• 成形加工・実践編

    加工実例を見よう。玉磨かざれば光なし。もう少しここがこうなれば何とかなるのにと思う形のひょうたんをよく目にする。構造的に脆く、大ひょうたんの類でも肉付きが中ひょうたんくらいの薄さのものもある。それら不都合をすべて無視するのも確かに一つの処理方法だ。しかしぎりぎりアウト、補欠不合格パターンは何とかレスキューしたいのが人の情。今回好例がいくつかあるのでそれを取り上げてみよう。試行錯誤しつつ修理して学べることは多い。最後にはそこそこの出来具合になったつもり。自画自賛や自慢話が苦手な方はこの章をパスしましょう。

     

    ケースその1 バラバラ君

     

    平成24年11月3日        Day21        フェザー級

    収穫した時に妙に軽かった。水漬けからすくい上げて、胴体をもったらバラバラに砕けてしまった。あわててもと通りに組み立ててみたが、すでにいくつかのパーツが見当たらない。(前記)

     

     

    平成24年11月7日        Day25        ひらきなおり

     

    乾いた。軽く、肉厚も薄い。卵の殻よりましなレベルだ。(↑)このまま再組立てしてもいずれいつか砕けると思う。内部の補強は必須。大型の綿棒に木工用パテ「ボンドウッドパテ」を盛り、内腔全面にわたって塗りつける。(↓左)

     

     

    写真ではわかりづらいが、ひょうたん内部に茶色いパテが塗られているのが見える。(↑右)この後内腔全面に塗り広げた。性状はちょうど歯磨き粉風で、厚め、おおざっぱに塗るのは容易。あっという間に塗り終わる。とれた頭の内面にも塗りつけた。左端は仮組み立ての状態。(↓1)ひょうたんの破断面にアロンアルファをぬり、接着する。(↓2)切手大の穴もあり、裏側から厚紙を裏打ちし、穴の表裏にパテを盛りつけた。(↓3)破断した境界線の外面にも先のパテを塗り終了。バラバラ君はつぎはぎ君に進化した。(↓4)背景は常にごちゃごちゃで進化せず無視。

     

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    平成24年11月10日        直立不動態勢のパテ盛り

    続いてひょうたんの形直しに入る。やっと立っているものの倒れる寸前だ。直立するのに必要な部分(お尻)の肉盛りをする。(↓左、中央) パテは同じく木工用パテ「ボンドウッドパテ」、色違いのタモ白だ。平らに直し、自立できる形状にする。(↓右)後で気づいたが、盛り付けの土手が広すぎた。もっと狭めにすることが大事。顛末は次へ。

     

     

    平成24年11月28日            120番やすりがけ①+木工パテ補修

    平成24年11月29日            120番やすりがけ②

    11月28日、120番のやすりで形を整えたのち(①)、細かく剥離した穴をパテ盛り。(写真なし)翌日11月29日再度やすりがけ(②)した状態。(↓左、中央、右)まだまだ荒削り状態。だが、やっと生き返った。集中治療室は卒業だ。少しほっとしたところで改めて眺めると、やっぱりお尻が広すぎる。続きは次の段落へ。作業が細かいので写真も細かくなってきた。

     

     

    平成24年11月30日        60番電動ディスクグラインダー+木工パテ補修

    お尻がパテの盛りすぎて末広がりになっているのだ。そこで電動ディスクグラインダーを使い削ってみた。上の右端は削る前、(↑右)下の左、中央は削った後。(↓左、中央)一部底面にフラットな面があるのが新しい形のお尻だ。きゅっと引き締まる。アクアから86に進化したようだ。詳細はトヨタのホームページに譲る。

     

    上の写真後ろはアクア、手前は86だ。(↑)ディスクグラインダーには60番というかなり荒目のやすりをつけたが、軽く当てるだけでそこそこきれいな削り具合になる。逆に少しでも押し付けるとあっという間に削れてゆく。削れすぎに注意が必要。60番ディスクグラインダー削りの後(↓左、中央)も表面上細かく見ると薄く剥離した部分が方々に目立つ。ので、下右端は剥離した部分に再度薄くパテを盛った写真。盛るというか、微量を擦り付ける印象。(↓右端)しつこい鬼教官だ。乾くのを静かに待つ。

     

     

    平成24年12月2日        120番やすりがけ③+木工パテ補修

    忙しくて少し日がたった。前回同様120番のやすりで削る。命も削れる。

    まだ表面の剥離した部分が目立つ。(↑左)乾燥は十分なので、これが120番やすりがけ+パテ補修サイクルの限界かもしれない。微量の木工パテで補修。

     

    平成24年12月5日        120番やすりがけ④+木工パテ補修

    さらに根気強く丁寧に磨く(120番やすりがけ④)も思ったような結果にはなっていない。(↑右)欠けた部分に再度木工用パテを擦り付ける。微量のみ使用。すぐに終了。

     

    平成24年12月8日        おしり再盛り付けパテ

    よくよく見るとお尻がまだまだ平らすぎる。ことに今更気づいた。接地面も広すぎる。元々あるへそが消えてしまうのに多少躊躇するも構わずパテ盛りする。チョコワ風になる。

     

     

    平成24年12月10日        お尻削り=240番やすり①登場+木工パテ補修

     

     

    240番やすり参上だ。柔らかく、新しいお尻を240番でそっと削る。おしりはさらにかっこよくなる。(↑左、右)86のお尻は卒業し、いよいよフェラーリだ。フェラーリのシルエットを知らない人はスルーしてよろしい。上の写真で予告したようにもう120番も卒業だ。ではなく、お役目御免といった方が妥当だ。240番は120番に比べ削る力は弱いものの削り後の剥離が圧倒的に少ないことがわかった。最初から木工用パテ削りには120番ではなく240番の使用がよいと思う。実は削り時間もそれほど変わらない。ちなみに力を入れないのはいずれも同じで、理想は触れるか触れないかの力加減だ。削っているうちについつい先を急ぎたくなって一生懸命力が入りがちになるが。

     

     

    平成24年12月12日        240番やすりがけ②

     

     

    上手に削るのはいかに削る力を抑えるかにかかっている。240番で気長に削っているとようやく滑らかな表面になってきた。(↑左、右)細かく見なければ合格だ。心境も滑らかになる。

     

    平成24年12月20日        光硬化パテ登場

    光硬化パテを細かな剥離表面に使用してみる。(↓左)取説によると硬化時間が直射日光で1分、27ワット蛍光灯距離5 cmで2分とある。早い。ちなみになじみのボンドウッドパテの硬化時間は24時間だ。実際に研磨できるのはさらに1日くらい後が無難だ。から実際には1分対48時間。勝負ありか。

     

    塗る、というかこすり付ける感覚で、広がり具合もよく良好だ。(↑中央)明るい室内で塗っているとすぐに硬化が始まり、ロウが固まるようなイメージになる。窓際で作業するとチューブのふたを閉めずにほんの10秒くらいでチューブから中身が出なくなったのには驚いた。写真(↑右)は日光浴のイメージ。

     

    平成24年12月20日        240番やすりがけ③+光硬化パテ補修

    十分硬化した後240番のやすりでそっとやすり掛け。かなり表面の凹凸が消えてくる。(↓左、中央)木工パテと違い光硬化パテの方が圧倒的に細かな剥離が少ない印象だ。もうひと頑張り。ちなみに光硬化パテはホームセンターの接着剤売り場で売ってない。すでに日用品の範疇を出ている。プラモデル屋、ホビーショップでお目にかかる。そこには当然ザクかドムだかわからない手合いもごろごろしている。(↓右)横目でにらんで無視する。

     

     

    平成24年12月23日        240番やすりがけ④+光硬化パテ補修

    240番やすりがけ④の後の状態。(↓左、右)これを見るとこの章もいよいよ終わりが近づいてきた雰囲気になる。つまり表面の状態はかなり良好。鬼教官の目にも涙。だんだんマニアックな雰囲気になってきている。時々コーヒーを飲みに行く街ではプラスチック製のマニア向け人形をよく見かける。マニアックにならないよう気を引き締める。

     

     

    ひょうたんの加工は伝統工芸だと思われがちだ。年配者が仏壇の隣に供えて喜ぶ景色を想像する。が、補修素材、塗装等に関し、まともな使用機材、材料等は実質的にほとんどアキバ系だ。(↓左、中央、右)要注意。もう浅草でひょうたんを物色するのはやめだ。しかし、秋葉原でひょうたんは見かけない。困った。

     

    平成24年12月24日        400番やすりがけ→800番やすりがけ、成形加工最終段階

     

    400番を経て800~1000番相当の3M ULTRAFINEで仕上げた。(↑左、右)もうつるつるだ。オヤジの禿げ頭状態になったのでこの章の目的は達成された。なお、大活躍の光硬化パテだが、木工用パテと違い盛り付けることはできない。薄く補修するのみだ。取説では厚さ2 mmまでと書いてある。重ね塗りはむろん可能だが、盛って造形することはできない。念のため。大雑把な造形はボンドウッドパテで盛り付け、細かな造形、剥離後の修復は光硬化パテを使う、のが教科書的手順だ。やすりがけは120番を早めに切り上げ、240番を多用すると表面のパテ剥離が最小限になる。

     

     

    塗装編へ続く