• 成形加工・準備編

    平成24年11月25日        Day43        加工こと始め

    いよいよ先に乾いた大びょうたん群の成形、加工に手を付け始めた。成形加工の目標は①、ひょうたんに成形加工を施す、あるいは施さないかの上手な選択、②、自立できるようにする。 ③少しでも見栄えよく、左右対称形に近くする。④細かな傷、穴を目立たなくする。の4点と考えてよい。①は大変難しいので補足意見としてこの項の最後に書き加えておいた。②と③を兼ねるようにすることは実は結構大変だ。筆者が収穫した大びょうたんは、過去のものも含めそのまま自立できるのは1割にも満たない。つまりそのままではほとんどが置物として飾ることができない。さらに自立できない残りの9割の半数近くがまともな左右対称形になっていない。そこで、成形加工が必要となる。木工用パテを活用する。粘土のようだが、れっきとした樹脂で、不憫な形を十分補ってくれる。ひょうたんのような木質と相性がよい。成形加工編・準備編では今までに気が付いた成形加工術のあれこれをいくつか挙げる。成形加工・実践編では実際に加工した例を見てみよう。古来いわく、玉磨かざれば光なし、ひょうたん磨かざれば自立せず。

    ちなみにこの真っ黒いひょうたんは全長60 cmを超える大型のもので、筆者が製作したものではなく、知人からいただいたものだ。漆の塗装は丁寧になされ、パテ等で修整加工した形跡が全くない。手つかずの天然ものだ。最高の芸術品で、まさに完璧。栽培段階から強力にしつけをしたらしい。この神業は筆者には不可能である。ので、できの悪い筆者のひょうたん君には詰め込み特訓教育が必要となる。

     

    成形加工はボンド・ウッドパテ(タモ白)を使用。後々の塗装に耐えるパテ、つまり粘土はこれが一番見栄えがいいと思う。過去の使用実績からもひょうたんの木調になじみが良い。歯磨き粉のような性状だが、チューブから直接盛り付けてもよいし、へらで盛り付けても簡単だ。細かな穴もきれいに入るし、やすり加工も容易だ。難点は分厚く盛ると渇きが悪く、やすりがけまで1週間程度時間がかかること。また、一回の研磨では表面に細かな凸凹、剥離が生じるので微調整の意味で数回の少量パテ盛りが必要なこと。ぐらいか。後は成形加工・実践編で実体験をもとによく考えよう。今年もホームセンターでウッドパテを一気に3個もまとめ買いした。気合は十分。

     

    ②成形加工で自立できるコツは?小さな接地部分で自立できるように盛り付けることだ。筆者は過去に何度もしくじった。ひょうたんを自立させようとパテ盛りを考えると、真っ先にしがちなのはゆがんだお尻全体に広く、大量にパテ盛りをし、結果大きな接地面で地面に着く、安定形だ。接地する部分が大きければひょうたんはより安定する。ので、気前よくパテをお尻に盛り、たい。結果、後でみると、お尻の未加工部分のカーブは丸く接地しているものの、パテ盛りした方はほぼまっすぐ地面にのびている。安定はしているが、本来の丸みが損なわれてしまう。そうではなく、筆者が今年から考えたのは接地面をなるべく小さくし、パテ盛りした部分がなるべく地面に丸くつながるように、反対側のカーブになるべく近づけるようにすることだ。(↓左、右)

     

     

    いわば接地面は重戦車のイメージでなく、ピンポン玉をガラス板に置いた感じだ。なお接地面が小さすぎると安定を保つのが難しいので、大きさの目安は10円玉だ。ちなみに写真は裏面である。

     

    (10式戦車 出典 陸上自衛隊HP)

     

    ③見栄えの良い左右対称とは?成形加工で姿勢をきれいに保つコツはまずは軸を合わせることだ。軸は首で決まる。首の中心線が接地面の中心になるとバランスが良い。理想はそうだが、理想でないから加工している。つまり、ずれてもよいのだが、目標はこれだと思う。軸が定まり、左右差、つまりバランスの良しあしが見えてくると、次にどこを修正すべきかも見えてくる。コツの2番目は首の周囲が地面に対し水平になることだ。これは当然お尻側にパテを盛り付けて調整することになる。ひょうたんの表情は千差万別。けれど、最も整ったたたずまいは軸が直立し、首の周囲が地面にきれいに平行、自立した時だと思う。これを基本に考えるとイメージがわきやすい。口が曲がっていても、お尻が出っ張っていても、基準はあくまで軸と首だ。

     

     

    成形加工で水平なバランスをとる場合、手に取って確かめるのが一番確実、かつ簡単だ。ひょうたんを手に持ち、余分なパテを削っては水平な場所に置く。左右に傾きがないかを確かめ、出っ張った部分をまた削る。この繰り返しで意外とすぐに水平バランスは取れる。首に軸を定め、お尻のパテ盛りを削る作業は機械的固定が一番だと今年の筆者は考えた。しかしひょうたんの首を軸に水平固定することは実に困難だ。結果は大失敗。それらしきアイデアをイメージしホームセンター内を隅々まで回った。重い万力を買い、足台風作業台に乗せた。電動ディスクグラインダーをディスク面が上面、水平になるよう取手のくびれを万力で挟み込む。今一つすわりが悪いので厚いゴム板を半円形に切り欠いて2枚あわせグラインダーの取手のくびれに挟んでみた。それでもすわりが悪そうなので細い燃料チューブをゴム板の周りに巻きつけ、完璧な水平を維持する。意味もないのに別の安いベンチ風作業台もわざわざ購入した。一方で別の万力にひょうたんを固定し、最初の万力を設置してある作業台に固定しようとしたが、思った通りにはうまくゆかない。思いつき程度では方程式は解けない。水平儀も購入したがどうしても水平が維持できない。固定が甘い。企画倒れ。結局機械式固定は全くの徒労に終わり、なんのことはない、従来通りの手でグラインダーを維持する手法になった。パテを削り取る主役は前記した小型電動ディスクグラインダーだ。今年は特に小型のものを購入し、使ってみたが意外と具合がいい。(↓)

     

    12 cmのディスクで、やすりは60番を使用。手袋、メガネ、マスクは必須。コツは押し付けず、そっとだ。余分なパテを削るのが60番の使命ゆえ、押し付けるとあっという間に平面的に削れてしまう。接触面を眼で確認しながら少しづつ削るとうまくゆく。ちなみにこれで研磨はしない。後で述べるが、磨くのは120番以降のやすりを使い、手磨きした方か無難だ。

     

     

    ④小さな傷、穴の補修は大変根気のいる作業になる。近道はないので、実際の様子を次々章の(成形加工・実践編)で見てゆきたいと思う。

     

    1. 成加工する、しないの上手な選択は?実は大変難しい。ので参考意見にとどまる。ゆくゆく述べよう。まず成形加工できるのは大びょうたんのうち約2/3 のみ。残りは箸にも棒にもかからない。ただしあくまで筆者の主観。そもそもひょうたんに美術的価値を求めるがゆえに手間暇をかけている。手間暇かけても美しくならないものは手間暇をかけない。なにせ、相手は天然物だ。当たりはずれが生じるのはこれまた自然の摂理。どうしても美しさを見いだせないものに修正加工、成形テクニックを施すのはやめよう。現段階で、筆者が修正加工困難と思うのは例えばこのようなたぐいだ。悪者ではないがこのままの雰囲気を自然に感じよう。自然のままに。ここまで来ると修正は無意味だ。(↓左右)そっとしておく。

     

     

    これも上のものと同じく、箸にも棒にもかからないかわいそうな仲間。(↑左、右)左右は同じひょうたん。左側の写真を見ると、下半身がざっくり斜めに欠けて、立てないのが一目瞭然。写真も投げやりだ。右側は向きを変えてみたところ。見えづらいが、黒い点は「へそ」だ。「へそ」も下半身の中心から大きくずれた位置にあり、ずれた「へそ」を中心に下半身が形作られている。上半身と明らかに位置関係がおかしく、斜め45度ほどにねじれている。上下ちぐはぐで人に例えるのが気の毒に思える様だ。加工に値しない。ある夜、ほかのひょうたんの加工がひと段落したところで、寝転んでいるこの勘違いひょうたんを手に取ってみた。上半身の口元も歪んでいる。やっぱり加工の価値がないことを確信した。ついでに、下半身の斜めに欠けている部分が元通りに発育しているとどうなっていたのか、急に興味がわいた。手元にある木工用パテ「ボンドウッドパテ」をおもむろに盛ってみる。思ったより欠損部が大きく、パテの無駄遣いに終わりそうだ。でも、もうすこし、とおもいつつ、何とかパテを盛り上げる。パフェの大盛り状態だ。残念ながら直後の写真はない。フイルム代の無駄と思ったからだ。数日後、電動ディスクグラインダーで荒磨きして、形を整えた状態。すでに上・下半身のつながりにねじれはない、元「ねじれ君」。
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    まがったへたをつかんでみた状態。(↑左)下半身の体積約半分がパテだ。ちなみにパテ盛りした方が極端に重く、バランスが悪い。お尻の中心部分に新しくへその位置を決め、口径12 mmのドリルで穴あけした。(↑右)中身はカラカラと振って取り出す。そのあと外側のパテ盛り部分の正反対側に同じくらいの分量のもっと柔らかいパテを内側に大量注入した。

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    一昼夜斜めに固定するとバランスは大変良好に。へそは仮に塞いである。左は矯正固定中。(↑左)右は幾多の工程を経て、とりあえず自立した後の状態。(↑右)このあと、想像を絶するくらいの工程を経て、次第に面白い形に仕上がってゆくことになるのだが、紙面の関係上中途省略する。

     

     

    これが塗装前、成形加工の最終状態。(↑)箸にも棒にもかからない、ものは疑ってかかれ、がこの章の貴重な教訓。ちなみにこのもと「ねじれ君」は後でも登場する。

     

    最初から大きく破損しているものも当然成形加工の対象外だ、と思われる。

     

    まるですき焼きの後に転がっている卵のからだ。(↑)しかし、「ねじれ君」とちがって、本来の形はよさそうだ。少しづつ修理すれば何とかなりそうかもしれない。ダメかもしれないが、「成形加工・実践編」でその顛末を紹介しよう。支離滅裂、ではかわいそうなのでこれは「バラバラ君」と呼ぶことにした。

     

    ひょうたんの分類編へ続く