVEのままなら話は単純で、音楽データの移行はシンプルなのに。以前メモリーの容量が限られていた時代、といっても数年前までの話だが、そのころまで音楽データは他のPCの情報、データに比べ巨大だった。そのためこれらを圧縮し、PCでも音楽データを容易に扱えるようにするためのものがこれらの圧縮形式・圧縮音源だ。形式はぞろぞろ各社から出現し、今に至っている。いまどきメモリーカードなんで4ギガのUSBメモリーが数百円の時代だ。圧縮しないWAVEのまま、音質がいいまま音楽データを保存したい。よって家のPCには最近録音したものはすべてもとのCDのWAVE形式で入っている。それが一部WALKMANにも入ってる。その他ウインドウズメディアプレイヤーで標準に取り込んだWMA、XアプリのATRAC、どこから紛れ込んだのかMP4、AACの形式のものも多い。もう一度整理しよう。

 

CD                    →WAVE

ウインドウズメディアプレイヤー        →WMA

Xアプリ                    →ATRAC

iTunes                    →AAC

 

複雑だ。この環境を理解しないと次には進めない。MP3が出てないがこの形式こそ圧縮音源の先駆けだ。安いケータイプレーヤーの形式だ。MP3のみを扱う機種は家にはない。ご先祖に敬意を表し、ほとんどのケータイプレーヤーはMP3もサポートしている。今回のささやかな新車が対応する音楽形式は上記のうちWMAとMP3、それとiPod接続のAACのみだ。お家の家庭事情が違った。

 

 

まず、大量に取り込んである音楽のデータ形式をXアプリ上で変更できないかどうかいろいろ探した。他の形式をWAVEに変換する機能はついている。当然だ。あらたにCDに録音する場合は当然それに変換するのだから。他はない。何もない。あっさりしている。ネットで調べた。XアプリとWMAを掛け合わせると、いくつかの無料変換ソフトの紹介記事が載っている。さっそく試してみた。が、英語形式で、しかもPCに疎いためかうまくゆかない。あきらめて近所のPCショップに出かけた。音楽の変換ソフトはありますか。「うーん、今うちに置いてあるものではありませんね。ちょっと前まではいくつかあったんだけどね。正直ネットで無料のものも出てるし。」取り合ってくれず。じゃあ、CDからの入れなおしだ!CDをPCに取り込む際にXアプリは圧縮形式を聞いてくる。もちろん聞くように簡単な設定をしてのことだが。書架からほこったCDを大量に取り出してくる。ため息が埃をそっと巻き上げる。まずはXアプリの内容の消去だ。いやそのまえにバックアップだ。幸いXアプリの使い勝手が良いため簡単にバックアップできた。といっても数十分はかかったが。それからXアプリの内容を全削除しようと思ったが、万が一のことも考え、Xアプリをインストールしていない別のPCで作業することにした。別のPCに新たにXアプリをインストール。数十分かかるも順調に進む。それから一気呵成にCD録音を始める。といっても以前のように自分の持てるCD図書館を作るような勢いではなく、今回聞く分の、気に入った曲だけこじんまりと抜き出す。CD一枚丸ごとのもあれば、数曲のものもある。1時間ほどで終了。くれぐれも形式はWMAだ。プレイリストも新たに作り直す。新しい酒は新しい袋に、だ。できたてほやほやのところで手持ちぶたさとなっていたWALKMAN登場。単独で以前の内容をすべて消去できた。その後PCに接続し、「機器への転送」を押し、いろいろ操作する。新しい内容を簡単転送。もう録音とも言わない時代だ。あっさり終了した。 6%

 

 この時の筆者の心情(意気軒昂)

 

WALKMANを新車で再生。するも今度はプレイリスト再生できず

 

さっそく新車へ持ってゆく。エンジンをかけおもむろに再生開始。何も反応なし。「転送中」の冷たい表示のみ。いろいろ試すうち、WALKMAN側で再生スイッチを押すといきなりさわやかな音が聞こえてきた。車が生き返る。嬉しい。しかし車側からコントロールできないらしい。おまけにプレイリストが出てこないぞ。Bluetoothの設定がおかしいのかな。では有線接続、メディアオーディオだ。USBコネクターに専用線をつなげてと。どーだ、と思ってもこちらは「認識されません」の表示のみ。音も出ない。まさにぐーのねも出ない。この日はここまで。すごすご引き上げる。DSC 1676 6%

 

プレイリストが出ない。プレイリストこそ聞きたい曲を聴きたい雰囲気で聞きたい順に聞ける最大の武器なのに。自分の「ベストCD」ができない。PCにつなぎ直しXアプリと格闘するもできない。確かにXアプリ上にはプレイリスト作成のタブがあり、PC上では完璧にできているはずなのに。転送も指示通り行っている。WALKMANは悪くない。車がパーだ。さっそく車屋さんに告げ口。「いやー、iPodとの連携は取れているんですけどねー。WALKMANはどうですかね…」え―!そうなんですか。じゃあどのWALKMANの機種が対応しているか教えてください。「はあ、少しお時間いただきます。」とのこと。車屋さんにさらに迫る。もう少し詳しい説明書はないんですか。通り一遍で説明がわからないんですけど。みんなどうしてるんですか。「詳しい説明書はありません。ほとんどのみなさんは最初からあきらめます。」とこれには自信たっぷりの返事。 6%

 

 その時の車屋の口元。(イメージです)

 

仕方なく古いiPodの中身を入れ替えて新車の気分を。

 

WALKMANは最近の新車に事実上対応してない。しっかりしろ、ソニー。嫌いなiPodで出直すか。別のPCでの作業はやめ、自分のPCで作業に専念することにした。別のPCで行ったXアプリの新しい内容をすべてバックアップし、自分のPCのXアプリに移す。その前にすべての過去のデーターをXアプリ上から消去した。さよなら、過去の音楽たちよ。新しくXアプリ上に別のPCの音楽データを入れなおし、はたと考えた。iPodに入れなおすのならiTunesだよな。さっそくネットからダウンロード。こちらはすぐに、数分で終了。Xアプリ上の音楽データをiTunesに移さなければいけない。両方を開き、Xアプリ上の曲をつまんでiTunes上に移す。うまくゆかない。バツ印が出てこのままでは移せない。うーん、困った。XアプリとiTunesを掛け合わせ、ネット検索。いろいろ出ているがどれもこれもXアプリはソニー独自のATRAC仕様なのでそのままではiTunesに移せないと書いてある。このアプリを使えばよい、とお勧めのソフトはある。でもその力量がおそらくないのでその方法はパス。そもそもXアプリに取り込んだ時点でATRACではなくわざわざWMA仕様にしてあるのに。一部のネット情報で音楽データを生のまま取り出して、iTunes上に張り付けてみる手法があるとさらりと書いてあった。生のデータ!本当の音楽データは今見えているXアプリやiTunes上にあるのではなく、PCのどこかにあるという。どこだ?まずCドライブだ。次は?わからない。Xアプリ上にある、とある曲を右クリックすると「詳細」項目があり、見てみる。と細かくそのデータ場所が記載されている。住所だと思えばいい。ものすごく長い。それを見ながら探ってゆく。Cドライブ→ユーザー→パブリック→パブリックのミュージック→Sony Mediaplayer X→Shared→Music、でやっと音楽用のフォルダーが出てくる。そのフォルダーに生の音楽データ(曲)が入っている。

 

俺たちも楽じゃないよ。(音楽のつぶやく声のイメージ)

 

深い!深すぎ。今どきの地下鉄じゃあるまいし、こんなところじゃわかりません。でもわかってしまえば簡単。さっそくそこから曲をつかんでiPod上に移す。うまく入ってゆく。もちろん移した途端iTunes標準形式のAACに変更することを求められる。答えは「はい」だ。あるものは1曲づつ、あるものはまとめてiPod上に移行した。少しおかしなことに気が付いた。先ほど削除したはずなのにフォルダーの中に以前の曲が残っている。今回入れた曲ももちろん残っている。右クリックし、詳細を見るとデータ形式が違うことがわかる。以前のMP4やATRACは無視し、今回のWMAのみを気を付けてiTunesへ移行する。プレイリスト数個分、数十曲分の処理で10分前後で終了。なお、以前のデータでCドライブ→ユーザー→車虎次→Music→と続く収納場所もあることが分かった。要注意。XアプリやiTunesで見えている楽曲データは実は実物ではなく、PC奥深くにしまってある楽曲データを見ている虚像にすぎないことが実感できた。

 

 

iTunesにデータが移ったら、そこからiPodへの曲移行はほぼ自動でゆく。出来上がってすぐにさっそく小さな新車に持って行き確認。iPod特有のいやらしい音が出るのと、プレイリストもしっかり表示される。とりあえずほっと一息。

  筆者自宅亭で夕刻静かに雅楽を楽しむ(のイメージ)

 

iTunesを操作していてわかったことが一つある。以前の古い楽曲の入ったiPodのデータを今持っているPCに移してから新しいPCのデータを移そうと思った時のことだ。以前の楽曲データはやはり以前のPCを使ってiPodに移した覚えがある。以前のPCはもう使っていない。iPod内の古いデータを新しいPCに移そうとしたところ以前のiTunesではないためデータを移せませんとの表示が出てきた。Xアプリだと関係なくWALKMANからPCへ、PCからWALKMANへ移行は自由だ。iPodの古い楽曲データは霧となって消えていった。ただし、そのさいiTunesがしつこくネット上でなにやら確認作業を行っている。どうしてだろうと思ったら、以前アップルストアで購入した数曲のデータが生きていて、今のPCへとiPodから移行できていた。ちなみにXアプリで購入した楽曲データはiTunesに移せない。

 

実はWALKMANはプレイリスト対応していた>>(筆者のもの)>>車から操作不可

 

何かが足りない。そうだ。WALKMANだ。車屋さんからあれ以降返事はない。もう少しWALKMANを見てみよう。不思議なことにWALKMANは自分自身で曲の出し入れができない。インターネット経由で曲を購入したり、削除することは可能らしいが。いわくつきのWALKMANをいじっていて気が付いた。プレイリスト表示がない。操作可能な範囲はごくわずかだ。しまった!もともとこのタイプのWALKMANはプレイリスト対応していなかったのか。あわててネットでWALKMANのページを探し、見てみる。するとプレイリスト対応でないWALKMANの機種が実に多いではないか。最近発売されたソニーの最新スマホが「プレイリスト対応!」と宣伝している。つまりは今までプレイリスト対応していなかったものが多いということだ。大ショック。ちっぽけなiPodは昔から対応しているのに。車屋さんはお怒りになっているかもしれない。恐るおそる自分の持っているWALKMANの形式の取説を見ると、やはりプレイリスト対応とは正面切って書いていない。残念無念。がっかりして情けないWALKMANをいろいろいじってみる。まず一番目立つ正面左上に「ライブラリ」のタブがある。これを押し、出てくる表示をずっと右に送ってゆくと、あった!「プレイリスト」のタブが。

 

 

まったくわからなかった。そっとそのタブを押すとだーっとプレイリスト表示があふれてきた。なんだよ、まったく。じゃあ結局プレイリスト再生ができないのは低性能低脳新車が原因なんだ。

6%

  日が暮れて、道なお遠しWALKMAN。

 

ソニー製スマホの音楽再生に挑戦。しかし大爆発!

 

WALKMANに今のところ勝ち目はない。iPod先行を許すが、釈然としない。今度はソニー製スマホを取り出す。第三の矢だ。Bluetooth機能がついており、今までも車内でのハンズフリーホンとして重宝している。前車でも同じ環境だった。しかし惜しいかな、Bluetoothでもオーディオ規格のそれ(A2DP ; Advanced Audio Distribution Profile)を同時に車内で使用することはできなかった。今回のささやかな新車はハンズフリーホンのBluetooth(HSP ; Headset Profile)とオーディオのBluetooth両方同時に使える。バカだが気が利く。で、手持ちのソニー製スマホに楽曲を入れ込み、これ一台で用をこなせるようにしたい。ソニー製スマホのデータやり取りはMedia Goを介する。以前からインストールしてあったがあまり使う機会がなかった。Media Goを立ち上げると、すでにXアプリから自動で楽曲データが入っている。しかし、残念ながらプレイリストまでは入ってない。仕方なくプレイリストを手作業で作成した。以前のスマホ内楽曲データを消去する。

 

ちなみにこの消去はスマホ側ではできない。ちょっとしたコツが必要になるのでここで解説する。まずMedia Goのページ左上にあるXperia a…(実は続きが隠れていて見えない)をダブルクリックする。シングルクリックではいけない。ダブルクリックするとその下に「ミュージック」「ムービーとホームビデオ」などの項目が下に新たに現れる。その「ミュージック」を今度はシングルクリックし、右側に現れた曲群のどれか一つをクリックする。どの曲でもよい。そして左上の「編集」→「すべて選択」→「削除」でスマホ内の楽曲は完全削除だ。その後は新しい曲をPCから空になったスマホへ転送だ。左わきの「ライブラリ」の下にある「ミュージック」をシングルクリック、どれか一つクリックして左上の「編集」」→「すべて選択」→右下の「転送」で終了。うまくゆく。同じ会社のものは当然相性がいい。

 

肝心のプレイリストは?スマホ側の「WALKMAN」→「マイミュージック」で「プレイリスト」が出てきた。期待を込めてタッチする。どーだ。何も出ない。何も出ない。頑張ってMedia Goでプレイリストを作ったのに反映されていない。「プレイリスト」をタッチすると「新規プレイリストの作成」タブがあり、そこからは手動で進めてゆくしかない。手間がかかる作業だが何とか半分だけ終わらせる。後は明日だ。夜も更けた。

 

翌日さっそく生まれ変わったスマホを持って車に乗り込む。まずはBluetooth再生だ。スムースに音は出てくる。少し音は小さいが。ただし例のごとく車側にプレイリストは表示されない。スマホ側にはプレイリストが出ているのでどこかにスマホを置き無理すればプレイリストの確認はできる。つまり無理すれば一応プレイリスト再生もできる。この状態でメディアプレイヤー接続(有線接続)のiPodに切り替えて聴けるのかな。ためしにiPodに切り替えてみた。切り替えた途端だーん!という感じでiPodの大音響が耳の後ろでさく裂した。

 

 

音量が大きすぎたのだ。危険だ。あわてて音量を絞る。スピーカーが破損するか、鼓膜が破けるかのどちらか。しばらく耳が聞こえにくい。そういえばスマホをさっきBluetooth接続したときに妙に音が小さくて音量を大きくしたっけ。自らの不注意だが車会社の設計者はおそらくこんな事態が起こりうることを予想だにしないだろう。完全な調整不足。スマホ一台車に持ち込めばBluetooth音楽とBluetoothハンズフリーホン両方の用が足せる試みは一応成功したが、半分は今のところ失敗に終わっている。まだ耳が痛い。耳寄りな話がないか探してみるつもり。WALKMAN側の音量を大きくしようとか、いろいろ考えている。プレイリスト表示が車側でできないことと他のメディアとの音量バランスが悪すぎること。しばらくはそれをネタにiPodを生かしておこう。

 

  >>> 

 

腹の立った翌日もスマホを車内に持ち込み検証。あらかじめスマホの音量を最大に近くしておいて、車側の音量をなるべく絞って音楽スタート。スタートは車側の操作で可能だが、先に述べたとおりプレイリスト再生表示は車側に出ない。スマホ側でのみ表示される。耳を塞いでいた両手をそっと外すと、穏やかな音が聞こえてくる。今度はそのまま有線接続のiPod音源に切り替え。きつく塞いだ手を耳から外しても音量は先ほどとあまり変わらない。教訓その1。Bluetooth接続でもアナログ式オーディオ機械の接続と同様送り出し側の音量調節が必要となる。教訓その2。筆者のスマホ音量は最初からかなり大きくしておく。少なくとも8割がたの音量にしておけばiPodその他の音源の音量と釣り合う。教訓その3。スマホ単独で、つまり車外でうっかりスマホ音楽を聴くときは耳がつぶれる恐れあり。教訓その4。教訓その2、その3を考えやっぱりスマホの音量は小さくしておき、車内でスマホ音楽は聞かない。iPodにまかせる。なんだ、つまらない!

 

あくる日も笑う歌声iPod、車内にこもるアップルの風  詠み人知らず

 ヤケ酒はほどほどに。車とお酒は利益相反関係にあります。

 

量産編へ続く

量産編

 

最終章に肉薄。感動はなるべく多くの人々で分かち合いたい。しかし、感動するほど素晴らしい出来栄えの作品は極めて希少だ。どうすればよいか。同じものを作る、すなわち量産だ。ひょうたんの量産?聞いたことがないぞ。広い畑を借り、大量のひょうたんを栽培しても、自然な収穫物ゆえ、同じものはできない。栽培する以上芸術品の量産はできない。粘土をこねて作る?木材を削り、彫刻して作るか。せいぜい数個どまりで、量産にはならない。最近ではシリコンの型枠を利用し、プラモデルなど、ホビー用品の部品を作ることができる(らしい)。しかし、できる大きさはもっと小さく、しかも数10個どまりだ。やはり、ひょうたんの大きさのモノを量産するには工業製品として工場で製作するしかないようだ。量産編では今まで量産になじみのなかったひょうたんの芸術品を、無理やり工業製品として製作できるのか、読者の応援を頼りに歩みを進めてゆこう。前人未到ゆえ、いつ小路が崩れ、「無」の結果が待ち受ける運命かもしれないが。

 

塗装編でひょうたんの話はもう勘弁と思った読者は多いに違いない。しかし、そこで終了すると、古来から繰り返されてきた田舎者のひょうたん自慢でしかない。自然栽培で得られた多種多彩のひょうたんを選び、削り、盛り、塗って仕上げた一品は最終章となる量産の準備段階でもある。先行試作品ともいう。手作業で作ったからこそ、自然な作物から作り上げたからこそ芸術的価値があると思いがちだが、そうではない。「塗装編」で人を感動させる物体の原点は形、密度、輝き、貴重性で、その物体に可能な限りの塗装を施したものこそが芸術だと青い芸術論を筆者が述べた。しかし、それらを満たす完璧な芸術品は実はそれだけでは価値がない。人知れずたった一個の作品を所有しても死蔵となる可能性が大きいからだ。著名な芸術作品は著名であればこそ、日の目を見る。幽霊や幻に価値はない。屁理屈かもしれないが、芸術論の前にはあるか、ないかの物理論が優先してしまう。この章では幻を現実にしてみようと思う。

 

なかなか写真が出てこないのはご勘弁。しばらくは工業製品を量産軌道に乗せるにはどうきっかけをつかんでよいのか、苦しいもがき、あがきが助走路として必要。ちなみに筆者はぼーっとして生きてきたのでその手の工学的専門知識はない。

 

量産前夜紆余曲折            人工ひょうたん探訪

 

    

 

とある暇な正月に作った粘土製の中型ひょうたん。(↑左)軸に太い心棒を入れ硬い銅線等でフレームを作り、慎重に粘度で形を作った。当たり前だが重く、表面は凸凹で、自作不可。石膏でひょうたんは作れない。もちろん量産も不可。没。原型(↑右)と雰囲気は似ているのがせめてもの慰め。

 

自分で製作することをあきらめ、他力本願路線へ変更。ひょうたんは実質的に木だ。木の量産は当然木製品だ、と思い木工製品業者にまずは依頼する。そのときあったひょうたんの中で一番形の良いものを選び、業者の方と相談し、出来上がったのがこれだ。(↑左)木を乾かすのに約3か月程待ち、待望の製品が出来上がった。木製品でも、ひきものと言われる部類になる。ウッドターニング、ろくろの高速回転版だ。仕上がりは素晴らしく、がっしりとして重い。残念だが内部にひょうたん型の空洞はできず、単三電池が数本入る深い穴しかできなかった。一品物の置物としては優秀。お尻があいているのでひょうたんの必須条件、つるしての鑑賞はできない。結局製作費、内部、お尻の形状を考えると量産にはつながらず。今後の参考にとどまる。原型は知人にあげたのでもう手元にはない。

 

もう少し木工製品を工夫し、精密な構造にすればひょうたん形で、内部が空洞の木工ひょうたんが作れそう?とも思った。しかし、上手に木製品でひょうたんを組み立てても、量産するには塗装工程がある。きっとコスト高になる。どうしたら塗装しなくてもよくなるか。その回答がこの下の写真だ。

 

上写真左右は以前にも出てきたクリスタルガラス製ひょうたん。(↑)高さは約25 cmもある大型のもの。金型を製作し、それをもとに石英ガラスの会社に作ってもらった逸品。色違いで数種類のガラス製ひょうたん計数十個を作った。原型は「塗装編」の最初と「研ぎ出し編」の最後に写っている琥珀色のひょうたん。一品物としては最優秀賞で大満足。贈り物として喜ばれている。(はずだ。)今でも時々色違いを発注しているが問題はコストだ。金型屋さんの金型費用もさることながら、一個一個の費用もそれなりで、結局量産には至らず。

 

左はデパートの食器売り場で見かけた徳利。(↑左)1万円もした。信楽焼きである。芸術品を無理に実用品に捻じ曲げるとこのようなだらしない形に陥るという見本だ。もちろん少量生産品。製作者からひょうたんへのこだわりを感じ取ることはできない。右は百均で見つけた本物の大量生産品。容器としての機能は比較にならないほど優れており、しかも口にねじがついている。元々は霧吹きだ。お酒も入る。割れない。軽い。明るい。惜しいかな、格調がない。製作者はきっとひょうたんに対する思い入れがあり、何とかしてその理念を実現したかったに違いない。気迫が十分に伝わってくる。実はこの左右のひょうたんの違いは根が深い。詳しく述べないが、過去にも現在にもこのような衝突はいくらでもある。刀を持った侍と、百姓上がりの兵隊が鉄砲を持って戦った西南戦争、スイスの高級腕時計対日本のハイテク腕時計、イギリスの手作りロールスロイスと量産品のレクサス、などなど。

 

量産へのレール            夜明けは遠い

24%

 

ひょうたん量産は何で作るか。ひょうたんの質、ひょうたんとしての働き、コストの三点がキーポイントになる。粘土、石膏の類は問題外。木は上質だが形状に難あり、空洞を作れない。塗装工程も別個に必要で、コスト面から量産は不可。七味唐辛子容器の二番煎じにもしたくない。ひょうたんの質感はくびれが重要で、ここに分割線を入れる七味唐辛子容器は言語道断。クリスタルガラスは塗装が不要で、完璧な品質。機能面でも容器として完璧。だがコスト高で量産向きではない。解はプラスチックだ。ちなみに前記した百均ひょうたんもプラスチック製だ。

 

 

目標は高級ペットボトルだ。(↑)上の写真の容器群はいずれも市販品で、まずコスト面はクリアーしている。左のペットボトルは容器としてのみ優秀。中央の青い化粧品容器は質感が抜群。よく考えて作られている。カットされたクリスタルガラスのようでもあるし、きれいなペルシャガラスのようでもある。右の容器は表面のグラデーション塗装が秀逸だ。これらの良い点を参考にし、しかも置物として納得のいく質感を求めたい。ついでにお酒も入れたい。安いので友人にお配りして喜ばれたい。思いは膨らむ。勢い込んでいくつかの合成樹脂会社にコンタクトを開始。もう1年以上前のことだ。結果は裏腹に、ほとんどの会社は「やったことがありません。」と取り合ってもらえない。以降あきらめず思い出したように電話交渉を試みている。業者の方々との押し問答をいくつか紹介しよう。後学になるものだけ記載する。涙が出そうな対応のものは省略。なお、お仕事中大迷惑を顧みず関係各位には本当にご迷惑をおかけしました。

 

 

1、S成形工業        「プラスチックでひょうたん型の容器を作りたいのですが。」→話を聞くか聞かないうちに「初期コストがかかりますよ、真空成型か、インジェクションですね。」で終わり。

 

2、J加工屋        「中をくりぬくことはできないけど、試作品1~2個ならできます。コスト?1個10万円くらいですね。量産はできません。」

 

3、Pデザイン        「ウレタン樹脂になります。割れやすいんですよ。内部はロストワックス法で中空にするのでザラザラな内面です。」「シリコン型に液状の樹脂を流し込んで作ります。パーティングラインができるのでそんなにきれいじゃないかもね。」いろいろ親身になって教えていただく。「ガラスより質は落ちますね。型は500万、それと品代は別。まあ、300個で500万オーバーです。むしろブロー成形がいいかも。アルミの型でブロー成形がいいんじゃないですかね。」丁重に断られ、残念ながら終了。しかし大事なキーワードが蓄積してきたぞ

 

4、O化工        「金型代で150~200万くらいです。一個につき100円程。でも、普通ひょうたん形だと金型から抜けないね。」と。いろいろ伺ううちに何とかなりそうな雰囲気。直接お会いして交渉開始。根掘り葉掘り。「基本的にはオスメスの型」「基本的にはムクでないといけません。」ムク?きれいなお嫁さんが来てくれるのかな。ムクとは中身が詰まっているもののことらしい。それだとただの置物だなあ。入れ物にするには…?ひょうたんは基本的に左右対称なので、たい焼きみたいに縦に二分割したらどうですか。「それなら入れ物にできます。」やった。ブロー成形がいいと聞きましたが。「細工ができません」つまり、口元の細かい加工ができなくなるのか。ガラスのように強くてきれいなプラスチック、カーポートの屋根を作ってもらった時に聞いたポリカーボネート、それでできますか。「ポリカの場合、縦に二分割だと接着ができないため中身が漏れます。」「そもそもポリカはアルコールがだめです。」ががーん。「ABSなら接着できます。ただし超音波での溶着になります。治具がいるので何十万もしますよ」うーん。分割線を隠したい。分割線のところでグラデーション塗装はできますか。「手作業なら。お金かかりますよ。」「塗装は単色です。」うーん、おもちゃのボーリングのピンか。等々。・・・本当にいろいろ考えていただくも液体を入れる容器にならないこと、分割線を隠すための塗装が別工程になる、等致命的で、結局あきらめた。

 

百均ひょうたんの存在を早くからわかっていればプラスチック業者の方々との回り道が多少短くなっていたかもしれない。ただし百均ひょうたんに縦のパーティングラインはくっきりと入っているし、薄っぺらで質感が足りない。プラスチックひょうたんはどうもあきらめた方がよさそうだ。出発停止。

 

 

アルミでGO            出発進行

 

質感を出すには金属だ。鋳物業者で検索を始め、懲りもせず多くの専門家の方々に伺った。残念ながらまたもや「けんもほろろ」状態だ。唯一最後まで対応してもらい、なんとか線がつながったのがこれから紹介する軽合金鋳物専門会社S合金だ。

P1030278 10%        P1030279 10%

 

このような雰囲気の場所から往々にして偉大なる芸術作品は誕生する。(↑左右)左の写真の山積みじょうろは無視しよう。右のアルミのインゴットに注目。この塊が命の源泉だ。紆余曲折ありアルミニウムでひょうたんを作ってもらうことになった。これからは順を追って説明する。そのほうが分かりやすいと思う。

 

 

平成25年10月2日        まずは木型

木型が届いた。(↓左右)想像していたよりずっと良い出来栄えだ。右は原型との比較。サイズ、雰囲気ともそっくりだ。

                    

 

この木型、左右に割れる。

            

 

かなり精巧な作り。(↑左右)口元のへたまできちんと再現されている。ヘタのひねりが表現できているのには脱帽だ。なお、ヘタは別部品で本体から外せる。未解決なのはお尻の形状と、内部の空間確保だ。上の写真で分かる通り、お尻は完全な球状だ。自立できない。また、お尻が内部空洞の入り口となるためここの形状は重要だ。次の段階でまた登場する。

 

平成25年10月17日        試作第1号

S合金よりアルミ製ひょうたん試作第1号が届いた。(↓)        

重い。S合金の話だと1.7 Kgの重さだそうだ。鉄アレー並みだ。ほとんど表面加工をしていない、まさにむき出しの状態である。その割に意外と細部までしっかり、丁寧に作られている。金属特有の無機質な感じが手にずっしり伝わる。分割線(合わせ目)はサンドブラスト法で上手に磨かれている。

                    

 

お尻には径3 cmの穴が開いており、自立する。(↑左右)穴はくびれ近くまで内部で円筒形に続いている。蓋がなく未完成の部分だ。社長さんと色々蓋の話をしたが今のところ決定案はない。筆者には今のところ腹案が3つほどあり、相談してみるつもり。とにかく嬉しい。原型を収穫して約1年、量産の構想を立ててから3年ほどの月日が流れている。落とさないように気を付けよう。

 

平成25年10月18日

試作第1号の感動は大きい。しかし残念ながらやはり試作品につきものの欠点もある。欠点を改善してゆかなければならない。

 

 

  1. まっすぐに立っていない。わずかに傾いている。
  2. 表面処理が荒過ぎる。分割線もはっきり残っている。ちなみに上の写真(↑)は筆者の悪い習慣でお尻の傾きをディスクグラインダーで削りとり修正、わずかにやすり掛けした状態。メタリックな質感を表現してみた。
  3. 重すぎる。1.7 Kgもありひもでつるせない。内部をきちんと空洞にする必要あり。
  4. お尻の部分が未処理。直径3 cmの穴が円筒形に約12 cm続いて盲端になっているだけ。簡単にゴム等でふたをすることができるが、貯金箱風でお尻の質感が出ない。金属で段差なくふたができるような工夫が必要。

 

さっそくS合金と電話でお話しし、改良へ進めてもらう。内部の金型を別に作る必要があるとのこと。吉報を待つ。

 

平成25年11月20日        試作第2号、第3号

 

試作第2号、第3号がようやく届いた。(↓左)内部の型枠を製作するのに手間取っていたとのこと。

 

 

試作第1号の欠点は随所で改善されている。おかしな傾きはない。軽い。640gしかない。試作第1号の約1/3だ。この重さなら安全につるせる。表面の粗さはかなり軽減している。(↑右)サンドブラスト法という手法で磨いてあるそうだ。まさに荒削りの「鋳物」だ。風格は十分だが、もう少し表面処理を細かくしてほしい。お尻の処理はまったく手つかずのまま。。

 

アルミ電鉄出発停止        頭隠して尻隠さず。どん尻は尻切れトンボ状態

 

平成25年11月22日        試作第4号

早い。さっそく試作第4号が届いた。(↓右)サンドブラストをよくよくかけたとのこと。試作2、3号と比較すると違いがよくわかる。

(↑)上写真の左は試作第2号。右が試作第4号。

 

お尻の形状は相変わらずで、空洞があいているだけ。今後の最大課題となってきた。お尻の処理についてS合金と色々電話で打ち合わせをする。残念ながらS合金にいいアイディアはないらしい。筆者が無い知恵を絞らない限り、貯金箱のゴム蓋になってしまいそうだ。いけないと思い、さっそくホームセンターへ蓋の素材を探しに行く。いくつかそれらしい素材を見つけた。

 

  1. ボルトとナット 

 

  1. 円形磁石と穴あきプレート(座金)

     

  2. ゴムの蓋(裏と表)

     DSC 1099

 

順に格調は低くなる。1、ボルトとナット法。アルミの鋳物はその本体にねじを切ることが難しいためねじ式の蓋をつけたければナットを用いることになる。アルミひょうたんのお尻の穴にナットを固定する。M16という規格。ナットの穴が直径16 mmだ。ボルトのお尻にはアルミのプレートを付けて見栄えを良くするつもり。ただし、このボルトとナット法は重くなるとのことでS合金がなかなか承知してくれない。2、内部より順に外に向けて座金→円形磁石→アルミプレートにする。座金を本体に取り付ける方法が浮かばない、図面を書いてほしいとS合金に言われ、保留中。3、ゴムの蓋だけはしたくない。格調低すぎ。写真のふたは試作品のお尻に合うようカッターで大きさを調整したもの。蓋の表側、つまり外面にはアルミ箔を張ってみた。アルミ同士その他の外面と相性がいいと思ったが、全く期待外れ。S合金はこのゴム蓋をお勧めだがノーサンキューだ。いずれにしろS合金の担当者が一回当方へ訪ねてくれるとのこと。お待ちする。

分かりづらいかもしれないが図面もどきを書いてみた。

  1. 座金、②円形磁石、③アルミプレート

座金の奥にアルミひょうたん本体が横から見てドーナツ型に張り出す引っ掛かりを作ることがポイントだ。座金は本体に接着剤等で密着させる。

 

荒削りの試作第2号を少し削ってみた。(↑)筆者の悪い癖だ。試作第1号よりさらにつるつるになった。1200~1500番相当3M MICROFINEまで磨き上げている。完全な鏡面仕上げだ。左は元祖「ねじれ君」。

 

この磨き上げたメタリックな質感こそ理想の形状に近いと思う(↑)。完璧に磨きすぎて逆にメタリックな質感が損なわれる様子だったので、下の玉の南半球は800~1000番相当3M ULTRAFINEに下げて(目を荒くして)磨きなおした。金属らしいざらつき感が表現できていると思う。こうしてみると磨き上げた試作第2号は未塗装ではあるが、筆者が「塗装編その1」で述べた形、密度、輝き、さらに貴重性を兼ね備える資質があるとひそかに思っている。この「量産編」でブレイクすること斯うご期待だ。

 

平成25年11月23日            初会合

昼前にわざわざ当方までS合金の社長さんが部下を一人連れて訪ねてこられた。本当にありがたい。さっそく懸案のお尻の処理についてご相談する。筆者のつたない図面を見て「うーん、この細かい処理が鋳物でできるかなあ」と心配の様子。かといって代案はないし、結局当方の提案で認めていただく形になった。型枠の改造がさらに必要となる。表面処理についてもいろいろうかがう。基本的にS合金社内でできる表面処理は試作第2、3号の粗いサンドブラストまでらしい。

 

S合金で製作しているアルミ製品をサンプルとして見せてもらう。写真では表面の質感がわかりづらい。社内でサンドブラスト処理をし、さらに社外でクリア塗装している。クリア塗装のおかげか、試作品第2、第3号の粗い表面処理とずいぶん異なる印象だ。表面処理はこれと同じでとお願いする。かれこれ1時間ほどで有意義な会合を終えた。

 

平成25年12月16日        試作第5号

午後、試作第5号がようやく届いた。S合金によると型枠の変更にまたまた時間がかかっていたとのこと。力作だ。表面処理とお尻の形状が変更点だ。

 

表面処理はクリアー塗装よりさらに高度な銀粉塗装になった。S合金こだわりの処理だ(↑左右)。以前の試作品では明らかだった分割線がほとんど目立たなくなっている。金属らしい質感も上手に表現できていると思う。表面処理はこれで完成とする。

 

次にお尻の形状改良。上手に改良できている(↑左右)。筆者が苦心して書いた図面通りになっている。上の写真左は丸い座金、磁石をはめ込む前の状態。上の写真右は座金にアロンアルファを塗り内部に接着し、さらに磁石が着いた状態。隙間はマイナスドライバーを入れるためのスペースにしてある。ちなみに程よい力で座金についている。ひょうたんの蓋としての働きはこれで必要かつ十分だ。見栄えが少々力量不足だ。

 

そこで磁石のさらに外側にアルミのシールを丸く切り抜いて張ってみた(↑)。アルミ同士で見かけも同じと思ったが意外と見かけが違い、いま一つ。この部分のみ未完成だ。ゴムの蓋よりはましだと思うので一応納得する。試作5号にしてようやく量産ひょうたんは完成に肉薄した。試作1号の後、荷号となり、惨号、死号となるのが世の常である。ので、素直にうれしい。

 

アルミ電鉄出発進行!        順調に走行中。

 

平成25年12月27日        最高速度更新中

金属ひょうたんの量産化にめどがついた。若干の問題点が残っていることはまたの機会にしよう。筆者の拙い仕事を支援してくれている方々にお礼の意味を込めてお土産用金属ひょうたんを作ってみた

 

(↑)。年の瀬も押し迫ったころ全部で70個ほどが届いた。壮観だ。色は青、赤、緑の三原色だ。後で気が付いたが、青色のひょうたんはあまり人気がない。色見本ではもっとペルシャンブルーだったはずだが、少し熟成が足りない。まさに「青びょうたん」の見本になっているのは少し残念。差し上げた方に他意はありません。念のため。ちなみに色付きひょうたんを箱詰めしようとして袖口に先端のひねくれたツルが一つ引っかかった。とたんにその周りのひょうたん十数個が一気にドミノ倒しになったのには驚いた。(驚きすぎて写真なし!)傷がつかなかったのがせめてもの慰め。青くなった筆者を「青びょうたん」たちがげらげら笑い転げる。笑うな。

 

 

塗装編 その2へ続く

その2

ひょうたん誕生悪戦苦闘記

筆者    千成表太郎     Hyotaro SENNARI

                        共著    清兵衛        Bay SEI

 

平成24年11月より記す、の巻。

 

 

塗装編     その1

 

最終段階に近づいてきた。塗装工程はひょうたん美術のかなりの部分を占める。しかも難易度が高く、それなりに独創性も要求される。

 

 

 

塗装前史        混沌塗装序曲

 

古くからの慣習でひょうたんの塗装は漆、又はカシューと決まっている。筆者も例年カシューを用い数多くのひょうたん塗装を行ってきた。カシューの塗膜はその他の塗装に比べ、圧倒的に輝きの質が良い。深み、と表現しよう。(↑左右)カシューの前にもいろいろな塗装を試してはいる。筆者の思い付きと、ホームセンターにある塗料の価格で気軽に決めた方法だ。偶然の要素も多分にある。雑多な理由を経て、結果的に現時点でひょうたんに満足のいく塗装を施し得るのはカシューのみだ。

 

1 最初は水性ペイントの刷毛塗りから始めた。小学校の図工で教わる手法。高さ10 cm大の小さな缶がホームセンターにひっそりと置いてある。出来栄えは単に色がついているだけで「よくできました。」レベルだ。(価値がないので写真もなし)

 

2 次にウレタンスプレーを試した。これもホームセンターに我が物顔、一番元気に置いてあるスプレー缶だ。お手軽に使える。下塗りもなし。実はあっという間に完成する。この場合色をべたっとぬる、いわゆるペンキ塗り、エナメル塗りになる。ひょうたんに似合う色は若葉色と茶色と筆者は勝手に決めている。結果は半分成功で、半分失敗だ。(↓左右)

 

 

ひょうたん本来の薄い緑色にする場合、それなりに色調の表現法は良い。つまり緑は鮮やかだ。おもちゃ売り場のボーリングのピンの方がもっと鮮やかだがそれなりに成功だ。失敗ではない。逆に茶系統の色の場合、民芸品店においてあるレベルになると思う。茶色を重ね塗りした場合一応きれいだが、どうしても色の深みが出ない。よく光るが不自然でひょうたんの木質に合わないと思う。

 

3 二液性ウレタン塗料+刷毛塗りも試した。これは現在の工業製品に最もよく用いられている塗料の一つで、塗装の教科書の最初に出てくる。頑張って水性ステイン(水性の染料)を下地にし茶系統の色調を改善しようと試みた。茶色の色調は出たが、色の深みがどうしても中途半端だ。ひょうたんの木質感が中途半端に感じる。(くやしいので写真なし)多分に筆者の塗装技術が低いせいだ。少しづつ手法を変え試したがうまくゆかなかった。現段階では未解決だ。なんとか「鬼門」を脱したい。

 

 

4 最後は漆だ。(↑)もちろん筆者に漆の使用経験はない。これは偶然の頂きものだ。以前にもお見せしたが、大変立派な超大型天然ひょうたんで、黒漆を用いた芸術品だ。自立もする。スマホの大きさと比べてその巨大さにひれ伏すことだろう。漆黒の表現法はカラスも舌を巻く。人類史上ひょうたん芸術において最高峰の作品の一つと思われる。残念だがあまり温かみを感じない。情緒的な言い方で申し訳ないが、愛着がわかない。かわいそうに。道端に止まってるよく磨かれた黒塗りハイヤーのボンネットと同じだ。失礼なので超高級なお盆と言い換えよう。すぐ後でその理由を考察する。きっと漆は悪くなく、塗装対象物に負け惜しみをしているのかも。

 

 

漆の評価が低いのはけしからん、とお考えの諸兄も多いと思う。筆者は決して漆の品質そのものが悪いとは思わない。この写真は刀の鞘だ。塗装は漆。(↑左右)妥協のない最高級品質だ。職人技の結晶であり、値段も最高級だ。∴ 筆者にはまねできない。何世代もの職人が心血を注いで築き上げた伝統に筆者は刃向わない。この刀で成敗されそうだ。啓して遠ざけよう。

 

塗装の責務        塗装の背負う十字架

 

 

まねのできない刀の鞘に続き、今度はさらに難しく最高水準に塗装された工業製品を紹介しておこう。自動車の内装に用いられるウッドパネルは現代工業製品の中でも最高級の塗装品質が要求される。これは筆者の乗るあまり高級でない国産車の一例。高級車レクサスになると、装着されるウッドパネルは先日読んだ自動車雑誌に製造工程が紹介されており、なんとその木質の厚さは0.3 mmだ。たった!筆者がそのうち乗る予定の超高級車ロールスのウオールナット仕様を今お見せできないのは少し残念だ。(こうご期待。)

        完璧な品質の工業製品例だが

                    形×、密度○、輝き×、貴重性× =感激度××

        形△、密度×、輝き○、貴重性× =感激度×

DSC 0841

 

        形△、密度×、輝き○、貴重性○ =感激度×

    形◎、密度◎、輝き◎、貴重性◎ =感激度◎

50%(刀匠 吉原義人作 無鑑査 出典 平成名刀会HPより)

 

形◎、密度◎、輝き○、貴重性◎ =感激度◎

50%(F-15戦闘機 出典 航空自衛隊HP)

 

ここまで筆者が施した塗装例、筆者が施せなくとも横目でにらむ塗装例をいくつか挙げてきた。人類は様々なひょうたんを手にし、様々な塗装をそれに施してきた。人々に感激を与えた塗装の条件とはなんだろう。上に掲げたいくつかの写真をご覧になって何かを感じた方もいると思う。形の良いひょうたんに上質な塗装を施しただけでは十分でないと思う。この塗装編では未来にわたり永遠に人を感動させるひょうたんの塗装を目指したい。どうすればよいか。いまだ筆者に正解は浮かばない。筆者が馬のような年を重ねて見つけた「感激させる」塗装は大きく二種類に分かれる。芸術家、熟練職人のみが成しえる美術的高価値の塗装。美術館に行けば目の当たりにできる。もう一つ、最高品質の工業製品に付随した工学的高水準の塗装。レクサスの塗装をみてみよう。美術的高価値の塗装、工学的高水準の塗装いずれがめざすべきひょうたんの塗装か。伝統か、科学か。ヒントは意外と身近にあると思う。例を挙げて考えてみよう。(↑5枚)身の回りに氾濫する日本の工業製品は多くがすでに完璧な品質だ。むろん工学的塗装品質も最高だ。しかし、高品質でも百円ライター群は人を感激させない。(↑一番上)塗装の完璧さのみを考えると次の写真のあめ缶は工学的に優等生だ。(↑上から2番目)これ以上磨けないほどつるつるしている。しかし、形が凡庸で工業製品なので感激はしない。つまり美術的価値はない。かわいそうに。次の漆器は完璧な美術工芸品だ。(↑上から3番目)美術的価値は高い。しかし、少ししゃれたお菓子の缶でも似たようなものはありそうだ。単純に塗装か、形で完璧さを目指すだけでは高品質な美術品もありきたりの工業製品的感覚に陥る。何がいけないか。芸術論は難解なのでここで深入りはしない。最低限の事実のみ述べよう。心惹かれる上質さ、感激の要素には最低条件とその組み合わせがある。日本刀は高品質で知られる最高の美術品だ。鋼の地肌はどんな塗装より雄弁だ。(↑上から4番目)F-15戦闘機は芸術品ではないが、並みの高級芸術品をはるかにしのぐ凄味、気迫が迫る。(↑上から5番目)お値段も100億円以上する。まとめよう。勘のいい読者は気づいているかもしれない。解説するとこうだ。フェラーリ○、ワンボックスの軽自動車×。精密腕時計○ホームセンターの壁掛時計×。青空○、曇天×。ダイヤモンド○、ビー玉×。つまり形、密度、輝き、さらに貴重性(あるいは非日常)だ。心惹かれるひょうたん塗装のヒントが出たようだ。塗装に課された十字架は塗装している本体と一蓮托生なことだ。本体無くして塗装はありえない。塗装無くして本体もない。方程式の解は読者に期待する。筆者はこの道筋を追い求めてゆく。

 

寄り道が過ぎた。現実の塗装に話をもどそう。完成された美術工芸品は確かな熟練工の技、工業製品は専門的塗装工学技術に裏打ちされ初めて完成する。筆者が見よう見まねでそれらのレベルに到達することは不可能だ。ひょうたんが美術品として上質なレベルに達するには筆者が熟練塗装工、漆職人、あるいは塗師と呼ばれる日を待たねばならない。ひょうたんを工業製品として高水準で完成させるには高水準の成形装置、塗装技術、精密機械が必要だ。いずれも見込み薄だ。この塗装編では未熟な腕前でもよく工夫をし、利用できる範囲の最新塗装技術、塗料を用い、その組み合わせで熟練の技、高水準の工業製品に迫る塗装をひょうたんに施そうと思う。さらには形、密度、輝き、さらに貴重性を大切に持ち続けられる空気を味方につけたい。ひょうたん本体にも手抜きはできない。

 

 

塗装戦線に出撃        カシューへの道

 

やっとカシューが登場する。カシューの場合、エナメル塗り(ペンキ塗りのようなもの)と、木目が透けて見える半透明な塗り方の選択ができる。この半透明な塗り方こそ色の深み、質感、輝きの点で前記の(筆者が)失敗した様々な塗装法を圧倒する。まるで厚い琥珀がひょうたんを硬くきれいに包み込み、そのまま宝石へと昇華したかのごとくだ。ひょうたん芸術ここに極まれり。この章の塗装はカシューの半透明塗りがトップバッターだ。しかし、実はこの偉大なるカシュー塗装にも宿命ともいえる欠点が存在する。今年はそれを是非にも乗り越えたいと思う。数十万年の人類史上を振り返りひょうたん芸術初の爆発的ブレークスルーとなるか。

 

今までは・・・塗装に詳しくない方、塗装に詳しい専門家の方は無視しよう!塗装の知識が中くらいで、批判精神のない方のみこの項目を参照可能。

成形加工篇の後、下塗りに2液ウレタン塗料「8号ストップシーラー」+顔料着色剤「リベラカラー・イエローナチュラル」を少量混ぜ使用。中塗りとしてもう一度同じ工程をする。仕上げ(上塗り)として「カシューネオクリアー」、「カシュークリアー」を計10~12回塗る。カシューシンナー刷毛塗用を20%使用。各工程間は400番でやすりがけし、1~2日間あける。この手法は大橋塗料株式会社さん、カシュー株式会社さんのHPに記載されているカシュー項目の工程表を参考にさせていただいた。仕上がりにはまずまず満足している。

 

偉大なるカシュー塗装、その問題点①    刷毛塗りなので刷毛代がお高い。(↓)人類史上の話が出た割にはぷあーだ。しかし、偉大なる出発点とはえてして小さな動機から始まるものだ。

%    

 

半透明なカシュー塗りは10回前後重ね塗りする。一回一回が真剣勝負だ。ものの本には使用後の刷毛をカシュー用シンナーでよく洗浄し再利用すると書いてある。しかし、洗浄しても刷毛はある程度きれいになるものの真剣勝負の筆心地にならない。半透明の塗り方では一か所でも塗り方が失敗するとアウトだ。失敗こそよく目立つ。毛が一本抜けて表面に張り付くだけでもいけない。1か所の液ダレもダメ。そうなってしまった場合数日待ってよく乾かした後、240番のやすりで辺り一面大胆に削り直しをしないといけない。数回分のカシュー塗装が削れてしまう。一気に3学年下がる落第コースになる。そんなリスクを冒したくなければ多少のお値段に目をつぶり、新品の筆を選んでしまう。掛けることの10倍だ。さらにカシューの半透明な色調を少し変えたり、シンナーの濃さを変えたりしたくなる。つまり同じ筆は使えない。結局廃棄される筆は山の如しだ。(↓)DSC 786-2 4%

 

 

余談だがカシューが付着したティッシュペーパー、布等は後々自然発火する危険があるらしい。使用後の筆はカシューが周囲につかないよう大量のティッシュペーパーにくるんで捨てる。筆者はこれらを使わなくなった古い鍋にいったんためることにしている。水を浸しておくとなお安全だ。残念ながらこれでカシューナッツのスープはできない。できそうだが。上の写真は撮影用にコンロに載せてあるが、もちろん加熱してはいけない。

 

 

偉大なるカシュー塗装、その問題点②    次は刷毛とカシューの汚染だ。数個または十数個のひょうたんをベルトコンベアー式に同じ筆で刷毛塗りすることも可能だ。一応は。効率的だ。気を付けなければいけないのはいい気でカシューを次々刷毛塗りしていると、刷毛も、カシュー液も汚れてくることだ。気づかずに塗ってると最後は細かいだまのような汚染物質(カシューの固まったゴミか?)が最後の方のひょうたんにこびりついている。これも完全アウトだ。(↑)上の写真左は液ダレ、右は最後に刷毛塗りして出現したカシューの汚染物質。液ダレのカシューもよく見ると濁ってる。もーだめ。

 

 

偉大なるカシュー塗装、その問題点③    カシューをエアブラシ、スプレーガンで塗装したくてもそれらの詳細な塗装法が見当たらない。実践レベルの解説書がない。文献検索が不適切だと思うが知識不足は未だに解決できない。書店ではそもそもカシュー塗装関連の本がない。知識量は伝聞、伝承、言い伝えよりましなレベルだ。代わりにホビーショップには豊富にプラモデルの塗装関連本が並んでいる。(↑)主力は二液性ウレタン塗料等をエアブラシ、スプレーガンを使用し、塗装する手法だ。カシューは過去の塗装法なのか。最初にお話ししたようにウレタンスプレー缶塗装、二液性ウレタン塗料+刷毛塗りは筆者にとって「鬼門」だ。横目で見つつ必要な知識だけそっと学ぼう。チャンスがあればウレタン塗装を一気に正面突破したい。

 

偉大なるカシュー塗装、その問題点④    工程が複雑すぎる。芸術とはそういうものだ、ともいえるが、何とか工程を短縮できないものか。梅雨、暑さ、忙しさはカシューの天敵で、開店休業状態になる。

 

今年こそはこれらの問題点を何とか解決し、ひょうたん芸術の革命的大爆発を目指したい。カシューを発明、開発したカシュー株式会社のHPに「カシュー塗装法」の記載がある。スプレーガン塗装法以外の情報量は随一だ。長いながい解説文の最後にこう記載されている。「以上はカシュー塗装の一端を示したにすぎません。古来よりの漆工塗装をみましても何百種類もの塗装方法があります。これらの殆どがカシューによって表現できるばかりでなく、塗装する方のたゆまない研究心により、さらに多くのカシューによる塗装法が考え出されてゆくことと存じます。」そこで塗装法を次のように分け、試行錯誤する。錯誤ばかりにならなければよいが。

 

 

試行錯誤の塗装比較表    目標はかうだ

 

 

新カシュー法への挑戦。        前進微速

 

平成25年5月26日        月日は流れ、穏やかに下地塗りへ進む

 今年の第一目標は前記した通り刷毛塗りの逓減、つまり刷毛を極力使わず、スプレーガンを多用することに尽きる。もう一つは工程の簡略化だ。木工塗装のどんな教科書、信頼できる(と思われる)どんなインターネットサイトでも、工程は大まかに4つだ。素地着色、目止め(合わせて下塗り)、中塗り、仕上げ(上塗り)。一般の木工製品への塗装工程には目止めが必ず必要だ。木の素材表面にはぶつぶつした小さな穴が無数に開いている。このまま塗料を塗ろうとしても塗料の吸い込みが激しく、まともには塗れない。そこでその穴をふさぎ、塗装可能な状態にするのが目止めだ。昨年までは馬鹿正直にこの目止めを原則全ひょうたんに行っていた。が、結局例外を除き不要だと思う。ひょうたんの表面に木材のような小さな穴はなく、良く研磨されてつるつるした表面なら目止めは省略できる。目止めを省略できない唯一の例外は収穫時表面が比較的柔らかかったひょうたんだ。よく乾燥したひょうたんが柔らかくたわむことはありえないが、収穫時に柔らかく、小さく、発育不全型のひょうたんは乾燥すると脆く、薄く、表面はざらつく。そのままでは塗料が吸い込まれ易く、きれいな塗装はできない。要注意。成形加工編で登場したバラバラ君はまさにこれだ。本論に戻ろう。中塗り、つまり仕上げ前の平滑な平面を作る工程も省略しよう。サフェーサーという塗料を使用する工程だ。これも去年まで行ってきたが、仕上がり具合を見るとその必要性をあまり感じない。もちろん徹底的なやすりがけが絶対条件だ。表面がつるつるのひょうたんは素地着色(下塗り)、上塗り、の2工程で勝負だ。結果は吉と出るか、凶と出るか。この日は素地着色(下塗り)も少し新たに工夫してスタートした。なんと素地着色に水性スプレー缶を使用、一部グラデーション塗装も試みる。

 

 

        

 

水性スプレー缶は近隣のホームセンターで容易に入手。(↑左)各色そろってるが、中間色はない。仕上げはカシューの半透明塗なので、組み合わせできる色調は限られる。カシューはそれ自体薄い飴色の色調がある。どんなにカシューの飴色が薄くなってもシンナーで薄くしてもウレタン塗料と違い全く透明にはならない。赤や緑、青色の系統を下地の色にすると、カシューの薄い飴色と混じり、結果大変色調が悪い。したがって選択肢は白、クリーム色、黄色、茶色だ。結局購入したのはクリーム色、黄色、茶色の計3本だ。(↑右)

 

 

軽い気持ちで噴霧してみる。(↑左、中央)噴霧した後わかったことだが、茶色は茶色ではなく、実はゴールドだった。(↑右)どうもピカピカしていると思った。缶の頭は茶色だが、缶の隅に小さく「ゴールド」と書いてあった。ひょうたんが金に進化して、大儲けだ。気分がいい。さらにグラデーションを施してみた。金色とクリーム、黄色とクリームの、各組合せにした。難しそうに見えて意外と簡単にできた。見栄えもよい。しかし、半透明なカシューで仕上げると実際どのようになるのか未知数だ。不安。

 

この日だけでひょうたん10個ほどを一気に塗装する。(↑)水性スプレー塗装の乾燥時間は早く、缶に明記してあるのは夏30分、冬50分だ。しかしこの時間では完全硬化せず、表面は柔らかい。やすりがけは丸一日おくほうが無難だ。

 

 

平成25年5月27日        下塗り+やすりがけもトライアル

当初やすりがけは教科書通り固い紙やすり400番を苦労して使っていた。が、思ったように表面が平滑にならない。そこで成形加工最終段階で使用したスポンジ製3M ULTRAFINE(800~1000番相当)を活用してみる。(↑)予想以上に効果があり、しかも水性の下地がはげることもない。何でもやってみることだ。教科書でいう木工製品のやすり研磨は板状の平面を想定している。しかし、ひょうたんは基本的に球面だ。つまり固い紙やすりの場合ひょうたんとの接触面は常に一点に近く、集中する圧力が平面に比べ高くなりがちだ。3M ULTRAFINE(800~1000番相当)はスポンジで柔らかくひょうたん球面への接触面が広い。また高くなりがちな接触圧力に対し800~1000番相当と教科書の400番より目が細かく、やすりの効果も穏やかだ。で、二重のおだやか効用で削りとしての結果は良好だ。一つ注意点。水性塗料は柔らかく、はがれやすい。つまり色移りしやすい。1色の場合は問題ないが、2色のグラデーションの場合、色が混じってしまいがちだ。色ごとに3Mスポンジのやすりを変えるなど工夫が必要。

 

 

平成25年5月28日

昨日の下地処理の復習。一回では水性ペイントがうまく塗れていないものもあり、もう一度入念に塗装する。ただし、教科書的にはカシュー等硬い塗料の仕上げをする場合下地となる水性ペイントの厚塗り禁止と書いてある。水性ペイントは柔かい。つまり硬い仕上げのカシュー塗膜の土台が柔らかくなりよろしくないという理由。要注意。早く仕上げ工程(上塗り)=カシューに行きたい。

 

平成25年5月30日        量産先行試作1回目カシュー刷毛塗り

仕上げ工程のカシューを試す。全部失敗するといやなのでまずは確実な刷毛塗りで、少量から塗り始める。下地がクリーム、金色、黄色、それらのグラデーションがどうカシューに映るかが大変心配。疑心暗鬼で塗り始め、あっという間に数個の塗装が終了。カシューのネオクリアーは半透明な塗り方ができ、そのうち最も薄い色調。ごくわずかに飴色になる。最もカシューの特徴が生きる色調だ。シンナーの薄め具合はカシュー7にシンナー3とした。教科書ではシンナーを薄くするほど(カシュー原液に近いほど)塗装後の肉もち感、光沢、色調が良いとされる。欠点は粘度が上がり、塗りづらく、ムラ、その他塗装トラブルが出やすい。去年までは教科書的に許されるギリギリの比率、カシュー8にシンナー2、またはさらにカシュー9にシンナー1まで臨んだ。しかし、結局どこかで塗装トラブルに遭遇し、やり直し、大失敗の連続だった。今年は刷毛塗りが最後と思い、下塗りの効果を確かめるお試し版ということもあり、冒険せず前記の比率にした。家じゅうシンナーくさい。

 

 

平成25年5月31日

どの組み合わせも想像以上に下塗りとの相性が良い。(↑)後々の比較をするため、名前を付けておこう。写真左は下塗りが黄色単色=(単黄と命名)。写真中央は上部クリーム、下部オレンジのグラデーション。(先に出た液ダレのもの。液ダレ)写真右は上部クリーム、下部ゴールドのグラデーション=(ごついのでごつ)。安心した。今のところ方向性に間違いはなさそうだ。先行試作を進める。

 

平成25年6月2日        カシュー刷毛塗2回目

先行試作2回目と、よさそうなので新たにカシュー仕上げ刷毛塗1回目のグループ数個も始めた。カシューとシンナー比率は同じく7 : 3でゆく。ノントラブル。

 

平成25年6月5日        カシュー刷毛塗3回目

カシュー仕上げ1回目、2回目終了組ともあらかじめ800~1000番相当3M ULTRAFINEで軽く表面研磨する。前回の塗装からまる3日たっており乾き具合もよい。したがって研磨も良好。カシュー刷毛塗り先行試作3回目をさっと行う。3回目終了ともなればカシューの穏やかな輝きもしっかりしてくる。下塗りの色は少しずつ薄れ、逆にカシューの薄い飴色がかぶさり色調もよい。カシューとシンナー比率は7 : 3で同じ。

 

 

乾燥中の風景。(↑)一番左はサボっていて一回少なく2回目終了後。次に3回目終了後(単黄)、2回目終了後。それより右2個は下塗りのみのもの。やはり3回目の光沢が一番良いようだ。ひょうたんを乾燥させるには写真のように口から箸を入れ、メタルラックの端に固定している。固定には便利だがほこりには要注意だ。

 

平成25年7月14日        カシュー刷毛塗り3回+スプレーガン1回目(最高回数、単黄の場合)

短い梅雨が例年にも増して早く開けた。暑い。塗装日和だ。気分も熱い。今日は覚悟を決めて、スプレーガンによるカシュー塗装を決行する。今まで遊んでたのか。前回から随分と日にちが飛んでるぞ。お叱りはごもっとも。言い訳無用だが、筆者も一応勤労所得者であれやこれや今日になってしまった。また、昨年完成したカシュー塗りひょうたん群の一部が虫食いの被害にあい、補修に手間取っていた。(いずれ紹介。)きわめつけに話したくない決定的失敗塗装を二液混合ウレタン塗料のクリアーでやらかしたりと、雑多な時間に埋没状態。だがそれも今日までだ。カシューのスプレーガン塗装については筆者の手元に未だ参考資料がほとんどない。進むしかない。虎穴に入らずんば虎児を得ず、だ。

DSC 0707(2) 4%

 

とりあえずカシュー株式会社製純正の吹付用シンナーを入手した。(↑左)以前から存在したかもしれないが、筆者はこれを今年初めて知った。カシューの吹き付けに関し以前から関心はあり、複数のホビーショップで店員相手に幾度か質問はしている。どのようなエアブラシ、スプレーガンを使えばよいのでしょうか。答えは決まって粘度の高いものなので吹付はできないと思います、当店ではわかりませんと。しかし、前述した「大橋塗料株式会社」のサイト内カシューの項目をよく見ると、塗装工程に今年は「刷毛塗り」に加え、「スプレー塗り」が追加されている。うまくやればスプレーガンでカシューを吹き付けてよいと理解した。であれば、GOだ。前記した表の「新カシュー法」の特徴の一つだ。スプレーガンは明治 FM-ⅡG、口径0.5 mmを使用。(↑右)前置きが長引いた。昨日のうちにカシュー仕上げのひょうたん群を800~1000番相当3M ULTRAFINEで軽く研磨しておいた。予習は十分。カシューは前回同様「ネオクリアー」。「吹付用シンナー」との比率は1 : 1と薄くした。まずは無難な線を狙う。スプレーガンのカップに「吹付用シンナー」50 ml、「ネオクリアー」も50 ml混ぜ、かきまぜ、祈ってから塗装スタート。エアーとともにカシューもきれいに吹き出てくる。不安も吹き飛ぶ。嬉しさに浸ることなく、慎重に塗装を進める。厚塗りすると、液ダレし、元の木阿弥だ。うす塗り加減にとどめ、次々ひょうたんに噴霧する。早い。大型ひょうたんでも1個約1分ほどで吹き上がる。助手の清兵衛と協力し、出来上がったひょうたんを次々干してゆく。順調だ。5~6個塗装し終えたところでカシューが切れる。あらかじめ用意しておいた「吹付用シンナー」25 mlをスプレーガンのカップに入れ、数回空吹きしてから新たにカシューを缶から吸い出す。スプレーガンは塗料がガンの中に入っているときに作業を中断し、うっかり時間がたつと塗料が内部で固まってしまう。作業中断時、ないし終了時にはシンナーを空吹きしておくとよい。「ネオクリアー」25 mlを新たにスプレーガンのカップに追加し、作業再開。残り3個の塗装も難なく終えた。スプレーガンをシンナーで念入りに洗浄する。なおスプレーガンの洗浄法についての詳細はこれだけではない。ここでは触れないがその他の多くの注意が必要だ。

 

平成25年7月15日        中間報告

気になっていた仕上がりをチェックする。大変良い仕上がりで安心する。カシューの肉厚感は刷毛塗りと一緒だが、平滑感はさらに良い。溶けたガラスの膜が一面を覆っているかのごとくだ。スプレーガンによるカシュー塗装「新カシュー法」はおおむね○だ。

 

中間報告1回目

◎     下塗り水性スプレー黄色単色、(単黄)は◎、文句なし。

△     上部クリーム、下部オレンジのグラデーション。(液ダレ)は△。クリームとオレンジのグラデーションが濁ってきて色調が今一つ。

△     上部クリーム、下部ゴールドのグラデーション。(ごつ)は○~△。クリームとゴールドの色調が全く同じになってきた。上下の色の区別がほとんどできない。

スプレーガンとしての塗装法は◎。もう刷毛塗りに戻ることはあるまい。

 

平成25年7月21日        カシュー刷毛塗り3回+スプレーガン2回目(最高回数)

明るい日が続く。スプレーガンとして2回目を行う。800~1000番相当3M ULTRAFINEで軽く研磨した上、スプレーガン1回目と同じメニューで塗装を行う。「吹付用シンナー」「ネオクリアー」の比率も1対1だ。正味30分前後で終了。少しスプレーガンに慣れたせいか、カシューの付いた後片付けのゴミ類が少ない。

 

 

スプレーガンのカシュー塗装でどきりとしたことを一つ。1回目同様シンナー、カシューを同量50 mlずつスプレーガンのカップに入れ、少しかき混ぜ、いざ塗装スタート。あれ、うんともすんとも言わないぞ。スイッチ入れ忘れか。いや、入ってるぞ。おかしいなー。あれこれ考えているうちに気が付いた。スプレーガンのカップに入っているシンナー、カシューはよくよく混ぜないと重いカシューがシンナーの下に沈み、カップ下部→スプレーガンの中でドロドロと詰まってしまうのだ。スプレーガンの内部で固まると一大事だ。少しかき混ぜるのはいけない。よーくきちんとかき混ぜないと、カップの底で混じり切らないカシューがスプレーガンの動きを止めてしまう。手元にあった割り箸で再度カップの中をよくかき混ぜ、再スタート。今度は気持ちよくカシューの霧が噴出した。

 

 

平成25年7月22日        追試験大失敗

天気が良いうちにカシュー塗装の回数を稼いでおこうと思った。朝の時間がないとき急に思い立つ。昨日のスプレーガン塗装で一部分吹付カシュー塗料が足りないひょうたんを一つ発見。つやつやしていないところがある。補修の意味もかねて追加塗装したい。厚塗りの失敗が怖く、ついつい塗装が薄くなりがちだ。さらに「新カシュー法」で昨日までカシュー塗装を合計最高5回まで塗ったが、一部4回、ないし3回塗りのひょうたんもある。3回、4回塗りのものだけ今日追加塗装し、なるべく塗装回数を合わせようと思う。最高の5回塗装に達している単黄、液ダレ、ごつ、を除き合計5個。朝の忙しい時間帯にちょうど良い個数だ。助手・清兵衛の手助けも不要。時計を気にしつつ機材一式の準備をする。800~1000番相当3M ULTRAFINEで軽く研磨した上、昨日と同じメニューで塗装を行う。「吹付用シンナー」「ネオクリアー」の比率も1対1だ。

 

    

 

気分も軽く、スプレーガンのトリガーを引く。一撃必殺のカシュー弾がひょうたんをきれいに包み込む、と思う間もなく、ぺぺっと音がしてスプレーガンが咳き込む。ひょうたん表面に茶色いカシューのツバキが何か所か飛び散っているぞ。大変だ、と思い近くのタオルでカシューのツバキをふき取る。あわててふき取るも、憎しみのカシュー粒がとれるのと、タオルの繊維が大量にこびりつくのが一緒に見えた。茫然自失、気を取り直そうと、再びスプレーガンの引き金を引く。今日はカシューの機嫌が悪い気候かな、と思いつつ再度ぺぺぺーと音。軽蔑のツバキはさらにひょうたんの上に広がる。おかしい、何かがおかしいと思いつつ、動転してさらにタオルでカシュー粒をふき取る。粘ついてタオルの毛がさらに表面にこびりつく。スプレーの勢いが弱い。コンプレッサーのスイッチが、入っていない!ついさっき入れたと思ってうっかり「切」にしていたのだ。タンク内に貯めた空気が次第に勢いを失い、霧にならないカシューの生粒が出てきたのだ。おもむろにスイッチを入れ、トリガーを弾き、失望の霧が改めて毛の生えたひょうたんを包む。ここまで短時間に三重の失敗をした。1、コンプレッサースイッチの入れ忘れ。2、生のカシュー粒をタオルで拭き、繊維を大量に付着させた。3、塗装を中止せずさらに張り付いた繊維の上からカシューを噴霧した。これぞ失敗の糊塗。恥の上塗り。小さな失敗が大失敗につながる見本だ。古来いわく、失敗は大失敗のもと。したがってこの追試験は赤点。即落第決定へ。落第ひょうたんは特別補修クラス入りとなった。落第生は下塗り水性スプレー黄色単色で順調に進んでいたのに。名前を「ぺぺ」にしよう。ぺぺ以外のひょうたんは無事通過。喜べない。写真(↑)はこの後乾燥した「ペペ」。光線の具合でカシュー生唾は良く見えない。よくそういえば筆者が昔通った学校はやたら厳しく、落第は珍しくなかった。カシューのようなねばる汗がにじんでくる。

 

 

平成25年7月23日        補修クラス愛憎劇

午後から雨との天気予報。昨日の落第君「ぺぺ」他計4個を手掛ける。「ぺぺ」は360~600番相当3M SUPERFINEでごく軽く、800~1000番相当3M ULTRAFINEでごしごし磨く。研磨後の表面は意外ときれいになる。昨日のカシュー粒もあまり目立たない。

 

 

夏は短い。今日は昨日の雪辱戦だ。昨日生唾が飛ばず、カシュースプレー塗装が成功した一つを除き、落第君「ぺぺ」を含む計4個が本日の塗装対象。塗装条件も同じ。今日はコンプレッサースイッチをしっかり入れた。念のため助手「清兵衛」も呼ぶ。祈るような気持ちでトリガーを引く。シューッときれいにカシューとシンナー混合の霧がひょうたんを包む。塗装が薄い場所が残るものが2個あり、それからさっそくはじめる。厚塗りしないよう、塗装漏れがないよう、慎重に噴霧する。そろそろいいか、と思った時、「ペ」と聞こえた気がした。まさかと思い、悪い視力の目を振り絞ると、なんと昨日と同じ憎しみのカシューつばきが数か所ひょうたんに飛んでいるぞ。スプレーガンをひょうたんから離し、続けて噴霧してもその後はツバキが出てこない。気を取り直し残りの塗装を仕上げた。いったいどうして唾が噴き出たのか。よく考えず、悪夢は終わりだと勝手に信じ、2個目の噴霧にかかる。意外と調子いい、と思っていると、再び「ペペ」。数個のカシューツバキが飛んでいる。暗くなる目の前を笑ってごまかしながらなんとか塗装を続行。いきおいで3、4個目も続いて突入。4個目は昨日の落第君「ぺぺ」だが、なんとか無事終える。1個目、2個目の新落第組には憎しみのカシュー唾が残る。北斗七星か、夏だからさそり座模様の芸術だ、と誤魔化せないか。昨日に引き続き、どうしてカシュー粒が噴出したのか。コンプレッサーの作動は正常だった。そのほかに?思い当たる節がある。カシューネオクリアーを合計50 ml吸い出すとき、数年前から使いかけの缶合計3缶から継ぎ足し、合わせた。暗い缶の下のほうで薄いカシュー膜のように見えたものがあったが、かまわず吸い出し、スプレーガンのカップに注いだ。古いカシューの成分が固まり、その小さな塊がスプレーから噴き出した可能性があると思う。芸術に主婦の知恵のような機転は似合わないのだろう。芸術とエコは水と油だ。補修クラスの仲間が1人減り、逆に2人に増えた。そのうち全員補修クラス行きか。猛暑は続く。保護ゴーグル内にカシューより粘る汗が練りつく。

 

 

3Hウレタンクリアーを使ってみよう        カシュー戦線からの離脱なるか。お先に。

 

平成25年7月27日        伏兵登場

セミが賑やかすぎる。新カシュー法の仲間の多くは補修クラス行ったり来たりで、しばらく頭を冷やしお休みにしよう。新カシュー法教室は特別夏季休暇です。試行錯誤の塗装比較表の「新カシュー法」の次にある、第三の塗装法がある。この時点までその手法が書かれていないのは、それが現時点であまりにも無残な顛末を迎えているからだ。カシューがごたごたしているので、少し寄り道をしてみよう。

4%    820 4%     976 4%

 

 

それはウレタン塗料だ。そろそろ登場してもらわなければならない。亡霊のように出ては消えてゆく、避けては通れない「鬼門」ゆえ、内緒で少しづつ予習はしていた。試みた手法は次の如し。下塗りとしては水性スプレー缶、ゴールドとクリームのグラデーションのみとする。計3個。よく乾いた後、800~1000番相当3M ULTRAFINEで研磨、中塗りは省略。これがコツだ。上塗りとして二液性ウレタンクリアー「3Hウレタンクリアー」を数回スプレーガンで噴霧し、終了。水性塗料のグラデーション塗装をアクセントに、ウレタンクリアーに包まれた、宝石のような仕上がり、のはずだった。3Hウレタンクリアーを2回噴霧して1週間ほどしたある梅雨の日、塗装が裂けていた。「クラッシュ1」(↑左)。最初はお尻のくぼみが浮き上がっているのを発見。その後さらに数日して首の塗装が半周ないし4分の1周ほど裂けて、めくれあがってきた。塗装が裂けるとは思いもよらなかった。青天のヘキレキだ。同じ手法で塗装した、計3個のひょうたんすべてがまったく同じ症状に陥った。写真左は裂けた様子。よく見るとわかる。内部で首の塗装全体が浮き上がっているため、結局首全周をはがす羽目に。中央は茫然自失のさなか、浮き上がった塗装をぺりぺりはがし、240番で磨いた後(↑中央)。右は虚脱状態から抜けたすきを狙い水性ペイントを新たにグラデーション塗装したのちの姿(↑右)。ちなみにグラデーションの上部クリーム色があまり映えないため、白に変更してある。4回水性塗料塗装を繰り返し、補修跡がやっと目立たなくなってきたところ。左から右へ進むのに初夏20日間の日時を要した。磨くのに手を動かすのは正味10分前後だが、脳みそがこのクラッシュ状態を受け入れるのにはまさに20日間かかった。脳は手よりもしつこい生き物だ。

973

 

「クラッシュ2」(↑左、中央、右)。写真左と中央は同じく首とお尻の裂け目。剥離した部分を周囲まで含め240番で磨いた後の状態。右は240番で「3Hウレタンクリアー」を全面剥離しようと試みた後の姿(↑右)。因幡の白ウサギ状態で痛々しい。その1とほぼ同時進行している。もう一つ、ほぼ同様のクラッシュ3もあるが、写真は省略。以上が初夏にとん挫したおおよその経過。午後の蝉しぐれを聞いているうち、何とかしようというエネルギーが脳の奥深くから満ち溢れてきた。水性ペイントで白・オレンジツートンカラーにして、その時点で様子見とし、中断しているひょうたんがさらに別に2個ある。それらを含む計4個のひょうたんが今回の3Hクリアー塗装コースで復活させたい対象だ。例外はクラッシュ2で、このクラッシュ2ひょうたんはさらに別の上塗り「キャンディーカラー法」コース(後記)用に取っておく。ので、「3Hウレタンクリアー法」で復活するのは「クラッシュ1」、「クラッシュ3」、白・オレンジツートンカラーの2個、計4個だ。中塗り!これを軽視したのが間違いの原因だ。中塗りをしないで下塗りからいきなり3Hウレタンクリアーの上塗りに突き進んだことは筆者のごとく中学の勉強をろくに理解せず高校の勉強に励むようなものだ。2液ウレタン塗料「8号ストップシーラー」を使う。厳密に言えばこれは本来下塗りで、素地を固め、上塗りの塗り加減をよくする役目がある。同時に染料を混ぜ、着色も行える。水性塗料を下塗りにしたため、2液ウレタン塗料「8号ストップシーラー」は中塗りの扱いだ。今回上塗り「3Hウレタンクリアー」で復活予定対象ひょうたんはここで述べている4個であり、中塗りはすべて「8号ストップシーラー」使用となる。これらの組み合わせは以前から筆者がカシューの刷毛塗りを行ってきた中塗り手法と全く同じだ。カシュー塗装の場合中塗り=2液ウレタン塗料「8号ストップシーラー」はゴールドスタンダードと言ってよいと思う。あとで知ったが「カシュー」も「8号ストップシーラー」もカシュー株式会社の製品だった。中塗りで唯一違うのは今回刷毛塗りをせず、スプレーガン塗装になる点だ。さっそく開始。「8号ストップシーラーA液」25 ml、「8号ストップシーラーB液」25 ml、「ストロンTXL2530シンナー」12.5 ml、上記4個へ。別に上塗りをカシューで予定している全く手つかずの未着色ひょうたん2個があり、この中塗りに便乗する。手つかずの水性スプレー未着色ひょうたんのうち、一つは成形加工編で熟成した、「ねじれ君」。もう一つは全く成形加工をしなくてももともとスタイルの良いもの。「スタイル君」にしよう。「ねじれ君」、「スタイル君」には8号ストップシーラーに黄色い染料「リベラカラー・イエローナチュラル」を同時に5 ml混ぜた。スプレーガン塗装なので短時間、あっけなく終了する。ただし、意外な事態が判明する。

 

 

平成25年7月27日の夜        大敵ゆずはだ

噴霧した直後より気にはしていた。ゆず肌とは奥ゆかしい響きがする。

 

 

白・オレンジツートンカラー2個に重大トラブル、残り2個「ねじれ君」、「スタイル君」にも中程度トラブル発生。ゆず肌だ。実際に目の当たりにして愕然とした。(↑)前項のカシュー噴霧ひょうたん群でも若干のゆず肌を認めていたが、今回はまるで柚子そのものだ。オレンジピールともいう。白・オレンジツートンカラーの2個は下半分がオレンジ色の下地なのでまったく笑えない。上の写真のものを「ゆず肌1号」、もう一つを「ゆず肌2号」としよう。成功作には名前が不要だが、失敗作はレッテルが張られる。この作品が柚子をモデルにしたものであれば、職人的神業と称賛される。残念ながらこれはひょうたんだ。さわるとご覧のとおりクレーター状のでこぼこがしつこく広がるのがわかる。塗装の大敵だ。インターネットサイトの引用で恐縮だが、引用しよう。「ミカン肌状の塗装面のことで、オレンジピールとも呼ばれています。塗装された塗料が平滑になりきれずに乾燥固化した状態で、塗装条件や塗装膜厚などに原因があります。①主な原因 ・塗料粘度が高い。・蒸発の早いシンナーを使用した。・エアスプレーガンと被塗物との距離が遠い。・塗装膜厚が薄い(平滑になる状態に達しない)。・可使時間(二液型塗料)のすぎた塗料を使用した。 ②予防策・・・・(以下省略)(玄人本舗プロホンポHPより引用)」。「ゆず肌1号」、「ゆず肌2号」共に気を取り直して削り込む。800~1000番相当3M ULTRAFINEで軽く削るも全く歯が立たない。

 

 

ついには360~600番相当3M SUPERFINEでごしごし削り取る。柚子がやっと梨くらいになってきた「ゆず肌1号」。(↑)必死になって削ってはいけないが、ついつい力が入る。磨きすぎてオレンジの下地がはがれ、ひょうたんの地肌が一部見え隠れしてきた。残念ながらオレンジの水性塗料からやり直しとなる。仕方あるまい。

 

平成25年7月28日        ゆず肌防止条例

一夜明けた。気を取り直し、8号ストップシーラーのスプレーでゆず肌となったその他3個のひょうたん、「ゆず肌2号」、「ねじれ君」、「スタイル君」も磨く。不思議と白・ゴールドツートンのひょうたん2個「クラッシュ1」、「クラッシュ3」にはゆず肌がほとんど出ていない。計4個の強固なゆず肌。800~1000番相当3M ULTRAFINEで一生懸命研磨するもどうしてもきれいにはならない。仕方なく360~600番相当3M SUPERFINEでそっと研磨する。やっと、4個そろってほぼきれいな表面が戻ってきた。今日のセミも元気がいいぞ。日差しがまぶしい。今日はゆず肌防止が第一目標だ。2液ウレタン塗料「8号ストップシーラー」のスプレーガン中塗り塗装の再挑戦。もちろん対象は昨日のゆず肌被害者「ゆず肌1号」、「ゆず肌2号」、「ねじれ君」、「スタイル君」計4個。塗装の準備を整えスタート。スプレーガンとの距離が遠いといけない。少し接近し、慎重に噴霧してみる。今度は大丈夫、と思っているとまたまた例のゆずがぼつぼつ出現。近すぎかと思い距離を少し離してもまた出現。次のひょうたんなら平気かもと願いを込めるも全く同じ結果。4個すべてのひょうたんに大なり小なりゆず肌がパックリ口をあけ、にっこりする。落ち込む。午後、気を取り直し、360~600番相当3M SUPERFINEで失敗組4個ともがりがりに研磨する。8号ストップシーラーはカシューと違い塗装後次の工程へ最短4時間後には進める。距離を近くしてもだめならシンナーが濃すぎるのだ。「ストロンTXL2530シンナー」を今まで8号ストップシーラーの半分、50%混ぜていたが、一気に同量、100%混ぜることにした。乾きにくくなりそうだが仕方がない。ドタバタ準備し、再度チャレンジ。今度こそ、と思っていると、一層激しくゆずがぼつぼつ出現。セミたちの大合唱が高笑いに変わる。無情の夕日に背を向け本日終了。

 

 

平成25年7月31日

早朝。まだセミは鳴いていない。昨夜秘策を考えついた。ので昨夜のうちに失敗組の4個ともゆず肌をきれいに削り取っておく。何のことはない、筆塗りに戻ることだ。今日は8号ストップシーラーを筆で塗ろう。比率はほぼ標準設定で、「ストロンTXL2530シンナー」は8号ストップシーラーの半分、50%とした。対象ひょうたんの内訳は前回ゆず肌で右往左往している白・オレンジツートンカラーの「ゆず肌1号」「ゆず肌2号」計2個、ゆず肌が不思議と出ていない白・金メタリック「クラッシュ1」「クラッシュ3」計2個。さらに上塗りにカシューを予定しているリベラカラー着色組「ねじれ君」「スタイル君」計2個の総計6個だ。懐かしい筆でゆっくり塗る。下塗りがツートンカラーのひょうたん4個「ゆず肌1号」「ゆず肌2号」「クラッシュ1」「クラッシュ3」は当然染料なし、下塗りがモノトーンの2個、リベラカラー着色組「ねじれ君」「スタイル君」は黄色い染料「リベラカラー・イエローナチュラル」を混ぜる。(20%=A液10 ml、B液10 ml、ストロンTXL2530シンナー 5 ml、リベラカラー・イエローナチュラル2.5 ml)まずは染料なしの透明な中塗りより開始。8号ストップシーラー各5 ml、ストロンTXL2530シンナーは2.5 ml混ぜる。前回苦労した例のオレンジのツートンひょうたんからそっと筆を添える。懐かしい感触。やはり塗りごごちは良い。というか、あっけないほど簡単だ。            

 

 

気分よく筆を進めているうちに筆が妙にオレンジ色になってきたのに気が付いた。(↑)白との境目がオレンジ色で塗りつぶされてゆく「ゆず肌1号」。8号ストップシーラーと下塗りの水性ペイントが合わさって溶けてしまった。失敗だ。失敗ついでに筆を変え、もう一つの白・オレンジツートンひょうたん「ゆず肌2号」を塗る。こちらはぎりぎりセーフだ。よく見ると若干色落ちしているが許容範囲。白・金ツートンのひょうたん「クラッシュ1」「クラッシュ3」は前回の騒動でもゆず肌出現がわずかで、その下の水性ペイントに影響がない。ので、きれいに筆が進んだ。リベラカラー着色組ひょうたん2個「ねじれ君」「スタイル君」は削り取られた前回のひどいゆず肌跡に、代わって8号ストップシーラーと黄色い染料で少しずつ過去を覆い隠してゆく。(↓左右)でも、完全ではないようだ。もう少しといったところ。黄色い染料「リベラカラー・イエローナチュラル」の染色効果が悪い。

 

 

昼刻。セミにせかされるようにゆず肌削り・色ムラ丸出しモノトーンのひょうたん群2個「ねじれ君」「スタイル君」にしつこく再チャレンジ。朝と同じメニューで筆を進める。あっという間に終了。筆塗りはスプレーガンと違い準備も簡単、使う塗料もざっと10分の1。後片付けもほとんどない。使い捨ての筆以外エコだ。スプレーガンが車で買い物に出かける手間暇とすると、筆塗りはコーヒーを沸かして飲む感覚だ。「スタイル君」の色ムラは消え仕上がり具合はもう合格点だ。夕刻。セミはもう聞こえない。「ねじれ君」に再々チャレンジ。しつこさにあきれる。リベラカラーナチュラルイエローを濃くしようと思い、8号ストップシーラーA液5 ml、B液5 ml、ストロンTXL2530シンナー 2.5 ml、リベラカラー・イエローナチュラル5 mlとして筆塗りした。(↓)乾燥後の状態。

 

 

黄色い染色効果は徐々に功を奏している。そのおかげでかなり色ムラが隠れてきた。みかん肌おばさんの化粧品CMみたいだ。

 

 

現状整理            新カシュー法戦線膠着、どうにかなるのか

 

ここまで下塗り、中塗り、上塗りの塗装組み合わせについて様々な状況を見てきたと思う。筆者なりに少しまとめてみた。当初のもくろみと若干違う点が出ている点に注意が必要だ。

 

塗料、塗装法組み合わせ表    @未完成  (カシューはネオクリアー、クリアーを想定)

 

 

○筆者の主観に基づく。あくまで塗装は自己責任で。

 

中間報告2回目

塗装工程の現状も整理してみよう。塗装法の手を広げすぎたせいか、状況が分かりづらくなってきた。上の表も見ながら最善の策を練ろう。

 

            

白・オレンジ水性ペイントツートン2個「ゆず肌2号」「ゆず肌1号」(↑)

下塗り    水性ペイント    白+オレンジ    スプレー

中塗り    8号ストップシーラー        スプレーでゆず肌トラブル

8号ストップシーラー        筆塗で水性ペイント落ちトラブル

☆新カシュー法の下塗り水性ペイントスプレーで始めるも、急遽中塗りを追加した。頑固なゆず肌出現。360~600番相当3M SUPERFINEから800~1000番相当3M ULTRAFINEで徹底研磨し、ゆず肌解消。水性ペイント白・オレンジ再スプレー済み。上塗りで予定していたカシューは中止。中塗りがうまくゆけば上塗り3Hウレタンクリアースプレー待ち。

DSC550(2)

 

白・金メタリック水性ペイントツートン2個(↑)「クラッシュ3」、「クラッシュ1」

下塗り    水性ペイント    白+ゴールドメタリック    スプレー

上塗り    3Hウレタンクリアー        ひび割れて失敗→全面剥離。

下塗り水性ペイントからやり直し。

中塗り    8号ストップシーラー        スプレーで意外とゆず肌トラブルなし?又は少ない。

☆上塗り3Hウレタンクリアースプレー待ち。ただし、よく見ると「クラッシュ1」にゆず肌結構あり。悩み中。

 

上塗りにカシューを予定しているリベラカラー着色組2個(↑)「ねじれ君」、「スタイル君」

下塗り    8号ストップシーラー+染料リベラカラー・イエローナチュラル / スプレーでゆず肌

        トラブル。→全面徹底剥離。

    8号ストップシーラー+染料リベラカラー・イエローナチュラル / 筆塗りでは共に

ゆず肌軽減中。「ねじれ君」の塗装ムラはまだ残る。

☆塗装ムラ解消すれば上塗りカシュースプレーへ

 

DSC 555(2) 6%            

 

カシュー量産先行試作組下塗りクリームまたは黄色4個(↑左右4個すべて)左より「単黄」、一つ右へ「ぺぺ」。右写真の左側ヘタが棒状の「ぼうくん」、右写真右端は「成形加工・実践編」で奮闘したバラバラ君。

下塗り        水性ペイント    クリームまたは黄    (スプレー)

上塗り        カシュー筆塗り先行、その後

        カシュースプレー

☆新カシュー法で最も進んでいるケース。カシュースプレーガンのツバキ飛びトラブルあり。修復済み。あと数回のカシュースプレーで完成予定。

 

        

カシュー量産先行試作組下塗りクリーム・オレンジ(↑左)「液ダレ」。下塗りクリーム・ゴールド(↑右)「ごつ」。

下塗り        水性ペイント    クリーム・オレンジ(左)    スプレー

水性ペイント    クリーム・ゴールド(右)    スプレー

上塗り        カシュー筆塗り。その後

        カシュースプレー

☆左小型の「液ダレ」はカシュー筆塗りで液ダレした後削り取り、もう一度下塗りからやり直した。「液ダレ」「ごつ」双方とも下塗りのグラデーション組み合わせがカシューの上塗りで濁ったり消えたりで妙な印象。余裕あれば両方ともあと数回カシュースプレー予定。下塗りに水性グラデーションの場合、上塗りにカシューは合わない。おそらく3Hウレタンクリアーがよい。

 

平成25年8月1日

遅まきながらリターダーが届いた。

 

 

リターダーとは暑い夏など気温が高いとき、塗料が早く乾きすぎ、塗装に支障が出るのを防ぐ目的の薬剤だ。シンナーに混ぜて使う。ゆず肌もこれで防止できるはずだ。これでセミ→スプレー→ゆずの悪夢的連鎖を断ち切れるかどうか。筆塗には不要だろう。いずれスプレーガンに混ぜて使う予定。

 

平成25年8月2日        早起きは三文の徳

早起きしたので、懸案の塗装ムラひょうたん残り一個「ねじれ君」に手を付ける。8号ストップシーラーA液5 ml、B液5 ml、ストロンTXL2530シンナー 2.5 ml、リベラカラー・イエローナチュラル7 mlと、黄色の染料をさらに増やした。セミの声に誘われるように気分良く塗る。

 

 

筆塗はスムースに進むも前回の塗装ムラ部分がなかなか隠れない。その他の場所を塗り終えてからもう一度塗ってみる。あまり変わらず、塗装ムラ部分が若干薄くなる程度。ゆっくり10秒ほど数えてもう一度。あまり変わらない。最終手段、ふーっと息を吹きかけ乾かし気味にしてもう一度塗る。塗装には禁断の手法だ。意外にも塗装の乗りが良くなり、塗装ムラが薄れてゆく。気をよくしてもう一度。さらに塗装ムラが消えてゆく。パッと見にはもうわからないくらいだ。調子に乗って失敗するのがこれまでの通例なので、今日はここまでとする。写真は乾燥後の状態。(↑)染料が多いせいか、色つやが少し悪い気がするも、気にしない。中塗りとしての義務は十分果たしたかな。

 

平成25年10月9日        鈴虫とともに

ぼーっとしているうちに夏は去り、秋になった。セミは帰り、鈴虫がやってきた。懸案の色ムラねじれ君は前回の奮闘にかかわらずまだ塗目のあらが目立つ。中塗りの不始末は上塗りで隠せない。今日こそ決着をつけようと思う。狂ったセミがいないのでもうゆずの心配はないはずだ。8号ストップシーラーA液5 ml、B液5 ml、ストロンTXL2530シンナー 2.5 ml、リベラカラー・イエローナチュラル7 mlと配合は前回と同じ。

 

慎重に筆塗を進める。塗り始めた途端、ぼつぼつとゆずが一面に出現!冬まで待たないとダメだったか、とうろたえるも筆は勝手に進んでゆく。くやしいのでゆず肌になっている部分をだめもとで何回も筆でこすっていると、乾きの早い塗料ゆえすぐに筆が重くなってきた。どろどろ、という感じだ。どろどろの筆でゆず肌を何度もこすっていると、次第にゆず肌が消えてゆく。この手法はカシュー塗りでは絶対にしてはいけないことだ。しつこく塗ることでゆず肌が消えることが分かったので、調子を出し、ひょうたん全面を塗ってゆく。時間がかかる。(↑左右)何とか宿敵のゆずを塗りつぶすことに成功した。(と思う)

 

平成25年10月13日        青空が涼しい<全員及第 / 3Hウレタンクリアー1回目

塗装日和だ。朝の涼しいうちから活動開始。夏の補修クラスを何とかしようと思う。カシュー量産先行試作組下塗り黄色 / クリーム4個「単黄」「ぺぺ」、ほか2個、上塗りにカシューを予定しているリベラカラー着色組2個「ねじれ君」「スタイル君」、カシュー量産先行試作組下塗りクリーム・オレンジ1個、総計6個をカシュースプレー(ネオクリアー)で上塗り、下塗りクリーム・ゴールド2個「クラッシュ1」「クラッシュ3」、を3Hウレタンクリアースプレーで上塗り予定だ。合計8個もあるが、張り切ってみなやすりがけする。おなじみの800~1000番相当3M ULTRAFINEを使用。写真(↓)は最終研磨後、カシュー塗装を待つ「ねじれ君」。下準備(中塗り8号ストップシーラー)は完璧。色むらは宿命的。削ると出てきた。

 

補修クラス入りの原因となったカシュー唾後をいくつかのひょうたんでかすかに認める。360~600番相当3M SUPERFINEでごく軽くこするとさらに目立たなくなる。素地調整は十分。気合も十分。「吹付用シンナー」「ネオクリアー」の比率も同じく1対1だ。コンプレッサーを準備し、スプレーガンを接続。「吹付用シンナー」を試しに入れ、まずは試し吹き。気持ちよく透明なスプレーが青空に吸い込まれてゆく、と期待するも無反応。何度引き金を引くも同じ。スプレー先端をよく見るとごく少量のシンナーがちょろりという感じで出ている。まるっきり詰まっているわけではないのか。先端キャップを外したり、その他調整ねじをゆるめたりしても結果は同じ。だめだ。前回から日がたち過ぎ、どこかで詰まってしまったのだ。まだカシューを入れる前でよかったが、それにしても困った。肩すかしスプレーガンをわきにゴロンと置き、いつぞやホームセンターで買っておいた安いスプレーガンを取り出す。コネクターが合うかな、と思いつつ仮死状態のスプレーガンを外そうと手にかけ、コンプレッサーのスイッチを入り切り。空気の詰まったホースがびっくりして踊る。あきらめ半分おもむろに引き金を引く。「シュー」と気持ちのいい音とともに一気に蘇生した。長期間スプレーガンを使用しない時は要注意との教訓だ。何らかの工夫が必要なのだが、いずれ調べておこう。スプレーガンのカップに「吹付用シンナー」50 ml、「ネオクリアー」も50 ml混ぜ、よくよくかきまぜ、噴霧スタート。「ぺ」予防に今日は新品のネオクリアー缶を開けた。コンプレッサースイッチOK。開始とともにどんどん進み、順調の極み。次々終了。

 

勢いを買って「3Hウレタンクリアー」噴霧も行う。白・金メタリック水性ペイントツートン2個「クラッシュ1」「クラッシュ3」が対象。無難に規定量で行く。主液20 ml、硬化剤 5 ml、シンナー 10 mlでスタート。あっという間に終了する。本来は白・オレンジ水性ペイントツートン2個「ゆず肌1号」「ゆず肌2号」も「3Hウレタンクリアー」噴霧の対象だが、白のグラデーションに若干濁りがあるため今回はパス。グラデーションを補正した後に「3Hウレタンクリアー」噴霧予定とした。下の写真は「3Hウレタンクリアー」噴霧後の速報。(↓左右)クラッシュ3とクラッシュ1。上々だ

                    

 

 

塗装はなおも続く

 

新カシュー法前進全速        柿の色は神のお告げ

 

平成25年11月6日        隣の家の柿も色づきだしました。

 

 

明け方寒くて目が覚めた。神のお告げだと思い早起きする。曇天。低い雲間から「塗装せよ」との荘厳な声が響く。塗装だ。じつはこの日のために数日前からひょうたん群をよく研磨し準備しておいた。例によって800~1000番相当3M ULTRAFINEを使用、くまなくていねいに磨いてある。塗装対象は「新カシュー法」の例の面々。カシュー量産先行試作組下塗りクリーム / 黄色4個「単黄」「ペペ」「ぼうくん」「バラバラ君」、リベラカラー着色組2個のうち「ねじれ君」、しかしリベラカラー着色組「スタイル君」表面にゆず肌を発見し、今朝の塗装組からはずれる。カシュー量産先行試作組下塗りクリーム・オレンジのうち大きな「ごつ」、計6個だ。「吹付用シンナー」「ネオクリアー」の比率はゆず肌を警戒し6対4へ薄めた。塗装後のほこりを警戒し、塗装後の保管はメタルラックを布で覆った簡易クローゼット=簡易塗装ブースの中とした。助手の清兵衛も呼ぶ。新品のネオクリアー缶をあける。よくよくかき混ぜ、コンプレッサーも準備OK。手抜きも妥協も甘えもなしだ。静かな気持ちでスプレー塗装を始める。胸がすくようなきれいな噴霧だ。順次終了する。人事を尽くして天命を待つ。

 

これは筆者が使用している簡易塗装ブース(↑)。メタルラックがベースとなっている。ただし塗装後の保管のみ。塗装の大敵、ほこりを幾分かシャットアウトできる。昨年までは必ず使用していたが、今年は有効活用していなかった。以前に出来上がったひょうたんの便利な置き場になっていたからだ。完成品、半完成品も含めすべて別の場所に移した。今回から必ず使うことに決めた。

 

平成25年11月9日        量より質

朝からひょうたんを熱心にやすり掛けする。そしてふと考えた。過去に仕上げた作品のうち最も成功したひょうたんと比べ、今回の作品群は未だどれもそれを超えていない。なぜか。①表面の滑らかさが劣る、②色彩が貧弱、の二つだと思う。最も成功した過去のそれは上塗りのカシュー塗装のみで12回だ。今回最も上塗りの回数が進んだもので8回になる。あと4回のカシュー塗装で過去を超えられるか。このままでは答えは否、の予感がする。何がいけないのか。筆者はここまでカシュー塗装の良否はその塗装回数がすべて、又はそのほとんどだと思ってきた。きっとそれは大きな間違いだ。決定的に上質なカシュー塗装であればほんの数回で最上級の結果を得られると思う。なぜそのように思ったのか。前回の塗装結果(11月6日に塗装)が一部を除き抜群に良いからだ。結果が良くてなぜいけない?逆説的だが解説しよう。①表面の滑らかさ、全く非の打ちどころがない。わけではないが、下の写真左の「ねじれ君」は理想に近い。(↓左)わずか2回のカシュースプレー塗りだ。逆に下写真右「バラバラ君」はすでに合計8回の筆塗り、スプレー塗りのカシュー塗りを繰り返しているベテランだが問題がある。(↓右)写真ではよくわからないが「バラバラ君」表面一面に細かなゆず肌がひしめいている。②色彩は両者とも依然貧弱だ。「新カシュー法」の面々すべてに共通だ。

 

分けて考えよう。①表面の滑らかさがたった2回のカシュースプレーの「ねじれ君」で抜群によく、8回スプレー塗りの「バラバラ君」でもゆず肌を無視するとそこそこは良い結果だ。良い方の理由としてはおそらく「吹付用シンナー」「ネオクリアー」の比率を6対4へ薄めたこと、スプレー塗装の際今までは一度吹き付けた場所も様子を見ながら何度も繰り返し重ね塗りしていたが、一回の通過で終えるようにしたこと、簡易塗装ブースを使用したこと、の3点だと思う。カシューは薄めるほどぽってり感、肉厚感は少なくなるが、表面の「あら」も減ってゆく。「あら」とはゆず肌やその他何らかの理由でできた凸凹だ。スプレーでの重ね塗りは一部乾燥したカシューに未乾燥のカシューが入り込み、やはりゆず肌、その他塗装に大小悪影響が出る。塗装ブースに入れずそこらへんで鑑賞がてら乾かしておくと空中の埃が付き表面が荒れてしまう。慎重に考えればわかりそうなものだが、回数勝負と思っている時期にはこんな初歩的な原理が消え失せてしまう。「バラバラ君」の表面が悪い方の理由は深刻だ。幸いその他の「新カシュー法」ひょうたんの結果は今回の塗装後から抜群に良くなった。なぜ「バラバラ君」がこれまでの塗装→研磨→塗装パターンでいつまでたっても過去の例を超える良好な塗装結果が得られないか。後輩の、たった2回塗りの「ねじれ君」にいともたやすく抜かされたのか。これはひとえにゆず肌放置が原因だ。ゆず肌が多少残っていて、それにより少し表面が荒れていた場合、多少研磨して表面をそこそこ平らにはする。そして次の塗装に期待してしまうのだ。次こそはこの忌々しいゆず肌の凸凹がとれるだろうと。次には消えなくても回数を重ねればいずれゆず肌はきれいに消えるだろうと。ここまで回数を重ねて分かったことはゆず肌に多少の研磨を加えて次の塗装をしっかり行っても必ずやっぱりゆず肌が生き残っていることだ。回数を重ねても消えない。いつまでも消えないのだ。掛け算ができない中学生はたとえ大学生になっても掛け算ができないのと同じ原理。どこかで決着をつけない限りその後の努力は空振りに終わってしまう。塗装→研磨→塗装、ではなく研磨→研磨→研磨→塗装、が正解だ。回数はそのあとについてくる。山高きが故に貴からず。

 

 

 

もう一つ、わずかな不満点はある。薄目のカシューで簡単に液だれが生じること。(↑)ただしこれはおそらく簡単に解決可能だ。過去の例からいってよく乾いた後丁寧に研磨すれば跡形もなく消える。写真は「ねじれ君」の液ダレ。②色彩の貧弱さ、これはおそらく下塗りの「ナチュラルイエロー」がいまだ上塗りに強く残っているからだ。好みにもよるが安っぽい色調だ。なぜか。過去に最も成功したひょうたんのカシュー塗装は全12回の塗装で「ネオクリアー」7回、「クリアー」5回の内訳だ。「クリアー」は「ネオクリアー」よりもう少し飴色がかっている。琥珀色より少し薄みがかった感じだ。この2種類のカシューの塗装回数で色合いの調節ができる。ただし、一度濃くした色は二度と薄い色調には戻らない。「ネオクリアー」にもわずかに琥珀色の色調がついており、重ね塗りするたびにそれが微増する。臆病な筆者は未だに「ネオクリアー」しか今回の「新カシュー法」群のひょうたんで使っていない。そろそろ琥珀色の色調を出して勝負だ。

 

前置きがくどい。今回の塗装対象は前回とほぼ同じだ。前記した通り、カシュー「クリアー」を使用する。このためカシュー量産先行試作組下塗りクリーム・オレンジの大きな「ごつ」は色調がますます濁りそうなので対象外にした。カシュー量産先行試作組下塗り黄色 / クリーム4個「単黄」「ペペ」「ぼうくん」「バラバラ君」、リベラカラー着色組2個のうち「ねじれ君」計5個。ゆず肌が比較的目立つのが「バラバラ君」だ。2つ前の写真でも「バラバラ君」は一見きれいに見えている。写真ではわかりづらいがよく見ると細かなゆず肌が一面に見えるのだ。これ以外の5個はさっと800~1000番相当3M ULTRAFINEで磨く。問題はこの「バラバラ君」。型のごとく360~600番相当3M SUPERFINEで磨く。いつもなら通り一遍でおしまいにするが今日はしつこい。光にかざすとわずかにゆず肌が見える。見えなくなるまで徹底的に磨く。10分近くも格闘していると、何とかゆず肌が目立たなくなってきた。今日の下準備はくどいようだが徹底的だ。へとへとになった後、ようやく曇天を背に例のごとくスプレーガンを準備。「吹付用シンナー」「クリアー」の比率は前回同様6対4。助手の清兵衛を呼び、慎重に開始。厚塗りしないよう、重ね塗りしないよう、あっさり、丁寧に行う。カシュー、シンナーを一回補給するも間もなく終了。あっけない。くれぐれも次の塗装には期待しない。計5個のひょうたんは塗装ブースで休憩中。果報は寝て待て。

 

 

平成25年11月10日        成果確認

 

表面の滑らかさは「バラバラ君」も含め完璧に近い。色彩はもう少しの段階。(↑左右)左は「ねじれ君」3回目カシュー終了後。右は「バラバラ君」9回目終了後。「ねじれ君」の液ダレはきれいに消えている。終着駅の灯は近い。

 

3Hウレタンクリアーを進めよう。            御無沙汰しています。お先に、カシュー君。

 

平成25年11月13日        快晴 / 3Hウレタンクリアー2回目

3Hウレタンクリアーが進んでいない。「新カシュー法」がひと段落したところで、3Hウレタンクリアー系を動かそう。とにかく前進あるのみ。「クラッシュ3」、「クラッシュ1」を800~1000番相当3M ULTRAFINEでよく磨き、朝もやが消えたころから3Hウレタンクリアーをスプレーガンで塗装する。3Hウレタンクリアーとしては2回目だ。推奨通りA液20 ml、B液5 ml、シンナー20 mlとした。ノントラブルで終了か、と思ったらクラッシュ3の吹付が少ししつこかった。少し口の近くが液だれしそうだ。大変と思い、まずはあわてる。少しでも垂れないようにと口に刺さった割り箸を水平にし、焼き鳥のごとく空中でくるくるゆっくり回した。こんなことしてどうにかなるのか、と思いつつ回して待つこと5分、よく見てみると液垂れが消えている。ほっとして塗装ブースへ収納する。

 

平成25年11月14日        眠い朝 3Hウレタンクリアーご破算、8号ストップシーラーへ戻る

 

昨日の成果を見る。「クラッシュ1」が大いに不満足。

 

写真上左右は左から「クラッシュ3」「クラッシュ1」。(↑)左の「クラッシュ3」はとりあえず合格レベル。右の「クラッシュ1」は表面のでこぼこ感が残っている。カメラの性能が悪く、表面の状態がうまく映っていない。あからさまなゆず肌ではないが、平滑感に乏しい。おそらく1回目3Hウレタンクリアーの前の中塗りが良くないのが原因。前回10月13日の1回目3Hウレタンクリアー塗装時点ですでにその前の中塗り・8号ストップシーラーのゆず肌が残っており、甘い基準で見過ごしていたのだ。何度も言うように中塗りの失敗は上塗りでカバーできない。失敗は元から絶たないといけない。塗装の世界では「前進あるのみ」は禁句だ。あえて言うなら「SLOW BUT STEADY」だ。眠い朝に反抗するように意を決し「クラッシュ1」を360~600番相当3M SUPERFINEで思い切り徹底研磨する。昨日の3Hウレタンクリアーは身慈悲にも剥げ落ち、中塗りの「8号ストップシーラー」が出てきた。こいつがゆず肌の犯人だ。これを始末しないと次の段階には行けない。さらに頑張って研磨。一通り以上に滑らかになったと安心できるまで研磨した。その勢いを利用し素早くスプレーガンの用意をしてしまう。スプレーガンのカップにさっさと「8号ストップシーラー」を流し込む。A液、B液、シンナーの比率は1:1:0.5とシンナーを多少多めにする。吹き上がった時に少しゆず肌状が見えた。(↓)

 

乾いた後憮然としてシャッターを切る。(↑)白い光沢が4点映っているが、12時方向のものにご注目。無数のゆず肌が笑っているのがわかる。落ち込む。

 

平成25年11月15日        三歩進んで二歩さがれ。 / 出戻り8号ストップシーラーもご破算、水性スプレー缶再登場。

 

 

トンネルを抜けるとまたトンネルだった。(↑)

3Hウレタンクリアーとはそもそもどんなものだろう。仕上げの上塗りに使うものだとは読者諸賢にもお分かりいただけると思うが、なぜそれにこだわるのか。ここでその素性を一応明らかにしておこう。筆者が大変信用を置いている「おもしろ塗装工房」さんのホームページより引用する。「今まで以上に固いウレタン塗料です。従来のウレタンクリヤーはおおよそH~2Hの硬度ですが、3Hウレタンクリヤーは最大硬度が3~4Hと、UV塗料とほぼ同じ硬さの硬度を保てます。※ともかく固いウレタンを希望しているルアーマンにお勧め!※完全無黄変タイプなので、黄変で悩んでいるビルダーの方にはお勧めです。」以上が「3Hウレタンクリアー」に関し筆者が知りうる情報のすべてだ。ダイヤモンドのように硬質で、滑らかなガラス質にくるまれたひょうたん、それが虹色に光を放つさまが目に浮かぶ。うたい文句の通り以上に仕上げたい。現実の曇天に背中を向けつつ360~600番相当3M SUPERFINEを引っ張り出してきた。以前にも出てきたゆず肌キラーだ。甘い基準で見過ごしていたゆず肌はこれで一掃しよう。ターゲットは上塗りに3Hウレタンクリアーを使用予定だったひょうたん3個すべて。「クラッシュ1」、「ゆず肌1号」、「ゆず肌2号」。ただし「クラッシュ3」のみ不思議とゆず肌が少なく今回の徹底逆戻り研磨から対象除外。

 

因幡の白ウサギ状態に研磨してある「クラッシュ2」(↑)(7月27日の3連続写真も参照)。3Hウレタンクリアー法も心ともなくなってきたのでこれも今回から3Hウレタンクリアー法の仲間に入れよう。ちなみに先端の角(つの)は美的センスにかけるのであっさり切断。割り箸を通した時も少しの力でこの角が割れてしまうので、この際無しに。よく磨かれているのでさすがにここから下塗り水性スプレーをスタートしてよいだろう。さて、「クラッシュ1」は昨日以上に徹底的研磨を加える。白・オレンジ水性ペイントツートンの「ゆず肌2号」「ゆず肌1号」も同様に徹底カワハギの刑。計3個。無慈悲にも片端から360~600番相当3M SUPERFINEで完全研磨した。ゆず肌を含む中塗りの「8号ストップシーラー」を根絶やしにし、さらに下塗りの水性ペイントも容赦なく削ってゆく。ここ最近気性が荒い。鼻息も荒い。

 

上の写真左は前回の中塗り8号ストップシーラー上に現れている「ゆず肌2号」のゆず肌。おなじみだ。(↑左)写真右はそれを徹底的に研磨した後の様子。(↑右)希望の見えない厚い雲から薄日がさしてきたころようやく研磨終了。勢いを買って出戻り下塗り水性スプレー噴霧に突入する。数時間間隔で各ひょうたんともしつこく数回スプレーした。「クラッシュ1」、「クラッシュ2」ともに白・金メタリックグラデーション塗装にする。以前から感じていたが、グラデーション塗装の場合、最後に白を吹きかけた方が逆のパターンよりはるかにきれいに仕上がる。

 

写真左は水性スプレー完成後の「クラッシュ1」「クラッシュ2」。(↑左)写真右は「ゆず肌2号」「ゆず肌1号」。これから必殺因縁の8号ストップシーラーに挑戦する前の記念写真。緊張感で各ひょうたんとも表情が険しい。

 

 

平成25年11月16日        せわしない週末 / 8号ストップシーラー噴霧再挑戦1回目

 

週末の筆者の日常(のイメージ)

もたもたしているうちに週末になった。その週末の押し迫った夕方に行動開始。重くよどんだ時間をきれいなスプレー噴霧で吹き飛ばそう。重い腰を上げドタバタ準備開始。痛恨のゆず肌はいつもこの8号ストップシーラーが原因となっている。しかしこの中塗り工程を省略すると塗装が「クラッシュ」したのは記憶に新しい。何とか成功させなければ。「クラッシュ1」、「クラッシュ2」のみ金色塗装部分をやすりがけせず、そのままの地肌に8号ストップシーラーを吹き付けてみよう。金色の粉(フレークと呼ぶらしい)がざらざらしている感触を8号ストップシーラーで封じ込めたい。少し新たなトライアルだ。機は熟した。この日のために新しい8号ストップシーラーをわざわざ購入しておいた。おろしたての8号ストップシーラーのふたを開け、調合する。今まではA液:B液:シンナーの割合を1:1:0.5にしていた。推奨通りだが今回シンナーの比率を上げた。推奨値の中で最も高い1:1:1までシンナーを多くしてみた。では突撃開始。「クラッシュ1」、「クラッシュ2」と順次噴霧を進めるも極めて順調。次。「ゆず肌2号」。当然のごとくきれいな仕上がりを期待していたが、なんと無数のゆず肌が出現。(↓)愕然とくる暇もなく、本日終了。「ゆず肌1号」の噴霧は急きょ中止。暗い影が夕闇に伸びる。

 

絶句。ゆず肌の、厚き塗装に触れてみて、よろしからずや道が見えない。寝る。

 

暮れる夕日を寝室より望む(イメージ)

 

平成25年11月17日        寒いが晴天 / 8号ストップシーラー噴霧再挑戦2回目

昨日の雪辱を晴らそう。対象は昨日と同じまずはひょうたん群計4個「クラッシュ1、2」+「ゆず肌1、2号」。加えて「スタイル君」の計5個。

「クラッシュ1」はもともとグラデーションの色合いがとても良い。一方で下塗り水性スプレー後あえて研磨してないせいか少し表面のざらつきが残っている。今回の中塗り「8号ストップシーラー」に期待する。

 

「クラッシュ2」は因幡の白ウサギ状態にした時のまだら模様が金色部分に若干残っている。(↑)写真では見えにくい。昨日同様研磨しないで中塗り「8号ストップシーラー」を噴霧しようと思ったが、表面の粗さがどうしても見過ごせない。ので、仕方なくそっと800~1000番相当3M ULTRAFINEで研磨した。研磨後案の定まだら模様のゴールドの下塗り部分がわずかに見えている。もう一回水性スプレーゴールドを加えるか、と思ったが、このまま中塗り「8号ストップシーラー」へ。やってはいけない「赤信号無視」、「突撃あるのみ」だ。結果を見て色むらが残れば今度は「8号ストップシーラー」に同系統の水性ステインを混ぜてごまかしてみようと言い訳する。因縁の「ゆず肌2号」。徹底的に研磨しようかとも思ったが、昨日確認したゆず肌が若干小さくなっているような気がする。このまま「8号ストップシーラー」を重ねて噴霧してみよう。ダメならまた徹底研磨だ。しばらくお休み中だった「スタイル君」。「8号ストップシーラー」を2回塗りカシュー噴霧へ進んだところ、急にゆず肌が大出現している。大慌てで360~600番相当3M SUPERFINEで研磨し、その後放置、今日に至る。この機を逃すと後がない。よく見るとゆず肌がうっすら残っている。今日はどうしてもゆず肌を作りたくない。意を決してスプレーガンの時間となる。

 

気休めかもしれないが、「8号ストップシーラー」とそのシンナー、本日噴霧予定のひょうたん群を寒空の下に置いて、あえて冷やす。(↑)冷たく放置しているの図。暑いとゆず肌ができやすくなりそうだからだ。A液:B液:シンナーの割合は昨日同様1:1:1。念のため清兵衛も呼ぶ。スプレーガンの準備を整え一斉にスタート。ゆず肌の出現はなさそうに進んでゆく。ここまでは成功だ。因縁の「ゆず肌2号」!若干のゆず肌様だが、許容範囲。最後の「ゆず肌1号」になる。水性ペイントで下塗りした後、今日が出直し初の中塗り「8号ストップシーラー」噴霧だ。緊張する。最初なのでたっぷり噴霧しようと意気込む。それがいけなかった。あっという間にゆず肌がぼつぼつと出現。

 

写真上は白い頭にできた「ゆず肌1号」。よく見るとたくさんのゆずがひしめいているのがわかる。肩を落として本日の噴霧終了。

 

平成25年11月18日早朝        限りなく快晴 / 8号ストップシーラー噴霧再挑戦3回目

そろそろ中塗り「8号ストップシーラー」の段階も締めくくりにしたい。何が何でも今日こそは満足のいく成果を得たい。対象は昨日と同じ。早起きし、熱心にやすりがけ。ゆず肌1、2号は360~600番相当3M SUPERFINEでよく研磨、その他は800~1000番相当3M ULTRAFINEでそっと研磨。下塗りが出ないように注意する。寒空の下に置いて、多少冷やすのも昨日同様。噴霧の前に反省点。昨日噴霧を頑張ったひょうたん全面、ないしひょうたんの一部分に比較的ゆず肌が出る傾向にある。一回の通過で軽く噴霧した場所にはゆず肌がでない。それを肝に銘じスプレースタート。シンナーの比率は同じ。あっという間に終了。

 

注目の「ゆず肌1」には大なり小なりゆず肌が出現。(↑)上の写真はもう見飽きたと思うが「ゆず肌1号」のゆず肌。「ゆず肌2号」の方はわずかにゆず肌を認めるもかなりきれいな表面へ。その他は同じ条件ながらほとんどゆずができず、おおむね満足。

 

平成25年11月18日昼        昼飯半分、残りはリターダー。 / 8号ストップシーラー噴霧再挑戦4回目

昼食を早めに切り上げ中塗り「8号ストップシーラー」に最後の挑戦。これでだめならこの企画は企画倒れにしよう。朝と同じく研磨。中塗りはこれで打ち止めにしたい。以前少しだけ紹介した「リターダー」を使用することにした。A液:B液:シンナーの割合1:1:1は同じで、リターダーをシンナーの十分の一量加える。半信半疑でいざスタート。あくまで噴霧はあっさり、粘ってはいけないと思いつつ噴霧の霧は晴天に向かう。ゆず肌は?できていない。成功だ!すべてのひょうたんをあっさり気味に抑えてあっけなく終了。気分が良い。リターダー、おリコーダー。自宅のリビングより(のイメージ)

 

平成25年11月20日        3Hウレタンクリアー再挑戦1回目

昨日の成果確認。「ゆず肌2号」の白い部分に一部「ちじみ」ができている。塗装後の乾燥過程が異常ででこぼこする現象だ。わずかな範囲で、しかも360~600番相当3M SUPERFINEでよく研磨するとすぐにきれいになった。その他は完璧。やっと3Hウレタンクリアーの工程へ進める。対象は同じ。「クラッシュ1、2、3」と「ゆず肌1、2号」。すべて800~1000番相当3M ULTRAFINEでそっと研磨しておく。主液4、硬化剤1、シンナー 4の割合とした。前回失敗したときに比べシンナーの比率が規定値の上限いっぱい、前回の2倍と薄めにした。ためらわずすぐにスタート。あっさり目にスプレーを心がける。大きなトラブルもなく順次終了。

 

平成25年11月29日        3Hウレタンクリアー再挑戦2回目

3Hウレタンクリアーの2回目に進む。1回目の結果はかなり満足。「ゆず肌2号」の白い部分に再び「ちじみ」出現。(↓)

 

 

360~600番相当3M SUPERFINEでよく研磨しかなり目立たなくなる。他はきれいなので研磨なしで2回目に挑戦。さっそくスプレースタート。主液4、硬化剤1、シンナー 4の割合は一回目と同じ。「ゆず肌1号」で少し粘ったためか「たれ」少々3すじが白い部分にできてしまった。明日になったら削ろう。他は無事終了。

 

平成25年11月30日        夕日とともに 3Hウレタンクリアー再挑戦3回目

もたもたしているうちに夕方となった。3Hウレタンクリアーを仕上げたい。今日は3回目だ。「ゆず肌2号」に相変わらず「ちじみ」あり。昨日同様360~600番相当3M SUPERFINEで軽く研磨。昨日確認した「ゆず肌1号」の「たれ」は思ったほど目立たないがやはりそっと360~600番相当3M SUPERFINEで軽く研磨しておく。その他は1000~1200番相当の3M MICROFINEで穏やかに研磨。不安な夕日を背に受けつつスプレースタート。あっけなく終了。用具をかたづけた。今日の結果が良ければ3Hウレタンクリアーの工程は終了だ。果報は寝ても待ってもいられない。。

 

平成25年12月1日        3Hウレタンクリアー線終着駅の輝き

「ゆず肌1号」の液だれの跡はほとんどわからない。オレンジ色へ移行するグラデーションの一部に不満。いずれ直そうと思う。「ゆず肌2号」のちじみはますますひどくなっている様子。徹底的に中塗りから削りなおす必要あり。しばらく「ゆず肌1、2号」は保留にしよう。もしかしたら下塗り段階から考え直さなければいけないかも。残念。「クラッシュ1、2、3」は合格。3Hウレタンクリアーは思ったよりとてもきれいだ。以下せっかくなので「クラッシュ1、2、3」をまとめて講評しよう。

 

完成品塗装表一覧

 

 

*Fクラッシュ1

 

(↑左右)「クラッシュ1」完成図。色合いは良く、上部水性スプレーホワイトと下部ゴールドのグラデーションが秀逸。表面の平滑感も良好。ゴールドメタリックの質感もうまく表現されている。色むらもない。カシューと比べると塗装の深みがやはり浅いと思う。やや素気ない。同じく塗装回数3回目のカシュー塗りと比較するとよくわかる。塗装評価をすると10点満点中の7点だ。形状評価は好みにもよるが不安定さを考慮し厳しい5点とした。K分類でも低評価のⅡBとなる。

 

上の写真はカシュー3回塗装後の「スタイル君」と「クラッシュ1」との拡大比較写真。(↑左右)。光の映り込みに注目してほしい。明らかにカシューの映りが良い。3Hウレタンクリアー塗装3回ではまだ足りないのか、元々の性能によるものか。はたまた筆者の腕が未熟なのか。

 

*Gクラッシュ2

 

(↑左右)「クラッシュ2」の色合いは良好。上部水性スプレーホワイトと下部ゴールドのグラデーションが秀逸。ゴールドメタリックの質感はそこそこの表現。一部塗装ムラが残るのが致命的。表面はほぼ平滑。塗装の深みはカシュー未満。そのうち妙案があれば解決しよう。思い出は尽きない。努力賞ものだが塗装評価はぎりぎり合格の6点だ。形状評価は高く9点とした。K分類では最高のⅥBとなる。

 

*Hクラッシュ3

 

(↑)「クラッシュ3」完成図。色合いはとても良好。上部水性スプレーホワイトと下部ゴールドのグラデーションも上手だが、白い部分が少なくややおとなしめ。ゴールドメタリックの質感は大変良い。表面の平滑感も良好。ゴールドメタリックの質感もうまく表現されている。色むらもない。塗装評価は3Hクリア法では最高の8点とした。これでもひょうたんか、と思う形状は好みの差が激しいが、形状評価はK分類のⅣBであり5点とした。形を抜きにすれば完成度は高い。

3Hウレタンクリアー工程はこれで終了とする。

 

新カシュー法最終決戦        全軍突撃せよ

 

平成25年12月5日        早朝に映えるカシューの幻影

小題が昔の2時間ものドラマのようだ。3Hウレタンクリアー工程が終わったので、今度は新カシュー法の番だ。こちらもようやく最終戦の雰囲気が伝わってくる。その日、目が覚めると青空だった。昨日から予習をしっかりしておいた。1200~1500番相当3M MICROFINEですべてのひょうたんにやすりがけしておく。今まで使っていた800~1000番相当3M ULTRAFINEより一ランク目が細かい。「ぼうくん」の一部に軽い液だれあり。これは360~600番相当3M SUPERFINEでそっと磨き、順次細かく磨いた。結果、思ったよりきれいになった。塗装対象は「新カシュー法」の例の面々。カシュー量産先行試作組下塗り黄 / クリーム4個「単黄」「ペペ」「ぼうくん」「バラバラ君」、リベラカラー着色組2個「ねじれ君」、「スタイル君」。カシュー量産先行試作組下塗りクリーム・ゴールドの大きな「ごつ」計7個。「吹付用シンナー」「クリアー」の比率は前回同様6対4とした。準備は万端。清兵衛にも協力要請。型のごとく噴霧開始。基本は一回通過、薄塗り気味、吹き残しなし、で同じ。全量50 mlで開始するも途中で燃料切れ。同じ分量を補充するもまたして使い切り、大慌てで3回目少量を補充し、無事終了。可能な限り塗装ブースに収容。人事を尽くして天命を待つ。

 

平成25年12月6日

朝が来た。寝室からバルコニーに出てみると朝日が爽やかに昇ってきた。まぶしい。あくびをしていると執事が温かい紅茶を運んできた。川のせせらぎの向こうから小鳥のさえずりが遠慮がちにきこえる。

 

 

何かがおかしいと思っているうちに目が覚めた。清流の響きはしない。執事も来ない。塗装待ちのひょうたんが威張って待っている。ただいま伺います。昨日の出来具合を拝見させていただきます。

 

まず、「ねじれ君」。4回目終了後。(↑)わずかだが液だれができている。昨日の吹付けは少々頑張りすぎたようだ。

 

「バラバラ君」10回目終了後。(↑)よく見るとふたスジの液だれが見える。何とかしよう。それにしても光沢感のなんと素晴らしいことか。その他のひょうたんはまったく問題なし。かなりカシューの琥珀色の色調もついてきている。「ねじれ君」、「バラバラ君」ともにそっと液だれの部分のみ360~600番相当3M SUPERFINEでみがき、次に800~1000番相当3M ULTRAFINE、最後に全面を1200~1500番相当3M MICROFINEで軽く磨いた。

 

800~1000番相当3M ULTRAFINEで液だれ部分を磨いた状態。(↑)ほとんどわからない。勢いを借りすべてのひょうたんを1200~1500番相当3M MICROFINEで軽く磨く。塗装へ進もう。塗装対象は昨日と同じ。昨日は燃料切れで少しあわてたが、今日は節約して使う。液だれするほどざぶざぶ吹きかけてはいけない。全量100 mlとした。噴霧開始。清兵衛との共同作業だ。「ねじれ君」「バラバラ君」のツルをじかに持ってゆっくり回しながら均等にスプレーできるよう心掛ける。しかも一回通過、薄塗り少量のみ。吹き残し無し。意外と難しいが頑張る。すべて噴霧し終わった後でスプレーガンのカップを見ると、まだわずかにカシューが残っていた。燃費はとても良好。

 

平成25年12月7日        最終救難艇 / 理想郷への道のり

そろそろ新カシュー法も一番塗装回数が多いもので10回を数える。最も少ないもので「スタイル君」の2回、「ねじれ君」の4回だ。塗装の終了をどの回数で区切るか厳密な決まりはない。小学校は6年間で終了だが、塗装の完成は当然回数で決めることはできない。当然その「質」で決まる。筆者の基準は深み、色合い、失敗の有無、の3点で決めている。昨日までの塗装で、合格はカシュー量産先行試作組下塗り黄色 / クリームのうち「単黄」、下塗りクリーム・オレンジの大きな「ごつ」とした。その他は合格ラインに肉薄するがまだ不合格だ。

            

 

写真上左は「ねじれ君」5回終了後の様子。(↑左)惜しいかな、新たにひとすじの液ダレ発生。「失敗あり」だ。写真上右は昨日同様やすり掛けし、少し目立たなくした状態。「バラバラ君」、写真はないが塗装一部が薄すぎて不完全。「失敗あり」の判定。「スタイル君」、トータル2回で「深み」「色合い」不足。その他なんだかんだで塗装がストップしているものを今日は集めてきた。カシュー量産先行試作組下塗りクリーム・オレンジ「液ダレ」、その他名前も付けられていない小型ひょうたん2個、合わせて6個が最終便搭乗者となる。これを最終便としよう。遅い昼から行動開始。カシューは色調重視のため再度「クリアー」。その他条件も同じ。どうしても液ダレを作りたくない。かといって「ぼうくん」のようにうす塗り部分禿も困る。真剣勝負だ。助手の清兵衛も真剣だ。考える間もなく終了。結果判明は明日だ。

 

 

新カシュー法の戦いは続く。    最後まで戦い抜く、部分筆塗り戦法

 

平成25年12月8日        最終救難艇出航中止。ゲリラ戦で踏みとどまれ

DLC 3314 24%

ゲリラ戦で戦争に勝った軍隊はない。負けないだけだ。以前見た「肉弾」という映画で青年がまたがっていた魚雷。(かも)

小題が勇ましいのは内容がしょぼい証拠だ。「ねじれ君」の液ダレがまだ残っている。(↓左)それと下の球南半球の約 1/3 に塗装が薄い一帯発見。(↓右)おそらく成形加工時にパテ盛りした部分で、他の部位よりカシューの乗りが悪いようだ。

 

色むらは以前お話しした通り宿命的。これらの不都合を置き去りにして完成としたくない。

 

「バラバラ君」の様子。(↑左)一部色が剥げている。写真ではわかりづらい。他の部分が完璧に近いのでなおさら目立つ様になってきた。ゆず肌を必死になって削った時の後遺症だ。反対側にも小さな失敗傷がある。(↑右)その他よく見ると「ペペ」「ぼうくん」の一部下の球南半球 1/2 に塗装が薄い部分発見。これらをさっそく補修しよう。ここで多少やり方を変えてみる。今まで通りのスプレーガン方式では不都合な部分のみを改修することはできない。筆塗りを活用しよう。筆塗りを数回不都合な場所のみに繰り返し、ある程度めどが立ったら最後にスプレーガンで塗装し終了とする計画だ。さっそくなじみの筆を用意。塗装用シンナーとカシュー「クリアー」の比率は2対8で少し濃いめとする。部分筆塗りの対象は「バラバラ君」、「ねじれ君」、「ペペ」、「ぼうくん」。カシューは少量のみ用意しこじんまりと筆塗り開始。筆を塗った一瞬にゆず肌が見えた気がしたが、何度もこすっているうちにゆず肌は消失。脂汗がにじむ。すべての不都合な部分をゆっくり丁寧に塗ってゆく。スプレーガンの、あっという間に終わる作業と対照的だ。何とか無事終える。

 

平成25年12月9日        部分筆塗り1回目結果確認&部分筆塗り2回目実施

昨日の成果確認。気になる。まずは「バラバラ君」。

写真ではわかりづらいが液だれ部分は多少改善。塗装の薄い部分もきっちり塗れている。狙い通りだ。あと数回同じ「部分筆塗り」をすればかなり良くなるだろうと勝手な期待。

 

「バラバラ君」の部分筆塗り後。(↑左右)写真ではかえって目立つようだが、実際は改善傾向。「ペペ」、「ぼうくん」の一部下の球南半球 1/2 塗装が薄かった部分もしっかり塗装されている。方向は正しい。スプレーガン塗装の後筆塗りをしてあることに気付いた。それぞれの塗装面を比べると圧倒的にスプレーガン塗装の部分が滑らかだ。残念だがカメラの性能が追い付けずお見せできない。塗装が高性能化し、筆者の低性能なカメラではもう表現しきれない。接写レンズをそのうち用意しよう。夜のとばりも更けて、周囲が静かになってきたころ、部分筆塗り1回目の後の研磨を開始。「ねじれ君」、「バラバラ君」が対象。800~1000番相当3M ULTRAFINEで丁寧に研磨する。研磨しながら思ったが、筆塗り、スプレーガン塗装の境目が比較的はっきりわかる。わかるのでついついその周辺を大きく研磨したくなる。すると結局研磨の範囲が広がりさらに筆塗りの範囲も拡大する。拡大再生産になってしまわないようなるべくギリギリの線を心掛けて研磨する。意外と細かい手作業だ。何とか終了。次いで部分筆塗り2回目を行う。「バラバラ君」、「ねじれ君」のみを対象。「ペペ」、「ぼうくん」は部分筆塗り1回で効果十分。塗装用シンナーとカシュー「クリアー」の比率は1回目同様2対8で濃いめだ。注意深く塗装を行う。が、意外にすぐ終了。塗装面積が小さいことを実感。全量で数mlしか使用していない。成果を期待しつつ終了。

 

たまには

一回お休みも

いいもんだ。

 

平成25年12月11日        部分筆塗り3回目実施

早朝、さっそく昨日の結果を確認。なかなかうまく塗れていると思う。重ね塗りは七難隠す。1200~1500番相当3M MICROFINEで十分研磨した後、3回目部分筆塗りを施行した。条件は今までと同じ。すぐに終了。

 

新カシュー法へ戻る            持久戦。降伏せず。

 

平成25年12月12日        王手 / 新カシュー法戦線再開

3回目部分筆塗りもうまくいっている。部分筆塗はこれで終了にしよう。再びカシュークリアーのスプレーガン塗装に戻そう。王手をかける。「ねじれ君」「バラバラ君」のほか、カシュー3回にとどまる「スタイル君」、部分筆塗り1回のみ施行の「ペペ」、「ぼうくん」、合計5個だ。部分筆塗りの箇所は意外と表面がざらついており、800~1000番相当3M ULTRAFINEでそっと磨き、その後その他の部分も含め最後に全面を1200~1500番相当3M MICROFINEで軽く磨いた。昼過ぎドタバタしながらスプレーガンの準備をし、最後の塗装と思いスプレーガンを握る。気持ちとは裏腹に一回通過、薄塗り気味、吹き残しなし、で素早く終了。健闘を祈る。

 

平成25年12月13日        木枯らし舞う日。カシュースプレー再開1回目確認

 

 

木枯らしが賑やかで今日は塗装できない(↑)。写真に写る落ち葉の行方が気になるが、昨日の成果も気になる。まずはカシュー6回目となる「ねじれ君」。かなりよい出来栄えだ。ただしよく見ると一部塗装の薄い部分がある。さらにあらさがしをすると部分筆塗した後にスプレー塗装した場所はスプレー塗装のみの場所に比べ若干表面の平滑さが劣るようだ。

 

上写真はその比較。(↑左右)左写真の上方映り込みはスプレー塗装のみの部分。あくまで平滑だ。それに対し右写真は部分筆塗り後スプレー塗装したもので、映り込み部分を見ると平滑さが若干劣る。次にカシュートータル12回目後の「バラバラ君」。

  

 

色の剥げている部分2か所(↑左右)。若干周囲と同化した感じがするが、厳しい目で見るとまだまだ。その次カシュー4回目となる「スタイル君」。

 

(↑)。残念ながら一部液ダレあり。そのほかの部分は完璧なのに。次回に期待する(―_―)!!。その他「ペペ」、「ぼうくん」は完璧レベル。めでたく終了とする。

 

平成25年12月14日        王手2回目、カシュースプレー再開2回目

「ねじれ君」、「バラバラ君」の決着をつける。液ダレのできてしまった「スタイル君」も最終段階。朝から少しづつすべて1200~1500番相当3M MICROFINEで磨いておいた。液ダレの部分は800~1000番相当3M ULTRAFINEでそっと磨く。今日は風もなく穏やかな日だ。遅い夕陽を見ながら作業開始。王手再挑戦だ。手順は同じく「吹付用シンナー」「クリアー」の比率は同様6対4。全量50 mlで十分。すぐに終了する。

 

 

平成25年12月15日        発想の転換をしよう。

上の写真左側(↑左)は完成した「ペペ」の口に刺した竹箸。塗装の履歴がわかるよう、塗装するごとにマジックで印をつけている。その一つ一つの印が自然の「美」に挑戦する。上の写真右側(↑右)は芸術と自然が対話中。この日も朝早くから結果が気になる。「ねじれ君」のお尻にごくわずかな液ダレを発見。「バラバラ君」の完成度は相変わらず高い。良くも悪くも著変なし。急に逆の見方が悪魔的に浮かんできた。今まであまり気にしなかった「ねじれ君」のしつこい色むらと、「バラバラ君」の一部しつこく消えない色はげが目立ち始めてしまった。それらに関し部分筆塗りや塗装回数の多さでいつかは修復されるだろうと今日まで頑張ってきた。しかし目立った進歩がない。「ねじれ君」、「バラバラ君」はこのままの方法では永遠に完成しないことに気が付いた。臥薪嘗胆、再起を志すのが得策だ。きちんと完璧に仕上がるよう時期を見計らって工夫しよう。「新カシュー法」で蓄積された知識、経験を土台にして次回こそはこの塗装戦線を正面突破するつもり。捲土重来、こうご期待。「ゆず肌1、2号」も未完成で、次回に期待だ。今回の「新カシュー法」で合格した計5個の内訳はカシュー量産先行試作組下塗り黄色 / クリーム3個「単黄」「ペペ」「ぼうくん」、リベラカラー着色組1個「スタイル君」。カシュー量産先行試作組下塗りクリーム・ゴールドの大きな「ごつ」。

DSC

 

塗装編1まとめ        まとめは科学で経験は芸術だ。

 

まとめてみた。最初に期待した塗装方法と少し違う結果となった。完成したひょうたんも多いが未完のままのそれもある。未完のそれは続編に続く。

 

完成品塗装表一覧(一部未完成)

 

 

塗料・塗装法組み合わせ表 @最終版

 

 

○筆者の主観に基づく。あくまで塗装は自己責任で。

 

この二つの表を見ながら現時点で完成したひょうたんのまとめをしてみよう。今回最後まで粘った「新カシュー法」だが、一部未完成なのは残念。「新カシュー法」の主目的の一つ、筆塗りの廃止とスプレーの多用は達成できた。もう一つの目標、下塗り→上塗りのみで、中塗り廃止も結果より考えると十分正しいことが分かった。「3Hウレタンクリアー」の手法は紆余曲折あったが、「新カシュー法」と反対に必ず中塗りが必要だとの結論を得た。その際、中塗り8号ストップシーラーのスプレー噴霧はゆず肌などトラブル多発に注意が必要だった。

「クラッシュ1、2、3」の講評はすでに平成25年12月1日3Hウレタンクリアー線終着駅の輝きで公表済み。そちらを参照されたし。

 

*A    単黄 

 

(↑)下塗りが水性スプレー単色黄色なので単黄。色合いは良く、下塗りの黄色とカシューの調和がとれている。色むらもない。表面はとても平滑で、深みも十分だ。塗装評価は最高の10点とした。形状評価としては口の部分に難があり、8点と少し下がる。K分類では最高クラスのⅥBとなる。

 

*Bペペ

 

 

色合いは良いが、下塗りのクリーム色とカシューの調和が完全ではなく多少のムラがある。表面はとても平滑で、深みは十分。ツバキのような跡も全く見られない。口の付近にわずかなざらつきがあり、塗装評価は9点とした。形状評価としては文句のつけようがなく10点満点とした。K分類でもⅥB。

 

*Cぼうくん

 

 

(↑)口の棒状のヘタが特徴。色合いは良く、下塗りのクリーム色とカシューの調和が完璧。色むらは全くない。表面はとても平滑で、深みも十分だ。塗装評価は最高の10点とした。形状評価は好みが分かれるところだがひょうたんらしさを買い9点とした。K分類はⅤBである。

 

*Dスタイル君

 

(↑)スタイルが良いのでスタイル君。色合いは良く下塗りの染料イエローナチュラルとカシュークリアとの調和も良好。色むらもなく、表面は意地悪く探せばゆず肌の名残を見つけるが大変平滑。深みもカシュークリア4回と少なめにしては十分。塗装評価は9点。形状評価はスマートさを買い9点。K分類はⅥB。

 

*Eごつ

 

 

手に取ると本当にごつい。色合いは二つの点で難点がある。一つは下塗り水性スプレーの上部クリームと下部ゴールドのコントラストが不明瞭。もう一つは下部ゴールドと上塗りのカシュークリアーやネオクリアーの色が合わず、濁る印象となっている。3Hクリアー法で述べるが、下塗りゴールドには3Hクリアーが良く似合う。色むらは少ないものの平滑さに欠ける。塗装前の下地段階で凹凸が残っており、塗装に影響がある。一方色の深みは意外と十分で苦労の甲斐がにじみ出ている。形状的にはひょうたんの迫力を感じさせ、細部に形状修正の信念を感じるが凹凸の残りもあり6点とした。K分類は堂々ⅥB。

 

美術的ひょうたんの形状分類 (K分類)        既出

 

 

研ぎ出し編へ続く

 

 

その1

ひょうたん誕生悪戦苦闘記

筆者    千成表太郎     Hyotaro SENNARI

                        共著    清兵衛        Bay SEI

 

平成24年11月記す、の巻。

 

収穫編

 

今年は去年と違いひょうたんが豊作だ。

猫のひたいも笑う庭、にひょうたんがなった。自宅玄関正面側には大びょうたん、右寄りのフェンスは千成ひょうたん(小型のひょうたん)が植えてあり、ともに自称大豊作だ。結局去年は一個もひょうたんがならなかったので嬉しい。

せっかくきれいに実をつけたので、多くのひょうたんをできればそのまま、できるだけひょうたんらしい雰囲気で残したい。一方で、玉石混合の中から特にきれいな形のものを選び、ひょうたんの持つ美しさを存分に発揮する逸品も作りたい。残念ながらきれいなひょうたんは気紛れだ。きれいなひょうたんが成長し、満足のいく形で仕上がることはまれだ。気まぐれな自然と幸運の接点、ほんの一瞬に垣間見せる極上の美。それを永遠に封入し掌中にしたい。雑多な思いを抱きつつ、悪戦苦闘しながらの制作途中経過を記録してゆくことにした。悪文の補足手段として随所に「傾向と対策」を配置した。ご理解の一助になればと思う。

 

平成24年10月12日        Day 0        大収穫

豊作である。つるが枯れるまで待ってから収穫しようと思っていたが、秋は容赦なく深まってゆく。ひょうたんの葉っぱはカリカリに枯れてきたのに、つるはいっこうに枯れず、青々としている。明日こそ収穫だと思いながら、つるの青さを見て収穫がずるずる後に延びた。見切り発車ではないが、ほどほど加減で収穫に踏み切った。実の肉厚に十分な手ごたえあり。右奥フェンスの千成ひょうたん群はあと2週間後の収穫とした。

大びょうたんの収穫は全部で20個ほどで、肉厚から考えると収穫時期はちょうど良い。この日のうちにすべて電動ドリルで穴開けをする。口径6 mm。

 

 

今年の穴開けは例年通りのへたを切った上に口元から穴をあけるやり方に加え、2つのやり方を追加した。ひとつはへたを少し残したまま収穫し、へたの中心からまっすぐ穴をあける方法。(↑)いくつか形のよいものに試みたが、ほとんど途中でへたが裂け、結局従来通りへたが短い口元になった。もうひとつは、長いへたを残したうえ、お尻方向から穴開けする方法。後で自然な風合いのひょうたんの姿を残せる。約半数はこのお尻からの穴開けとした。なお、口径6 mmでは種が出てこない。口元の形優先になる。ひょうたんを後で実用的な飲み物用容器として使うことはできないので要注意。出てこない種はそのままにするか、お尻の穴からボンドを注入し、固めるつもりだ。同時期に植えたゴーヤも収穫。最終段階の収穫だが、出来は今一つ。適当なものを選びお尻を少し切り、同じく水につける。もしかしてゴーヤの皮があとでひょうたんのように固まり、いぼいぼ風水飲みができるかもしれない。たのしみだ。(特許申請だ)

 

バケツは例年通り、といっても昨年は収穫がなかったが、45 cm径のもの2個を使用。水を張り、浮き上がるひょうたんを工夫して水に漬けこむ。(↓)

 

 

浮袋を無理に沈ませるようで、大変困難。今年から試みた、重いひょうたんをつるすネットを収穫後もそのまま生かし、庭石用に買ってあった砕石砂利の余りを詰め込み、使ってみた。浮かび上がる大びょうたんに重しを入れたネットをくくりつけ、落としブタで押さえつけ、さらにレンガを乗せ、ようやくバケツの蓋をした。蓋で押さえつけても水面のうえにどうしても空気の隙間が出来る。

 

心配であるがなるようになるさと思い、半ばあきらめる。2個目のバケツもいっぱいになり、急いで近隣のホームセンターでバケツを調達する。45 cm系のバケツは、なぜかみんな蓋が見当たらない。ので、仕方なく60 cm系の物を購入する。残りのひょうたんを頑張って入れてみると口切いっぱいになった。ちなみにひょうたんの切り口から注射器で水を入れようとしたが、全く入らなかった。へとへとになり作業終了。貴重な2時間を費やす。秋空の雲が奇妙、な一日が暮れてゆく。(↓)

 

 

平成24年10月26日        Day 14        水替え

収穫、水漬けから2週間たったので、水を替える。くさい!と思ってふたを開けるが、思ったほどではなかった。水面に浮き出たひょうたんは水線以上でカビが生え、キチンと水につかった部分に比べとても汚い。いったんひょうたんを取り出し、水を入れ替え、バケツもきれいにした。水面に浮き出て、汚らしくなった部分はなるべく上手に水中に沈めた。少しずつひょうたんが重くなっている。後で思ったが、この時点でひょうたんをよく振ってみれば、きっと入り込んだ水がなかでシャカシャカ音を出したかもしれない。振って水音が聞こえるのは、内部がきれいになりかけている証拠だ。来年からは2週間目によく振ってみよう。さらにこの時点で水を強制注入してみると、案外すいすい入ってゆくかもしれない。これも来年の課題だ。2週間前と違い、約20分程度でバケツ3個の水替え終了。皮はまだ固く、水漬けはもう少し必要。(写真なし)ゴーヤちゃんはちゃんと腐ってた。ゴーヤちゃんプルにして食べとくべきだった。

 

平成24年11月3日        Day 21        水替え

3週間たった。例により水替え。臭みは弱い。開けてみると、やはり水面に浮かんでいるものがいくつかある。しかし、先週ほどではない。おおむねきれいな様子。が、良く見ると前回出来た汚れはしっかりと残っているので、最初の2週間程度の完全な水没水漬けが肝心だ。取り出すとまずは皮がするりとむける。ひょうたん群を取り出し、簡単に皮をむき、水洗いする。このとき気付いたが、振ると中から水音がした。手元のホビー用50 ml注射器で、水を口から入れてみると、最初は入りにくいものの徐々にうまく行く。振れば振るほど内部が広がってゆく様子だ。少しずつ注入し、手ごたえがずっしりしてくると注入終了。最後は内容が吹き出てくるので、調子よくやりすぎるのは要注意。何度かしぶきを浴び、イラつく。次々と注水できると、だんだん作業が面白くなってくる。取り出して中の水音がしないひょうたんも、振りを加えると少しづつ手ごたえがしてくる。丁寧に水を押し込む。うまく満水にできると、水中にするりと沈んでいった。ただし最後まで注水が不完全で浮かび上がるものもあり、仕方なく落としブタでおし込んだ。(↓)しかし、それ程強い浮力はもうない。

 

 

作業途中でなかなか形がよいひょうたんを見つけた。元気良く皮をむいているといきなり崩れた。(↑)よくみると薄い肉厚(肉うす)な出来具合のものである。残念だが仕方ない。余裕があれば修復しよう。捨てずにとっておく。

 

この日、未収穫だった千成ひょうたん群も思い切って収穫した。約40個。(↓)大収穫となった。しかし、来年はまた収穫できない可能性が高い。それはそれとして並べてみる。

 

ドリル径は前回同様6 mmで統一。すべてお尻から穴開けし、へたは十分な長さを残した。余ったバケツ空間に早々沈めこむ。といっても浮力はそこそこある。最初に処理した大びょうたんとは違い、落としブタ上に少々レンガ、小石を入れたネットなどのせて容易に沈みこませることが出来た。3週間の水漬けでどう変わるか、ある程度の予測はできる。千成ひょうたんでも、3週間前に漬けこんだ先行試作品が少数あり、本日そのうちの一つをみるとちょうどよい感じだ。皮はきれいに向け、注射器で水をよく注入、排水できる。お尻の穴から見ると肉の厚みも十分。何度か内部の水を替え、千成ひょうたんの先行群の水漬け作業も完了とした。最初のグループ(大ひょうたん)は来週完了予定。本日の千成ひょうたんグループはあと3週間予定とする。

 

平成24年11月4日 Day 23

ひょうたんの浮き上がりが気になり、そっとバケツの蓋を開けてみる。と、思った通り、浮き上がっている。(↓)ずれた落としブタを水平に戻し、蓋をする。くさみほぼ無し。腕が後でかぶれてかゆい。DSC 0027

 

千成ひょうたん先行試作品の乾燥中。保温器に入れるもなかなか乾燥しない。(↓)ので、出して撮影した。

 

 

ちなみに隣はガラス製赤ひょうたん。(非売品。いずれ紹介)ちなみに江戸時代、ないしそれ以前はひょうたんが実用品とされており、今回のように心血を注ぐ芸術品、言い過ぎたのであれば美術品として扱われたことはないと思う。平成の時代に生まれてよかった。ちなみにこの写真は東京湾に浮かぶお台場で、公園でもある。(↓)江戸時代の日本人にとっては遊び場ではなく、黒船に備えた真面目な軍事施設である。ところ変われば品変わる、時が変われば品変わる。

 

 

乾燥編へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乾燥編

 

平成24年11月7日        Day25        水抜き

大びょうたんの収穫は終わった。バケツをひっくり返し、すべての大びょうたんを取り出す。皮はほとんどのひょうたんで簡単にむける。中には少しむきづらいものもあり、柔らかいブラシでこすり取った。25日間の水漬け期間で皮むきは合格だ。今日から中の水を抜き、乾燥工程へと進む。大びょうたんの口が小さく、逆さにしているだけでは自然乾燥を期待できない。積極的に水抜きをすることとする。

 

仕事場から許可を得て吸引ポンプを借りてきた。(↑)ずるずるといい音を立てながら、中の脳みそが溶けて出てゆく。この手のひょうたんで容量は1.4 Lもあった。意外と中の水はきれいだ。吸い終わってから50 mlのホビー用注射器で水をすすぐ。2回繰り返す。終わったものから逆さまにして空いたプランターに入れてゆく。各々に名前はまだない。(↓)

 

 

プランターの底にあるプラスチック製のスノコが具合いい。日中は屋外に出し、ひなたぼっこする。扇風機も活用しよう。乾かし始めてから数日でカラカラに乾燥した。写真は2日後の状態。念のためあと数日このまま乾燥させる。においはほとんどない。ハエが来る。

 

成形加工・準備編へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成形加工・準備編

 

平成24年11月25日        Day43        加工こと始め

いよいよ先に乾いた大びょうたん群の成形、加工に手を付け始めた。成形加工の目標は①、ひょうたんに成形加工を施す、あるいは施さないかの上手な選択、②、自立できるようにする。 ③少しでも見栄えよく、左右対称形に近くする。④細かな傷、穴を目立たなくする。の4点と考えてよい。①は大変難しいので補足意見としてこの項の最後に書き加えておいた。②と③を兼ねるようにすることは実は結構大変だ。筆者が収穫した大びょうたんは、過去のものも含めそのまま自立できるのは1割にも満たない。つまりそのままではほとんどが置物として飾ることができない。さらに自立できない残りの9割の半数近くがまともな左右対称形になっていない。そこで、成形加工が必要となる。木工用パテを活用する。粘土のようだが、れっきとした樹脂で、不憫な形を十分補ってくれる。ひょうたんのような木質と相性がよい。成形加工編・準備編では今までに気が付いた成形加工術のあれこれをいくつか挙げる。成形加工・実践編では実際に加工した例を見てみよう。古来いわく、玉磨かざれば光なし、ひょうたん磨かざれば自立せず。

ちなみにこの真っ黒いひょうたんは全長60 cmを超える大型のもので、筆者が製作したものではなく、知人からいただいたものだ。漆の塗装は丁寧になされ、パテ等で修整加工した形跡が全くない。手つかずの天然ものだ。最高の芸術品で、まさに完璧。栽培段階から強力にしつけをしたらしい。この神業は筆者には不可能である。ので、できの悪い筆者のひょうたん君には詰め込み特訓教育が必要となる。

 

成形加工はボンド・ウッドパテ(タモ白)を使用。後々の塗装に耐えるパテ、つまり粘土はこれが一番見栄えがいいと思う。過去の使用実績からもひょうたんの木調になじみが良い。歯磨き粉のような性状だが、チューブから直接盛り付けてもよいし、へらで盛り付けても簡単だ。細かな穴もきれいに入るし、やすり加工も容易だ。難点は分厚く盛ると渇きが悪く、やすりがけまで1週間程度時間がかかること。また、一回の研磨では表面に細かな凸凹、剥離が生じるので微調整の意味で数回の少量パテ盛りが必要なこと。ぐらいか。後は成形加工・実践編で実体験をもとによく考えよう。今年もホームセンターでウッドパテを一気に3個もまとめ買いした。気合は十分。

 

②成形加工で自立できるコツは?小さな接地部分で自立できるように盛り付けることだ。筆者は過去に何度もしくじった。ひょうたんを自立させようとパテ盛りを考えると、真っ先にしがちなのはゆがんだお尻全体に広く、大量にパテ盛りをし、結果大きな接地面で地面に着く、安定形だ。接地する部分が大きければひょうたんはより安定する。ので、気前よくパテをお尻に盛り、たい。結果、後でみると、お尻の未加工部分のカーブは丸く接地しているものの、パテ盛りした方はほぼまっすぐ地面にのびている。安定はしているが、本来の丸みが損なわれてしまう。そうではなく、筆者が今年から考えたのは接地面をなるべく小さくし、パテ盛りした部分がなるべく地面に丸くつながるように、反対側のカーブになるべく近づけるようにすることだ。(↓左、右)DSC 00067

 

 

いわば接地面は重戦車のイメージでなく、ピンポン玉をガラス板に置いた感じだ。なお接地面が小さすぎると安定を保つのが難しいので、大きさの目安は10円玉だ。ちなみに写真は裏面である。

 

200%(10式戦車 出典 陸上自衛隊HP)

 

③見栄えの良い左右対称とは?成形加工で姿勢をきれいに保つコツはまずは軸を合わせることだ。軸は首で決まる。首の中心線が接地面の中心になるとバランスが良い。理想はそうだが、理想でないから加工している。つまり、ずれてもよいのだが、目標はこれだと思う。軸が定まり、左右差、つまりバランスの良しあしが見えてくると、次にどこを修正すべきかも見えてくる。コツの2番目は首の周囲が地面に対し水平になることだ。これは当然お尻側にパテを盛り付けて調整することになる。ひょうたんの表情は千差万別。けれど、最も整ったたたずまいは軸が直立し、首の周囲が地面にきれいに平行、自立した時だと思う。これを基本に考えるとイメージがわきやすい。口が曲がっていても、お尻が出っ張っていても、基準はあくまで軸と首だ。

 

 

 

成形加工で水平なバランスをとる場合、手に取って確かめるのが一番確実、かつ簡単だ。ひょうたんを手に持ち、余分なパテを削っては水平な場所に置く。左右に傾きがないかを確かめ、出っ張った部分をまた削る。この繰り返しで意外とすぐに水平バランスは取れる。首に軸を定め、お尻のパテ盛りを削る作業は機械的固定が一番だと今年の筆者は考えた。しかしひょうたんの首を軸に水平固定することは実に困難だ。結果は大失敗。それらしきアイデアをイメージしホームセンター内を隅々まで回った。重い万力を買い、足台風作業台に乗せた。電動ディスクグラインダーをディスク面が上面、水平になるよう取手のくびれを万力で挟み込む。今一つすわりが悪いので厚いゴム板を半円形に切り欠いて2枚あわせグラインダーの取手のくびれに挟んでみた。それでもすわりが悪そうなので細い燃料チューブをゴム板の周りに巻きつけ、完璧な水平を維持する。意味もないのに別の安いベンチ風作業台もわざわざ購入した。一方で別の万力にひょうたんを固定し、最初の万力を設置してある作業台に固定しようとしたが、思った通りにはうまくゆかない。思いつき程度では方程式は解けない。水平儀も購入したがどうしても水平が維持できない。固定が甘い。企画倒れ。結局機械式固定は全くの徒労に終わり、なんのことはない、従来通りの手でグラインダーを維持する手法になった。パテを削り取る主役は前記した小型電動ディスクグラインダーだ。今年は特に小型のものを購入し、使ってみたが意外と具合がいい。(↓)

 

12 cmのディスクで、やすりは60番を使用。手袋、メガネ、マスクは必須。コツは押し付けず、そっとだ。余分なパテを削るのが60番の使命ゆえ、押し付けるとあっという間に平面的に削れてしまう。接触面を眼で確認しながら少しづつ削るとうまくゆく。ちなみにこれで研磨はしない。後で述べるが、磨くのは120番以降のやすりを使い、手磨きした方か無難だ。

 

 

④小さな傷、穴の補修は大変根気のいる作業になる。近道はないので、実際の様子を次々章の(成形加工・実践編)で見てゆきたいと思う。

 

  1. 成加工する、しないの上手な選択は?実は大変難しい。ので参考意見にとどまる。ゆくゆく述べよう。まず成形加工できるのは大びょうたんのうち約2/3 のみ。残りは箸にも棒にもかからない。ただしあくまで筆者の主観。そもそもひょうたんに美術的価値を求めるがゆえに手間暇をかけている。手間暇かけても美しくならないものは手間暇をかけない。なにせ、相手は天然物だ。当たりはずれが生じるのはこれまた自然の摂理。どうしても美しさを見いだせないものに修正加工、成形テクニックを施すのはやめよう。現段階で、筆者が修正加工困難と思うのは例えばこのようなたぐいだ。悪者ではないがこのままの雰囲気を自然に感じよう。自然のままに。ここまで来ると修正は無意味だ。(↓左右)そっとしておく。

 

 

 

これも上のものと同じく、箸にも棒にもかからないかわいそうな仲間。(↑左、右)左右は同じひょうたん。左側の写真を見ると、下半身がざっくり斜めに欠けて、立てないのが一目瞭然。写真も投げやりだ。右側は向きを変えてみたところ。見えづらいが、黒い点は「へそ」だ。「へそ」も下半身の中心から大きくずれた位置にあり、ずれた「へそ」を中心に下半身が形作られている。上半身と明らかに位置関係がおかしく、斜め45度ほどにねじれている。上下ちぐはぐで人に例えるのが気の毒に思える様だ。加工に値しない。ある夜、ほかのひょうたんの加工がひと段落したところで、寝転んでいるこの勘違いひょうたんを手に取ってみた。上半身の口元も歪んでいる。やっぱり加工の価値がないことを確信した。ついでに、下半身の斜めに欠けている部分が元通りに発育しているとどうなっていたのか、急に興味がわいた。手元にある木工用パテ「ボンドウッドパテ」をおもむろに盛ってみる。思ったより欠損部が大きく、パテの無駄遣いに終わりそうだ。でも、もうすこし、とおもいつつ、何とかパテを盛り上げる。パフェの大盛り状態だ。残念ながら直後の写真はない。フイルム代の無駄と思ったからだ。数日後、電動ディスクグラインダーで荒磨きして、形を整えた状態。すでに上・下半身のつながりにねじれはない、元「ねじれ君」。

 

241126デジカメ071    241126デジカメ073 20%


まがったへたをつかんでみた状態。(↑左)下半身の体積約半分がパテだ。ちなみにパテ盛りした方が極端に重く、バランスが悪い。お尻の中心部分に新しくへその位置を決め、口径12 mmのドリルで穴あけした。(↑右)中身はカラカラと振って取り出す。そのあと外側のパテ盛り部分の正反対側に同じくらいの分量のもっと柔らかいパテを内側に大量注入した。

241126デジカメ069 20%        

 

一昼夜斜めに固定するとバランスは大変良好に。へそは仮に塞いである。左は矯正固定中。(↑左)右は幾多の工程を経て、とりあえず自立した後の状態。(↑右)このあと、想像を絶するくらいの工程を経て、次第に面白い形に仕上がってゆくことになるのだが、紙面の関係上中途省略する。

 

 

これが塗装前、成形加工の最終状態。(↑)箸にも棒にもかからない、ものは疑ってかかれ、がこの章の貴重な教訓。ちなみにこのもと「ねじれ君」は後でも登場する。

 

最初から大きく破損しているものも当然成形加工の対象外だ、と思われる。

 

まるですき焼きの後に転がっている卵のからだ。(↑)しかし、「ねじれ君」とちがって、本来の形はよさそうだ。少しづつ修理すれば何とかなりそうかもしれない。ダメかもしれないが、「成形加工・実践編」でその顛末を紹介しよう。支離滅裂、ではかわいそうなのでこれは「バラバラ君」と呼ぶことにした。

 

ひょうたんの分類編へ続く

ひょうたんの分類編        形状分類(K分類)

 

ひょうたんの形は千差万別。しかし、美術的価値を語るには形の様子を示す言葉がなく不便だ。そこで筆者が独自に形から見たひょうたんの分類をしてみた。なお、著者は生物学者ではないゆえ、生物学的専門用語は極力使用しない。生物学者の方はお怒りにならないようにしましょう。

 

タイプⅠ

口の突起がないもの。極端に左右不対称のもの。その他分類不能のもの。ちなみにほとんどの千成ひょうたんは口の突起がない。このタイプを人様で例えることは禁止されている。(↓)

タイプⅡ

上半身が下半身より大きいもの。あたまでっかち。(↓)241127デジカメ086 20%

タイプⅢ

上半身が下半身より極端に小さく、上下バランスの悪いもの。アルコールランプ。(↓)

241127デジカメ089 20%

タイプⅣ

くびれのない形。ズンドウ形。(↓)241127デジカメ085 20%

タイプⅤ

上半身が下半身よりやや小さく均整がとれているもの。かつ、上半身の最大周囲径が上半身の真ん中付近にあるもの。ぽっちゃり美人型。(↓)241127デジカメ088 20%

タイプⅥ

上半身が下半身よりやや小さく均整がとれているもの。かつ、上半身の最大周囲径が上半身の真ん中より上にあるもの。西洋美人型。(↓)241127デジカメ087 20%

 

241126デジカメ051 20%

 みんなで仲良く記念撮影

 

各タイプの中で全長15 cm未満をA、全長15 cm以上をBとする。タイプが上がるほど美術的価値が高い。ちなみに千成ひょうたんのほとんどは口の突起に乏しくタイプⅠだが、まれにタイプⅤAを見かける。千成ひょうたんは小粒でもピリリときれいだ。口元のゆがみもピカソ風のものはタイプⅠ、おちょぼ口程度はタイプⅡ~Ⅵの範囲となる。今日から目にする大ひょうたん、千成ひょうたんをこのK―分類してみよう。なお、ひょうたん各部やタイプを示すのに擬人的表見が多くなってしまうが、今後の課題だ。ひょうたん美術学が進歩、成熟したのち最適な専門用語が出現すると思われる。

 

K分類表

 

成形加工・実践編へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成形加工・実践編

 

加工実例を見よう。玉磨かざれば光なし。もう少しここがこうなれば何とかなるのにと思う形のひょうたんをよく目にする。構造的に脆く、大ひょうたんの類でも肉付きが中ひょうたんくらいの薄さのものもある。それら不都合をすべて無視するのも確かに一つの処理方法だ。しかしぎりぎりアウト、補欠不合格パターンは何とかレスキューしたいのが人の情。今回好例がいくつかあるのでそれを取り上げてみよう。試行錯誤しつつ修理して学べることは多い。最後にはそこそこの出来具合になったつもり。自画自賛や自慢話が苦手な方はこの章をパスしましょう。

 

ケースその1 バラバラ君

 

平成24年11月3日        Day21        フェザー級

収穫した時に妙に軽かった。水漬けからすくい上げて、胴体をもったらバラバラに砕けてしまった。あわててもと通りに組み立ててみたが、すでにいくつかのパーツが見当たらない。(前記)

2411スマホひょうたん

 

 

平成24年11月7日        Day25        ひらきなおり

 

乾いた。軽く、肉厚も薄い。卵の殻よりましなレベルだ。(↑)このまま再組立てしてもいずれいつか砕けると思う。内部の補強は必須。大型の綿棒に木工用パテ「ボンドウッドパテ」を盛り、内腔全面にわたって塗りつける。(↓左)スマホ241216より1230までDSC 0357

 

 

写真ではわかりづらいが、ひょうたん内部に茶色いパテが塗られているのが見える。(↑右)この後内腔全面に塗り広げた。性状はちょうど歯磨き粉風で、厚め、おおざっぱに塗るのは容易。あっという間に塗り終わる。とれた頭の内面にも塗りつけた。左端は仮組み立ての状態。(↓1)ひょうたんの破断面にアロンアルファをぬり、接着する。(↓2)切手大の穴もあり、裏側から厚紙を裏打ちし、穴の表裏にパテを盛りつけた。(↓3)破断した境界線の外面にも先のパテを塗り終了。バラバラ君はつぎはぎ君に進化した。(↓4)背景は常にごちゃごちゃで進化せず無視。DSC-0087 6% 0080 0092 0093

 

1                2

3                4

平成24年11月10日        直立不動態勢のパテ盛り

続いてひょうたんの形直しに入る。やっと立っているものの倒れる寸前だ。直立するのに必要な部分(お尻)の肉盛りをする。(↓左、中央) パテは同じく木工用パテ「ボンドウッドパテ」、色違いのタモ白だ。平らに直し、自立できる形状にする。(↓右)後で気づいたが、盛り付けの土手が広すぎた。もっと狭めにすることが大事。顛末は次へ。 0107 241119デジばらの241126デジ017 16%

 

 

平成24年11月28日            120番やすりがけ①+木工パテ補修

平成24年11月29日            120番やすりがけ②

11月28日、120番のやすりで形を整えたのち(①)、細かく剥離した穴をパテ盛り。(写真なし)翌日11月29日再度やすりがけ(②)した状態。(↓左、中央、右)まだまだ荒削り状態。だが、やっと生き返った。集中治療室は卒業だ。少しほっとしたところで改めて眺めると、やっぱりお尻が広すぎる。続きは次の段落へ。作業が細かいので写真も細かくなってきた。241128から1202ばら 000092 000119

 

 

平成24年11月30日        60番電動ディスクグラインダー+木工パテ補修

お尻がパテの盛りすぎて末広がりになっているのだ。そこで電動ディスクグラインダーを使い削ってみた。上の右端は削る前、(↑右)下の左、中央は削った後。(↓左、中央)一部底面にフラットな面があるのが新しい形のお尻だ。きゅっと引き締まる。アクアから86に進化したようだ。詳細はトヨタのホームページに譲る。

 

上の写真後ろはアクア、手前は86だ。(↑)ディスクグラインダーには60番というかなり荒目のやすりをつけたが、軽く当てるだけでそこそこきれいな削り具合になる。逆に少しでも押し付けるとあっという間に削れてゆく。削れすぎに注意が必要。60番ディスクグラインダー削りの後(↓左、中央)も表面上細かく見ると薄く剥離した部分が方々に目立つ。ので、下右端は剥離した部分に再度薄くパテを盛った写真。盛るというか、微量を擦り付ける印象。(↓右端)しつこい鬼教官だ。乾くのを静かに待つ。 241119デジカメばら241126デジカメ045

 

 

平成24年12月2日        120番やすりがけ③+木工パテ補修

忙しくて少し日がたった。前回同様120番のやすりで削る。命も削れる。

241128から1202ばら DSC00130

 

まだ表面の剥離した部分が目立つ。(↑左)乾燥は十分なので、これが120番やすりがけ+パテ補修サイクルの限界かもしれない。微量の木工パテで補修。

 

平成24年12月5日        120番やすりがけ④+木工パテ補修

さらに根気強く丁寧に磨く(120番やすりがけ④)も思ったような結果にはなっていない。(↑右)欠けた部分に再度木工用パテを擦り付ける。微量のみ使用。すぐに終了。

 

平成24年12月8日        おしり再盛り付けパテ

よくよく見るとお尻がまだまだ平らすぎる。ことに今更気づいた。接地面も広すぎる。元々あるへそが消えてしまうのに多少躊躇するも構わずパテ盛りする。チョコワ風になる。デジカメJ241208から1230までDSC 192

 

 

平成24年12月10日        お尻削り=240番やすり①登場+木工パテ補修

 

 

未整理スマホ241215まで DSC246

240番やすり参上だ。柔らかく、新しいお尻を240番でそっと削る。おしりはさらにかっこよくなる。(↑左、右)86のお尻は卒業し、いよいよフェラーリだ。フェラーリのシルエットを知らない人はスルーしてよろしい。上の写真で予告したようにもう120番も卒業だ。ではなく、お役目御免といった方が妥当だ。240番は120番に比べ削る力は弱いものの削り後の剥離が圧倒的に少ないことがわかった。最初から木工用パテ削りには120番ではなく240番の使用がよいと思う。実は削り時間もそれほど変わらない。ちなみに力を入れないのはいずれも同じで、理想は触れるか触れないかの力加減だ。削っているうちについつい先を急ぎたくなって一生懸命力が入りがちになるが。

 

 

平成24年12月12日        240番やすりがけ②  未整理スマホ241215までDSC 0252

 

 

 

上手に削るのはいかに削る力を抑えるかにかかっている。240番で気長に削っているとようやく滑らかな表面になってきた。(↑左、右)細かく見なければ合格だ。心境も滑らかになる。

 

平成24年12月20日        光硬化パテ登場

光硬化パテを細かな剥離表面に使用してみる。(↓左)取説によると硬化時間が直射日光で1分、27ワット蛍光灯距離5 cmで2分とある。早い。ちなみになじみのボンドウッドパテの硬化時間は24時間だ。実際に研磨できるのはさらに1日くらい後が無難だ。から実際には1分対48時間。勝負ありか。

DSC304

 

塗る、というかこすり付ける感覚で、広がり具合もよく良好だ。(↑中央)明るい室内で塗っているとすぐに硬化が始まり、ロウが固まるようなイメージになる。窓際で作業するとチューブのふたを閉めずにほんの10秒くらいでチューブから中身が出なくなったのには驚いた。写真(↑右)は日光浴のイメージ。

 

平成24年12月20日        240番やすりがけ③+光硬化パテ補修

十分硬化した後240番のやすりでそっとやすり掛け。かなり表面の凹凸が消えてくる。(↓左、中央)木工パテと違い光硬化パテの方が圧倒的に細かな剥離が少ない印象だ。もうひと頑張り。ちなみに光硬化パテはホームセンターの接着剤売り場で売ってない。すでに日用品の範疇を出ている。プラモデル屋、ホビーショップでお目にかかる。そこには当然ザクかドムだかわからない手合いもごろごろしている。(↓右)横目でにらんで無視する。

 

DSC 029

 

 

平成24年12月23日        240番やすりがけ④+光硬化パテ補修

240番やすりがけ④の後の状態。(↓左、右)これを見るとこの章もいよいよ終わりが近づいてきた雰囲気になる。つまり表面の状態はかなり良好。鬼教官の目にも涙。だんだんマニアックな雰囲気になってきている。時々コーヒーを飲みに行く街ではプラスチック製のマニア向け人形をよく見かける。マニアックにならないよう気を引き締める。 DSC317

 

 

ひょうたんの加工は伝統工芸だと思われがちだ。年配者が仏壇の隣に供えて喜ぶ景色を想像する。が、補修素材、塗装等に関し、まともな使用機材、材料等は実質的にほとんどアキバ系だ。(↓左、中央、右)要注意。もう浅草でひょうたんを物色するのはやめだ。しかし、秋葉原でひょうたんは見かけない。困った。

2411スマホひょうたん

 

 

平成24年12月24日        400番やすりがけ→800番やすりがけ、成形加工最終段階

DSC 0328

 

400番を経て800~1000番相当の3M ULTRAFINEで仕上げた。(↑左、右)もうつるつるだ。オヤジの禿げ頭状態になったのでこの章の目的は達成された。なお、大活躍の光硬化パテだが、木工用パテと違い盛り付けることはできない。薄く補修するのみだ。取説では厚さ2 mmまでと書いてある。重ね塗りはむろん可能だが、盛って造形することはできない。念のため。大雑把な造形はボンドウッドパテで盛り付け、細かな造形、剥離後の修復は光硬化パテを使う、のが教科書的手順だ。やすりがけは120番を早めに切り上げ、240番を多用すると表面のパテ剥離が最小限になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塗装編へ続く